アンラーニングとは

従来、企業の人材育成の現場では「熟練」「熟達化」のアプローチが重視されてきました。これは、現場での 実践的な知識やスキルの習得こそが個人を成長させ組織の競争力を高めるという考え方に基づくものであり、そ の考え方に従い、管理職は熟練・熟達した存在であることが要件とされてきました。
 しかし、グローバル化やデジタル化の急速な進展、人口動態の変化や地球規模の問題の深刻化など、個人や組 織を取り巻く環境が激変を続けるなか、管理職に求められる要素も変化しています。現代社会においては、かつ て重視されてきた、積み重ねてきた知識やスキル、経験に固執することが、むしろ弊害となるケースが発生しま す。このような時代において求められるのは、断続的に起こる変化への柔軟な適応力と継続的成長力です。
 そこで必要となるのがアンラーニングです。近年耳にすることが多くなったリスキリングと並んで人材育成に 必要とされる「アンラーニング」は、もともと組織学習の研究から生まれた概念で、「学習棄却」や「学びほぐ し」と訳され、時代や環境の変化によって有効性が低下した要素を捨て、新たな要素を取り入れて組み替えるこ とを意味します。アンラーニングの概念は人にも適用することができ、アンラーニングによって組織も人も状況 に応じた成長を遂げることができます。
 組織における人材にとってアンラーニングが必要となる大きな局面の一つは、昇進です。「名選手、必ずしも 名監督にあらず」は、ビジネス社会においてもあてはまり、プレイヤーとして活躍してきた人材がマネジャー(管理職)になったとき、転換した役割を担うことに戸惑いや限界を感じることが、少なからずあります。管理職の行動が変容しなければ、部署ひいては組織全体の成長は期待できません。逆に、プレイヤーがマネジャーへとうまく脱皮することで、組織全体のパフォーマンスが向上します。企業の人材育成担当者にとって、新任管理職がこの「プレイヤーとマネジャーの溝」をうまく飛び越えられるようサポートすることは、非常に重要な課題です。

「課長職のアンラーニングに関する実態調査」実施の背景・調査及び分析結果

上述のとおり、管理職へと役割転換することの重要さと難しさは認知されているものの、抽象的理解にとどまる限り課題解決にはつながりません。当社は、「プレイヤーからマネジャーへの役割転換において、本質的に解決すべきことは何か?」を見出すことを目的に、2022 年4 月から12 月にかけて 18 社162 名を対象に実施した 研修プログラム「マネジメント・ジャーニー」を通じ、以下の項目について調査分析を行いました。

✓ 「アンラーニングを必要とする課題」を特定することができる社員の割合
✓ 「アンラーニングを必要とする課題」のパターン
✓ 課題の原因となる「動機傾向※1」

※1:アメリカの心理学者デイビッド・C・マクレランドが提唱。人間の主要な動機ないし欲求は「達成」「権力」「親和」「回避」の4つ であり、人間の行動の裏には必ずいずれかの動機があるという理論。

本調査レポートにはこれらの調査分析結果に加え、下記内容についても記載しています。
✓ アンラーニングを必要とする課題を特定することができるマネジャーの特徴
✓ アンラーニングを必要とする課題を発見するためのプログラム実施の際に工夫すべきポイント
✓ アンラーニングを実現するための示唆