1月26日から30日までの5日間、フロリダ州オーランドのウォルトディズニーワールドで、IBMのユーザーカンファレンス「IBM Connect 2014」が盛大に開催された。
テクノロジーの進化が人事管理のトレンドを変える~「IBM Connect 2014」レポートより

Kenexa創業者ルディ・カーサン氏

 27日のオープニング・ジェネラルセッションには数千名が収容される大会場で行われ、著名なポップスバンドや人気コメディアンがサプライズ参加する中でスタートし、今年の全体をくくるテーマ「ENERGIZING LIFE'S WORK」(ライフワークの活性化)について、IBMのクレイグ・ヘイマンGMより説明がなされた。

 人が仕事をする環境は、モバイル、ソーシャル、クラウド、ビッグデータ(とその分析)によって大きく変貌してきており、その変化の速度は増しているが、その重要な意味は、働く社員がマスとして扱われるのではなく、個として扱われる可能性が高まることである。

 モバイル、ソーシャル、クラウドで集積される膨大な社員個々の情報(ビッグデータ)が分析されることによって、適切な評価、適材適所の人材管理、トレーニングがより可能になり、個にフォーカスした、個を活かす仕事の場を会社は提供できる。新しいテクノロジーは、働き方、仕事の考え方さえ変えていくだろうと、ヘイマン氏は語った。

 また、2012年度に買収をした人材管理システム企業「Kenexa(ケネクサ)」創業者のルディ・カーサン氏もこのオープニングセッションから登壇し、IBMとのサービス連携によってより高度な人事管理の支援を提供していくと述べた。

 5日間の開催期間中には数多くのIBM、Kenexaユーザーによる事例紹介のセッションが開催された。ペプシコ(食品)はIBMのサポートの元PEPnetと名付けた企業内ソーシャルネットワークを構築。働き方の改革をテーマにこのプラットフォームを進化させ、ソーシャルを社内に浸透させようとしている。

 ブラジルのPetrobras(石油採掘)は短期間に石油掘削量を倍増させるには、これまでの仕事のやり方を見直す必要があり、現場を巻き込んだソーシャルネットワークを構築、1700を超えるグループが出来、コラボレーション効果が生まれているという。

 その他、調査データで課題を抽出し、改善計画を立て、採用、トレーニングを行い、社員のエンゲージメント(会社に対する愛着心)を高める施策を行っているなどとして、Giant Eagle(食品)、 Pizza Hut(外食)、The Hartford(保険)、 Monsanto(農業)Eart’n Park(外食)、Burlington(衣料) 、Caterpillar(産業用機器)などの企業が事例紹介を行った。

 すべてに共通しているのは、まずは調査を行いデータで現状を把握し改善目標を数値で設定すること、新しいテクノロジーを積極的に試し、試行錯誤すること、従業員視点に立ちエンゲージメントを高めることを常に意識していること、そして結果をデータで検証していることなどである。加えて言うと、HR(人事)リーダーは圧倒的に女性が多いことが日本とは大きな違いと言えるだろうか。

 世界を代表するIT企業のIBMが、テクノロジーによる働き方の変革をソリューションの中心コンセプトにここまで据えていることは非常に新鮮な驚きだった。多くのセッションを聞き、最新のテクノロジーの進化が人事管理のトレンドを変える可能性を強く感じた。それに伴い、近い将来、人事の仕事のスキルにITテクノロジー、分析手法が必須になることだろう。


HRプロ代表/HR総研所長 寺澤康介

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