平成27年12月1日より、労働安全衛生法の一部を改正する法律が施行され、その中で企業には従業員に対してストレスチェックの実施が義務付けられることとなった。この大きな法改正に対してQ&A形式で答えていく。
【経営者向け】ご存知でしたか? マイナンバーの次はストレスチェックです。vol.1

ストレスチェックにまつわるQ&A

1)そもそもストレスチェックって何ですか?
ストレスチェックとは、紙で実施するアンケートのようなものだ。さまざまなストレスチェックが世の中には存在するが、厚生労働省が今回推奨しているものは57項目で、回答に5分ほどの時間がかかるものとなっている。アンケートに答えることにより、従業員の人は今の自分自身のストレスの状態がわかり、その結果ストレスに対する気づきを促すことを目的としている。

2)どういう事業所が義務化されますか?
今回義務化となるのは事業所単位で50名以上の事業所だ。50名未満は努力義務とされている。注意が必要なのは、この50名に短期雇用のアルバイト等も含むということだ。また、仮に50名未満で努力義務といっても、もし何らかの事案で裁判になった際には努力義務を果たしていなかったと判断されるので、従業員の少ない会社ほどストレスチェックを実施しておいたほうがよいだろう。

3)義務化というけれども罰則はありますか?
ストレスチェックを実施しないことへの直接の罰則規定は存在しない。しかしながら、ストレスチェック実施にあたり、衛生委員会での審議が義務付けられた。衛生委員会を適切に運用しない場合50万円以下の罰金が科せられる。このことから間接的に罰則があるとともに、会社としても義務を果たしていない場合裁判などでとても不利になるのでストレスチェックを実施していたほうが無難であろう。

4)従業員にはストレスチェックを受けることは義務化されていますか?
今回の法改正では事業主に実施は義務付けられたが、従業員は受けても受けなくてもOKということになった。事業主がストレスチェックを受けないことで処罰しようとすると法律違反となってしまいますので運用上は注意が必要である。

5)ストレスチェックは誰が実施しますか?
今回の法改正では医師また保健師等がストレスチェックの実施者になる必要がある。また結果を閲覧し、医師または保健師が確認したことの確証(記名押印)が必要なことも注意が必要なポイントである。

6)どれぐらいの頻度でストレスチェックを実施すればよいですか?
法律で求められているのは年1回の定期実施である。そのため、2015年12月~2016年11月末日までに必ず1回は実施しなくてはいけないこととなる。当事務所では、できれば年2回繁忙期と閑散期の2回実施することをおすすめしている。そのことによりより会社で働く人のストレスの状況を正確に把握することができるからである。

7)会社はストレスチェックの結果を知ることができるのですか?
労働者個人の結果は、労働者が同意しない限り会社は知ることができない。会社が知ることができるのは、全体のデータの分析(厚生労働省では集団的分析と呼んでいる)のみとなる。もちろん労働者が同意すれば個人の結果を会社は知ることができるが、同意を取るタイミングは、労働者がストレスチェックの結果を知った後でないといけないので、注意が必要である。

8)ストレスチェックの種類を選ぶときに注意すべきことはなんですか?
今回の法改正によるストレスチェックでは、うつ病のスクリーニング検査等を含めることは不適当とされている。事業主としてはどうせ従業員にアンケートをとるのだから同時にいろいろと調査項目を増やしていきたいという気持ちもあるのだが、今回のストレスチェックに含めないほうがよいであろう。またストレスチェックの提供業者によっては、いろいろな性格検査や適性検査も同時にできますよ、と提案するところがあるかもしれないが、それらについて国は勧めていないことも知っておいていただきたいポイントである。

9)どこに頼んだらよいですか?
ストレスチェックの提供業者として、当事務所のような臨床心理士・社会保険労務士事務所や健康診断機関、EAP機関があります。値段、できること、提供しているストレスチェックの内容にばらつきがあるため、御社に適切なものを選択いただければと思う。
今回はストレスチェック制度についてQ&A形式でお伝えした。理解の一助になれば幸いである。

Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所 植田健太

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