「アベノミクス」とは、自民党総裁・安倍晋三が構想する経済政策で、安倍プラス「エコノミクス」の造語で、1980年代のアメリカ・レーガン政権での自由主義経済政策、「レーガノミクス」にちなんでいます。この名付け親は、自民党所属の中川秀直氏と言われており、安倍晋三自らが口にしたことはなく、経済学者やマスメディアが使用しはじめ、話題となりました。

「財政出動」「金融緩和」「成長戦略」の「3本の矢」で、デフレと円高から脱却し、名目3%の経済成長達成のため強気な経済政策案が掲げられています。

バブル崩壊後に続く不況はデフレが原因と捉え、インフレターゲット(物価上昇率の目標)を2%に設定、これまで独立性が重視されてきた日銀に、日銀法の改正も視野に入れ、2%の物価目標を掲げるように働きかけ、それが達成されるまで、無制限の量的緩和策をとることを決定するなど、大胆な金融緩和で、アメリカのオバマ大統領をはじめ、世界各国からも評価されており、話題を呼んでいます。

また、東日本大震災からの復興促進・防災体制の強化を軸として、老朽化した道路や橋、学校の耐震強化などを対象に、2009年4月の「経済危機対策」以来、過去2番目の規模となる13兆1千億円の補正予算が、財政政策の目玉となっています。

民間投資を喚起する成長戦略については、有識者からなる産業競争力会議において、2013年6月までに具体案をまとめる予定で、現在のところ重点分野が定まっていません。産業の新陳代謝の促進、人材力強化・雇用制度改革、立地競争力の強化、クリーン・経済的なエネルギー需給実現、健康長寿社会の実現、農業輸出拡大・競争力強化、科学技術イノベーション・ITの強化などが挙げられていますが、ここで注目されているのは、環太平洋経済連携協定いわゆるTPPへの対応で、円安誘導に続いて、関税撤廃が加わると、輸出産業にとって追い風となります。日本経済回復の起爆剤になるか、という注目が集まっています。

アベノミクスでの理想の流れは、デフレ対策のアナウンスメント効果があり、円高修正が達成されました。そこから、株価の上昇、輸出産業の利益増加から雇用拡大・所得増加、消費が拡大され、物価が上昇しインフレ率2%の達成となり、内需産業の利益増加から本格的な景気回復を見込んでいます。

しかし、財政出動や金融緩和は、一時的なカンフル剤に過ぎず、借金が増え、消費税増税により、財政規律が悪化、経済再生が失敗におわり、スタグフレーションを招くという最悪のシナリオになりかねないと不安視する声も多くあります。また、韓国や中国では、自国の経済に影響を及ぼすと考え批判の声をあげています。