第50回:できる経営幹部は“当たり前”の基準が違う。ハイ達成する人の心理学を徹底解剖

2026年も年明けムードを終えて本番臨戦体制に入っていらっしゃることと思います。経営幹部の皆さんは日々のチームの目標を追い、奮闘中でしょう。目標達成というのは不思議なもので、達成し続ける人やチームは常に達成し続け、未達で終わる人やチームは常にあと一歩留まりに。これは個々人の実力の差なのでしょうか。もちろんそれもありますが、それだけではないメンタリティの側面から「達成の心理学」について紹介したいと思います。

あなたの「単価」に関する当たり前の基準は?

あなたの会社が提供している商品やサービスの単価は、いくらでしょうか? あるいは、これまでに転職経験や事業部門間での異動経験のある方は、以前は単価いくらの商品やサービスを扱っていましたか?

私たちは、誰もがその人固有の“単価の基準”を持っています。1億円の原料をトレーディングしてきた人と、数千万円のプロジェクトを受注してきた人、数十万円の法人向けサービスを売ってきた人、数百円の商品を取り扱ってきた人では、それぞれ売るものの相場観は自ずと異なります。

もちろん、単価によって必ずしも商品の良し悪しが決まるわけではありません。そもそも取り扱う金額は、その人にいつしか染み付いた相場観となります。

例えば、10万円の値引きがあるとします。単価1千円の商品を扱っており、販売個数が1000個で100万円の商談において、10万円の値引きは非常に大きなものです。血と汗の結晶である1000個のうちの100個分も無料にしてしまうのですから。一方で、1億円の商談で10万円を値引きすると言われても、ありがたくないとは言いませんが、消費税分にもはるか及びませんよね。せっかく値引きしたとしても商談に与えるインパクトは微々たるものでしょう。

この同じ10万円が、比較対象となるものによって(100万円と1億円)大金に見えたり少額に見えたりすることを、「アンカリング効果」といいます。

私は上司の皆さん(幹部や役員、社長の方々)の転職支援もしていますが、転職の際に、この点も非常に大事なのです。1億円の商いに従事してきた人がなかなか数百円、数千円を取り扱うビジネスには転身し難く、逆もまた然りです。その理由は、皆さんが知らず知らずのうちに身につけた“単価の基準”の落差にはそうそう対応できるものではないからです。

達成の科学・その1は、「自分の“単価の基準”から離れるな」です。

あなたの「進捗状況」に関する当たり前の基準は?

経営幹部の皆さんは、常に何かしら目標数字や実績数字に取り囲まれて仕事をされています。今月の月間目標が、現時点で50%まできたとして、これには2通りの受け止め方があります。「50%まで達成できた」と「まだ50%しか達成できていない」。あなたはどちらでしょう?

物事の捉え方や表現の仕方によってその印象が変わることを、「フレーミング効果(文脈効果)」と言います。皆さんご存知のところでは、「コップの水があと半分しかない」vs「まだ半分もある」というものの見方の話を聞いたことがあるのではないかと思います。事実は「コップの中の水がちょうど半分入っている」というだけのことですが、人によって楽観的にも悲観的にも捉えられるという話です。

セブン-イレブンの元・会長である鈴木敏文氏が、セブンプレミアム「金のシリーズ」を生み出したのは、デフレの時代に「6割の人が安い商品を求めている」という消費者調査データを見て、「4割は安いものを求めていない(良い商品なら高くてもよい)」ということに着眼したからでした。

達成癖のある人には、楽観性と悲観的心理がいい具合に共存しています。「よし、これで50%達成できたぞ」という楽観性と、「来週までには80%まで持っていっておかないと、月末に苦しくなる。いま頑張ろう」という悲観的心理・危機感があります。“先行逃げ切りマインドセット”を持つ人が、達成する人なのです。

一方、達成できない人の心理は真逆で、「ああ、まだ50%だ。先は長いな…」という悲観的心理と、「まだ月末までには日にちがある。来週から頑張ろう」という楽観性があります。このタイプは夏休みの宿題を「明日からやろう」で引き延ばし続けた挙句、8月末になって泣きながら親や兄弟を巻き込むタイプですね(笑)結局、残りの時間ではもうどうにもならないと悟ってギブアップしてしまうことが多い“先延ばし先送りマインドセット”の人は、なかなか達成とは縁遠い人生を歩みがちです。

達成の科学・その2は、「あなたの“フレーミング”はどのようなものか」です。

あなたの「達成確率」に関する当たり前の基準は?

こうしたことの繰り返しで、私たちの心には「達成するのが当たり前」というマインドセットが埋め込まれる場合と、「達成なんてなかなかできるものじゃない」というマインドセットが埋め込まれる場合とがあります。

頭の中で基準となっている数値や情報に強く影響を受けて判断してしまう意思決定プロセスを「固着性ヒューリスティック」(=思考の基準点が固定される癖)といいます。自分の売上額や行動量についての「基準」=固着性ヒューリスティックがどこにあるか、この機会にぜひ確認してみてください。

月末、期末に帳尻を合わせようと考える人。下旬に入るまでには達成してしまおうとコミットする人。目標数値までいけばよいと考える人。120%達成を自主目標とする人、150%や200%を追う人。部内でそこそこ以上に入れればよいと思う人、トップを獲得したいと狙う人、全国1位になりたいと野心を持ち行動する人。ある面、スタート時点、途中経過時点での目標の持ち方で、すでに差や勝敗は確定しているのです。

どうせなら、高業績派のヒューリスティックに寄せる、あるいは上書きするなどしてみませんか?

比較対象を変えてみる(「80%を目指している人より、120%、200%を目指している人をベンチマークする」、「部内1位より、全国トップ3の人をベンチマークする」など)。連続達成する人がなぜ連続達成し続けるのかと言えば、達成を続けている人にとっては、未達成は何としても避けたいことになるからです。

達成の科学・その3は、「あなたの周囲にいる人たちを変えることであなたの“固着性ヒューリスティック”を上書きする」です。類は友を呼ぶと言われる如く、できる集団に入ることは大事なのです。いわゆる“進学校効果”ですね。この観点も、転職先を検討する際にひとつの要素としてみて頂きたいことです。


過剰な無理は禁物ですが、経営幹部のあなたがどんな「当たり前の基準」を持つか、どんな「当たり前の基準」の集団に身を置くかで、部門の業績は大きく変わります。どうせなら、社長レベルまで「当たり前の基準」を上げてみてはいかがでしょうか。それは部門の数字だけでなく、あなた自身の市場価値も確実に引き上げるでしょう。