今の子ども達は、どのような職業に憧れているのでしょうか?
昔は、「ケーキ屋」「花屋」「幼稚園の先生」が定番でした。子どものころからあこがれの職業に就くための勉強をしたものです。
データサイエンティストは人気職業になるか!

 しかし、最近の人気就職ランキングを見ると、常に人気の職業が入れ替わっているようです。子ども達が目指す職業について米国で興味深いニュースがあります。

「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」

 これは、米デューク大学のキャシー・デビッドソン氏がニューヨークタイムズ紙のインタビューで語った予測ですが、米国に限らず日本でも同じような状況にあるように思えます。例えば、「ネイリスト」「ブライダルコーディネータ」「ゲームプログラマー」など、近年になって着目されている人気職業がありますが、このような職業は10年前にはほとんど着目されていませんでした。
 つまり、伝統的な職業でこれから先も注目されていく職業もあるはずですが、今の子ども達が大人になり仕事に就く頃は、どのような仕事が注目されているかを確実に予測することはなかなか難しいと思います。
 しかしながら、経済や政治状況の変化や、人々のライフスタイルの変化、社会構造の変化などから考えると、近年になって注目されるようになった職業も、始めは何らかの社会的変化により誕生の芽が出ている時期があることがわかります。それでは、今はまだそれほど着目されていなくても、近い将来、人気職業になる可能性のある職業にはどんなものがあるでしょうか。

 なかなか予測は難しいところですが、近年のソーシャルネットワークの広がりを象徴とする、膨大なデータの広がりを背景に、そのデータをいかに活用するかが話題になり、いわゆるビックデータを活用できる人材が着目されるようになってきました。このように急に話題になっている職業に「データサイエンティスト」という仕事があります。まだ社会的に広く認知されている職業ではありませんが、すでに欧米ではこれから最も人材不足になる職業として着目され始めています。米国のスタンフォード大学やMITなどでは、データサイエンティストに必要な講義が着実に増えています。最近発足したデータサイエンティスト協会では『データサイエンティスト(分析人材)とは、高度に情報化された社会において、日々複雑化および増大化(ビッグデータ化)するデータを、利用者の利用目的に応じて情報を収集・分析する技術を有し、ビジネスにおいて実行可能な情報を作ることができる者をいう。』と定義しています。情報が溢れる時代になり、大量の情報が容易に収集できるようになりましたが、情報そのものにあまり価値はなく、情報をいかに活用するかがますます重要になりました。ビックデータをいかにして活用するか、企業も、政府も研究機関も着目しています。

 このような背景から、データを分析し、活用するためのサポートを行うデータサイエンティストの育成が急務になってきました。すでに米国の大学では、定量的分析法やコンピュータサイエンス、データ分析の修士課程が急激に増加しています。マッキンゼー・グローバル研究所の調査では、データのわかるマネジメントやサポートスタッフは、今後150万人は必要と予測しています。アルゴリズムを駆使して、データ分析を行い、未来を予測するデータサイエンティストの需要は益々必要になります。人気職業ランキングに「データサイエンティスト」が初登場で1位というような時代がそこまできているのではないでしょうか。


HR総合調査研究所 客員研究員 下山博志
(株式会社人財ラボ 代表取締役社長/ASTDグローバルネットワーク・ジャパン副会長)

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