法務省の見解
AI(人工知能)により法律関連情報を提供するサービスが弁護士法72条に違反するかどうかをめぐる問題で、法務省は、2025年8月4日、AIを用いてユーザーが人事労務・労働法務に関する質問入力した内容に応じて学習データである法律関連情報を要約回答させる機能は、弁護士法72条に違反すると評価される可能性があるとの見解を示しました。一方で、AIを用いて当該法律関連情報を(要約せず)そのまま表示させる機能(一覧表示機能)は同条に違反しないとの見解も明らかにしています。これらの見解は、人事労務・労働法務に関する(弁護士監修QA記事などの)情報サービスを提供する弊社(Labor Field株式会社)が新規事業活動を開始するにあたり、いわゆるグレーゾーン解消制度(産業競争力強化法第7条1項に基づく)を利用して、弁護士法72条に違反するか確認を求めたことに対して回答されたものです。弁護士法72条では、弁護士や弁護士法人以外が報酬目的で法律事務を扱ういわゆる非弁行為を禁止しており、これに違反した場合には懲役2年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金が課される可能性があります(同法77条3号)。
これまでに法務省は、令和5年8月1日にガイドライン(「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」)を公表して、契約書等の作成業務、審査業務、管理業務を支援するサービス(いわゆるAI契約書レビューサービス)については、一定の要件を満たせば、非弁行為には該当しないとの考え方を示し、これに基づき現在リーガルテックサービスが広く提供されるに至っています。一方、ユーザーの自由入力に応じてAIが法律関連情報を回答することは、契約書のひな型を提供し、レビューを支援するというよりは、個別質問に応じた形で、AIが学習データを検索・参照して文書回答を作成するもので、質問文と生成された回答文の具体的内容によっては、新たに法的な回答が作成・提示されたと評価される可能性があり、「その他一般の法律事件に関して鑑定」に該当し得ることから、弁護士法72条との関係で問題となります。この点について、今回の法務省による見解は、AIによる要約回答はNG、(要約せずに)そのまま表示する(一覧表示する)ことはOKであると明らかにしました。