とくに立場の上下がない話し合いの場で、なぜか、その人の発言にはみなが一目置くようになる人がいる。自然にリーダーになるのは、そういうタイプの人だ。
年長の人、見た目が堂々として押し出しがいい人など、自分でコントロールできない要素が理由になることもあるが、実は、自然に場の中心になる人の行動には、共通の要素がある。
こう聞くと、まっさきに発言する、声が大きい、理路整然と話す、話題を交通整理して仕切る、などの積極的な行動が思い浮かぶのではないだろうか。もちろん、そのような面もあるが、それだけではない。わかりやすいリーダータイプではないのに、きらりと光る存在感を持つ人がいる。そのような存在感の持ち主であれば、リーダーであろうとなかろうと、仕事がやりやすくなることは間違いない。しかも、その行動とは、とくに積極的な性格でなくても、少し意識すればできることなのである。
自然に場の中心になれる三つのポイント

うなづき、あいづちをはっきりと

数名が集まっているところで、だれかが話をしているとき、話し手は、最初はメンバーの顔を平等に見ていたのに、なぜかひとりの人にばかり視線を向け話すようになる。こんな場面を見たことはないだろうか。
そのとき、視線の先にいる人はなにをしているかというと、姿勢を少しかえて話し手の方に体を向け、力強くうなずきながら、「うんうん」「なるほど~」と、タイミングよくあいづちをうっているのだ。これが第一のポイントである。
次に別の人が話しても、やはりしっかりうなづき、あいづちをうつ人に、自然に視線を向けてしまう。

このようなことが繰り返されると、自分の意見は一言も言わなくても、場のだれもがその人に注目するようになり、その人の意見を待つようになる。
「わたしはいつも真剣に人の話を聞いているのに、そんな現象は起こらない」と感じたあなた。真剣なあまり、体をまったく動かさず、固まって聞いていないだろうか。
あなたが主観的に「聞いている」と思っていても、それが相手に伝わらないと意味がない。聞いていることを伝えるいちばん簡単な方法は、話している人のほうに視線や体を向け、うなづき、あいづちをうつことなのである。

筆者は研修やセミナーで「話の聞き方」を教えることが多いのだが、実際にやってみてもらうと、たいていの人が、自分ではうなづいているつもりでも、動きが小さすぎ、相手に伝わっていない。
場の中心になるような聞き方をしようと思ったら、意識してふだんより少しオーバーにうなづいてみるのがコツである。

相手の話したい部分をつかんで質問する

しかし、ただ聞き役になっているだけでは、感じがいい人、というだけで終わってしまう。「いい人」から「中心になる人」にステップアップするためには、もうひとつ行動が必要だ。

その行動とは「質問をすること」である。これがふたつめのポイントになる。
話している人が強調したい、もっと聞いてほしいと思っていることを推測して、その部分を話しやすくするような質問がベストである。
こう書くと難しく感じるが、実際はあなたもふだん雑談の中などでやっているのではないだろうか。

たとえば、自己紹介などで、ちょっと耳慣れない資格や職種が出てきたら、そこは必ず質問すべきだ。相手は、そこを説明したいと思っているが、話が長くなったり、押し付けがましくなるのではないかと思って、控えている可能性が高いからである。
「自分が聞きたいことを尋ねる」のではなく、「相手が話したいことを『推測して』尋ねる」のがコツである。

そして、質問をする時、注意しなくてはならないのが、声の大きさである。これが、第三のポイントだ。
むやみに大きな声を出す必要はないが、その場にいる数名の人のうち、いちばん遠い場所にいる人にも声が届くように質問するのである。
聞こえているかどうか確認するには、顔を見ればよい。聞こえにくいと、「聞こえない」とは言わなくても、表情に出ているものだ。基本は質問する人のほうを見るのだが、そのためには、ほかの人の顔も見る必要がある。

質問する相手との一対一の会話ではなく、集団の中で、周りの人にも聞こえるよう、別の人が会話に入ってきやすいように配慮するのだ。これもとくに難しいことではなく、周りの人の存在を意識することで、自然と声の大きさもそれに合わせたものになるし、視線も周りに向くようになる。
この三つのポイントを意識すると、その場にいる人たちは、あなたに注目し、あなたの話す言葉を受け入れやすくなる。

場の中心になる人、自然にリーダーになる人というのは、自分のことよりも、まわりの人が話しやすくなり、全員が話に参加できるようになる、そのような心配りのできる人なのだ。

メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/セクハラ・パワハラ防止コンサルタント/産業カウンセラー
李怜香(り れいか)

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