【離職防止策】経営者の半数以上が“防ぎたかった離職”経験アリ。優秀な人材を定着させる「リテンションマネジメント」とは

株式会社OKANは2025年5月28日、企業の経営者を対象に実施した「望まない離職」に関する市場調査の結果を発表した。調査期間は2025年5月7日~10日で、関東地方に所在する特定5業種の企業の経営者・役員515人から回答を得ている。調査結果から、企業が直面する人材流出の課題や、その背景にある要因などが明らかになった。

経営者の過半数が「防ぎたかった離職」を経験

企業にとって人材の流出は避けたい課題だが、その裏側で経営者自身が「防ぎたかった離職」を経験している実態がある。OKANの最新調査では、こうした「望まない離職」の背景にある要因、特に職場環境や人間関係、そして経営者と従業員の間で認識のギャップがあるリテンションマネジメントの課題が浮き彫りとなった。調査結果からわかった、企業が持続可能な組織を築くための人材定着戦略とはどのようなものなのだろうか。

はじめにOKANは、「経営者・役員として『この従業員の離職は防ぎたい』と思っていたにも関わらず、従業員の都合で離職してしまった経験はあるか」と尋ねた。その結果、過半数の56.3%が「防ぎたかった離職がある」と回答した。同社はこの結果に対し、「従業員の離職は採用コストや教育コストなどの直接的な損失だけではなく、残された従業員の士気低下やノウハウなど、ソフト面の損失により組織力の弱体化にも繋がる」とした上で、「深刻な問題にもなりうる企業にとっての“望まない離職”が、多くの企業で発生している」との実態を指摘している。
経営者・役員として『この従業員の離職は防ぎたい』と思っていたにも関わらず、従業員の都合で離職してしまった経験はあるか

離職の主な要因は「職場環境」と「人間関係」

次に同社は、前問で「防ぎたかった離職がある」とした人に対し、「離職の具体的な理由」を尋ねた。すると、「快適な職場環境を用意できなかった」(14.8%)、および「良好な人間関係が構築できなかった」(13.4%)の2回答が突出して高い結果となった。経営者・役員は防ぎたかった離職について、職場環境や人間関係といった“ソフト面”の要因が強く影響したと考えているようだ。

他方、「私生活との両立ができなかった」(10.7%)との回答が上位2回答に次いでおり、同社は「多様な働き方が求められる現代において、複合的な両立支援が人材定着において重要な要素となりうる」との見解を示している。
離職の具体的な理由

「リテンションマネジメント」における認識のギャップとは

続いて、「人事領域で使われる『リテンションマネジメント』という言葉を知っているか」と尋ねたところ、72%が「知らない」と回答したという。

そこで同社は、『リテンションマネジメント』について「企業の魅力を高めることで、人材の流出を防ぎ、従業員が長く活躍できる状態をつくるための人事施策」と定義した上で、「最も優先すべきだと考える要素」について選択式で尋ねた。その結果、「快適な職場環境」が23.5%で最多となり、以下は「経営への信頼」が12.4%、「良好な人間関係」が11.8%、「やりがい」が10.7%と続いた。同社はこの結果について、前問の“防ぎたかった離職理由”の上位項目である「快適な職場環境」・「良好な人間関係」への認識と一致していることから、「経営層が離職原因として把握している課題に対し、優先的に対処すべきと認識している」とした。

一方で、“防ぎたかった離職理由”の10.7%を占めていた「私生活との両立」について、本設問では2.5%となっていることから、同社は「この数字の乖離は、経営者・役員が従業員の望まない離職の原因として『私生活との両立』を認識しつつも、具体的なリテンション施策における優先順位としては、まだ十分に高まっていない」との可能性を指摘している。
最も優先すべきだと考える要素

獲得~定着~退職までの包括的な人材戦略の重要性を認識

最後に、3つの異なる取り組みを挙げ、「経営における重要性」を尋ねている。その結果、「企業の魅力を高めることで、人材の流出を防ぎ、従業員が長く活躍できる状態をつくるための人事施策」に対しては、77.1%が「重要だと思う」(とてもそう思う:31.7%、ややそう思う:45.4%)と回答し、最も高い割合となった。この結果に対し同社は、「経営層は、人材流出防止と従業員の長期的な活躍を促す『リテンションマネジメント』に関わる施策の重要性を非常に高く認識していることが分かる」としている。

また、以下は「求職者と企業への相互理解を深めることで、ミスマッチを低減させるための一貫した採用施策」が75%、「離職後の従業員とも良好な関係を維持することで、企業の健全な新陳代謝を促す戦略的な退職施策」が66.2%となった。

これらの結果を受けて、「人材の獲得から定着、そして退職に至るまでの包括的な人材戦略の重要性が認識されており、特に現従業員の離職防止に高い関心が寄せられている」との見解を同社は示している。
経営における重要性
今回の調査結果から、企業が従業員の心身の健康や私生活とのバランスに対する理解を深め、それを組織運営に反映させることが、「望まない離職」の防止や持続的成長の実現のための不可欠な要素であることが示唆された。“防ぎたかった離職”をなくすためには、表面的な待遇だけでなく、社員が安心して働ける職場環境と、個々のライフステージに寄り添う柔軟な働き方の提供が重要だろう。

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000081.000018532.html