厚生労働省は、年次有給休暇(以下「有休」)取得促進のため、有休5日の消化を企業に義務付ける方針を固めた。有休の付与日数が10日以上である従業員が対象となる。また、取得時期については、従業員の希望を踏まえ企業が指定する責任を負い、企業が時期を指定する場合は従業員の希望を聞く制度になるそうだ。
有休消化の黒船来航!? 有休消化を企業に義務付け! 企業はどうする?

2016年4月に導入 罰則もあり

違反した企業には罰則もあり、2016年4月からの導入を目指すということである。現在の日本における有給休暇の取得状況を見ると、取得率は48.8%であり、平成32年時点の政労使目標である70%を大きく下回っている状況にある。また、いわゆる正社員の約16%が年次有給休暇を1日も取得していない。

欧州諸国では有休取得率が100%に近いのに対し、日本の有休取得率が低いという現状を踏まえ、今後、欧米並みに取得率を引き上げるためには、労働基準法を改正し法的義務にすることが必要と判断したようだ。

有休取得率を引き上げ、労働時間を減らすのが目的だといえるが、実は、日本の祝祭日の日数は少なくはないのである。
マーサーが毎年発行している 世界福利厚生調査データ(WBEG= Worldwide Benefit and Employment Guidelines)によると、世界で祝祭日の日数が最も多い国はインドとコロンビア(18日)、最も少ない国がメキシコ(7日)であった。西欧諸国は少ない傾向が見られ、日本は3位(15日)と比較的多い方である。

また、日本においては、有給休暇とは別に、夏季休暇、年末年始休暇を設けている企業も多い。休日日数については少なくない上に有休5日を義務付けられることで、企業としてはどう対応するのかが問題となってくるかと思う。

有給の計画的付与制度や会社の休日日数の見直しで対応

それでは、企業として取り得る対応について検討してみたい。
まず、一番多い対応策としては、現在の休日日数を変えずに、今回の改正への対応を考えるケースである。これは、現在も導入している企業もある、有休の計画的付与制度の導入を活用することが考えられる。

有休の計画的付与制度とは労働基準法第39条第6項に定められた制度で、従業員が持っている有休を、取得日を特定して計画的に消化させる制度である。

計画的付与は、有休の付与日数すべてについて認められているわけではなく、有休の付与日数のうち5日を除いた残りの日数が計画的付与の対象となる。
また、導入に際しては労使協定が必要となる。

計画的付与には、
① 事業場全体の休業による一斉付与
② 班別の交替制付与
③ 計画表による個人別付与

の3つの方法があり、業務に差し支えのない方法を取り入れるとよい。
企業において活用されている例としては、会社の休日として夏季休暇や年末年始休暇を設けず、上記①に基づき、計画付与としているケースや、上記③に基づき、 8月~9月中に個人の希望と業務の繁閑に基づき夏季休暇として有休を計画的に付与し大型連休とさせているケースが見られる。

次に考えられる対応策としては、会社の休日日数自体を見直した上で有休の計画的付与を導入するケースである。
 
日本の企業において、土曜日、日曜日、祝祭日、夏季休暇、年末年始休暇を設けている企業は多いが、労働基準法では、使用者は毎週少なくとも1回の休日、または、4週間を通じて4日の休日を与えなければならないと規定されており、土曜日、日曜日、祝祭日、夏季休暇、年末年始休暇は休みでなければならない、という法律はないのである。

現在の休日設定をリセットし、例えば1年単位の変形労働時間制を導入し年間休日日数を設定した上で、有休の計画的付与を導入する、という方法等、いろいろな対応策が考えられる。ただし、休日日数が減ることは不利益変更に該当するので、注意が必要であり、できれば社会保険労務士等プロに相談をしながら進めていくことをおすすめする。

ただ、休日だけを増やしても、人員構成や働き方の見直しをしなければ、休日出勤や時間外勤務が増えるだけ、ということにつながるため、企業としては、そこを踏まえた上で対応をする必要が出てくるだろう。
  
松田社労士事務所
特定社会保険労務士 松田 法子

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