第5回:「苦手な部下」は自分を映す鏡? 苦手な相手にこそ「好意」を示し職場を活性化させる方法

職場の部下に苦手意識を持つリーダーは少なくない。必要なリーダーシップの発揮が不十分になり、活性化された組織運営が困難になっている事例も散見されるようだ。そのような組織をリーダーと部下の双方が気持ちよく働ける職場に変革するには、一体どうしたらよいだろうか。今回は「部下に苦手意識を持つ場合の組織づくり」について考察をしてみよう。

リーダーを悩ませる「部下への苦手意識」

「苦手な部下がいる」。多くのリーダーが抱える代表的な悩みのひとつだ。

職場にはさまざまな家庭環境・教育環境を経て成長した人材が配置される。そのため、「仕事に対する意欲が低い」、「報告・連絡・相談(いわゆる“ホウレンソウ”)ができない」、「指示に従わない」などの特徴を持つ部下がいることもしばしばである。

このような部下の指導・管理を苦手とするリーダーは多い。往々にして職場の雰囲気も芳しくなく、組織パフォーマンスも停滞しがちである。

このような職場を統括するリーダーが組織を活性化するには、どうしたらよいだろうか。

「苦手意識」は態度や表情に現れる

ヒトは苦手意識を感じたとき、知らず知らずのうちにその思いが態度や表情に現れてしまうものだ。リーダーが特定の部下に苦手意識を持つ場合も例外ではない。リーダー自身は全く意識をしていなくても、「私はあなたのことを苦手に思っています」という“マイナスの感情”が態度や表情からにじみ出てしまうわけである。

また、部下は自分に向けられた“マイナスの感情”を、極めて敏感に感じ取りがちだ。自分に“マイナスの感情”を持つ相手に好意を抱く人間など存在しない。

従って、態度や表情で“マイナスの感情”を示すリーダーに対し、部下は「接しづらさ」を感じたり「苦手意識」を持ったりするようになる。その結果、部下自身もリーダーとのかかわりをなるべく回避するなど、“マイナスの感情”がこもった態度を示し始める。

このようにして上席者と部下との間で円滑なコミュニケーションが成立しなくなる事例は、決して少なくないようだ。

相手の反応は「自分の反応を映し出す鏡」

コミュニケーションは表裏一体である。自分が相手に好意的なコミュニケーションを取れば、相手もこちらに好意的なコミュニケーションを取る。自分が非好意的なコミュニケーションを取れば、相手も非好意的なコミュニケーションで返してくるものである。

つまり、眼前に現れる相手の態度・表情は、多くのケースで「自分の態度・表情が反映された鏡」のようなものといえる。これは、返報性の法則の特徴が現れている一例でもある。

返報性の法則とは、他者から何かを受け取るとそれに対してお返しをしたいと感じる心理現象のことである。この法則は物質的なものを受け取った場合だけでなく、態度などの非物質的なものを認識した場合にも作用する特徴がある。そのため、相手から受けた態度・行動に対し、同様の態度・行動で返そうとする行為が発現するのである。

従って、部下の態度が“マイナスの感情”を示していると気付いた際、「やはり彼のことは苦手だ」などと考えるのは好ましいとはいいがたい。「私の態度・表情が彼に“マイナスの感情”を示しているのではないか」と、自分自身を振り返ることが非常に重要だ。

自ら“プラス感情”を示して「返報性の法則」を活用

ヒトは相手から受けた態度・行動に、同様の態度・行動で返そうとする。この事実はリーダーのコミュニケーションがプラスに変われば、部下のコミュニケーションも連動してプラスに変化することを示している。

そのため、自身が苦手とする部下の態度変容を求めるのであれば、そのような部下に対してこそリーダー自らが好意的なコミュニケーションを意識的かつ積極的に取ることが重要になる。

例えば、リーダーから部下に対し「期待しているから頼むよ」などの声掛けが日常的にあれば、「仕事に対する意欲が低い」と思っていた部下の態度にも変化の兆しが見られるかもしれない。リーダーが「君の意見を聞かせてくれないか」などと部下の意見を尊重する態度を示していれば、「ホウレンソウができない」などの問題も削減されるかもしれない。

このようにリーダーからのポジティブな働き掛けが定着している組織は、部下の心理的安全性が高まりやすくモチベーションも向上しやすい。その結果、リーダーシップの発揮が容易になり、活性化された職場づくりが進むものである。

苦手な相手に自ら好意的なコミュニケーションを取るのは、あまり気が進まないかもしれない。しかしながら、リーダー自身が苦手な部下に好意的な反応を見せれば、比較的容易に部下の反応が好転する事例は多いものだ。苦手な相手にこそ、笑顔で好意的なコミュニケーションを取るという第一歩が踏み出せれば、気持ちよく働ける職場づくりは実現可能といえよう。