学習院大学

第2回

グローバル企業が求める人材に不可欠な素養は、
変化に柔軟に対応できる力。
国際社会科学部にはそれを育てる仕組みがある

  • 末廣 昭
    学習院大学
    国際社会科学部 教授
  • 杉原 章郎
    株式会社ぐるなび
    代表取締役社長
  • 淡野 健 氏 (ファシリテーター)
    学習院大学
    キャリアセンター担当事務長

グローバル企業のトップは、グローバル人材をどのように定義し、そしてどんな素養を求めているのか。今回は、楽天株式会社の創業メンバーの一人であり、今年6月に株式会社ぐるなびの社長に就任した杉原章郎氏と、学習院大学 国際社会科学部の創設期の運営に尽力した前学部長末廣昭氏に企業が求めるグローバル人材の要件や、国際社会科学部が育てる学生について話を聞いた。ファシリテーターは、日頃から企業の人事担当者と接し、国際社会科学部1期生のキャリア支援を行っている同大学 キャリアセンター担当事務長の淡野健氏。

企業が定義するグローバル化、
そしてグローバル人材とは?

淡野
この度は、ぐるなびの社長ご就任おめでとうございます。本日は、企業が求めるグローバル人材の要件などについてお聞かせいただければと思います。杉原社長は、楽天の創業メンバーとして同社のグローバル化もずっと見てこられたと思いますが、そもそもグローバリゼーションというものを、どのように捉え、定義されているのでしょうか。
杉原
私は、インターナショナリゼーションとグローバリゼーションはまったく違うものであると考えています。例えば楽天の場合、日本の本社では、70カ国を超える国々から人材が集まって一緒に仕事をしており、これこそがまさにグローバリゼーションです。一方、シンガポールやアメリカ、フランスなど世界30カ国・地域に海外拠点を展開していますが、それぞれの会社が現地の人ばかり採用していたら、これは単にインターナショナリゼーションに過ぎません。海外の拠点であっても、本社と同様に、いろいろな国の人々が集まって、いろいろな種を育てて世界へと送り出していくことで、はじめて真のグローバリゼーションが成立すると言えるでしょう。これは私自身、ぐるなびにやって来てあらためて感じていることなのですが、人手が足りず、今や外国人の労働力が不可欠となっている外食産業こそ、日本で特に早くグローバリゼーションが進むのではないかと思っています。
淡野
一方、大学側の立場から、末廣教授はグローバリゼーションについてどのようにお考えでしょうか。
末廣
私自身、タイを中心にアジアに進出した日本企業を数多く見てきましたが、やはりその多くはグローバリゼーションというより、インターナショナリゼーションにとどまっていました。むしろ私は、昨今のインバウンド、海外からの多様な観光客をいかに受け入れるかを考えることのほうが、よほどグローバル化を実現するものだと感じています。ですから学生に対しては、コミュニケーションツールの一つとして語学を学ぶことも大切ですが、それ以上に物事をグローバルな視点で考えることのできる力を身につけてほしいと考えています。杉原社長はグローバル人材に必要な要件とは、何だとお考えですか。
杉原
変化に柔軟に対応できること、それに尽きるでしょう。グローバル化が進むことで、変化のスピードはますます加速していきます。そうした中、変化を当たり前のこととして捉え、常に変わり続けなければ、成長にも継続にもつながりません。では、変化に対応する柔軟性はどのようにして身につけるのか。それは、日々どんな結果にも満足せず、常に変えていこう、少しでも良くしていこうと思い、行動することだと考えています。
学習院大学国際社会科学部とは

学習院大学国際社会科学部は2016年4月に新設された、同大学で最も新しい学部である。国際的なビジネスコミュニティで活躍できる素養を身につけた即戦力のある人材の育成を目指し、社会科学の5分野「法学・経済学・経営学・地域研究・社会学」を幅広く学ぶカリキュラムを通じて、国際経済・社会が直面する課題を理解し、さらにそれを解決する力を養う。2020年春に第1期生が卒業を迎える。

学習院大学国際社会科学部
Profile
杉原 章郎 氏

杉原 章郎

株式会社ぐるなび
代表取締役社長

楽天の創業メンバーの一人。1997年より「楽天市場」の出店営業部門を担当した後、楽天市場以外の複数の事業立ち上げに従事。取締役新規事業開発部部長、楽天オークション部長(当時)、楽天ブックス㈱社長(当時)、開発部門担当役員などを経て、グローバル人事担当役員ならびに障がい者雇用の特例子会社である楽天ソシオビジネス株式会社の社長を務めた。2019年6月に株式会社ぐるなび代表取締役社長に就任。

末廣 昭 氏

末廣 昭

学習院大学
国際社会科学部 教授

1976年東京大学大学院経済学研究科修了後、アジア経済研究所、大阪市立大学を経て、1995年より東京大学社会科学研究所教授。2009年〜2012年、同研究所所長。タイ国チュラーロンコン大学客員研究員、ベルリン自由大学、メキシコのコレヒオデメヒコ大学院大学の客員教授、フランス Collegium de Lyon の招聘研究員。アジア政経学会理事長、日本タイ学会会長などを歴任し、2016年より学習院大学国際社会科学部教授。2010年紫綬褒章受章。

淡野 健 氏

淡野 健

学習院大学
キャリアセンター担当事務長

1985年学習院大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。新規事業・総務人事採用、営業事業部門長を歴任。モチベーションマネージメントや就活テーマで企業や大学講演を経験。2009年、スポーツ選手のセカンドビジネス企業を起業。2010年4月より現職として、キャリア支援、講座ファシリテーター、セミナー運営、企業関係構築を図る。CCE,Inc.認定GCDF-JAPANキャリアカウンセラー。

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