学習院大学

第1回

社会科学の視点を通じて
グローバルに活躍する人材を育てる。
これが学習院大学の社会的使命であり役割

  • 寺澤 康介 (ファシリテーター)
    ProFuture株式会社
    代表取締役
  • 乾 友彦
    学習院大学
    国際社会科学部長
  • 守島 基博
    学習院大学
    副学長

2016年に開設された学習院大学国際社会科学部では、「国際社会で活躍するビジネス人材を輩出する」というビジョンを掲げ、すべての学生が高度な英語力はもちろん、世界中の人と対等に渡り合える実践的なビジネススキルを習得することを目指している。果たして、どのようなポリシーのもと、どのようなグローバル人材を育てているのか。副学長・守島基博氏と国際社会科学部長・乾友彦氏にお話を聞いた。

グローバル企業が求める能力は
「課題発見・解決力」

寺澤
2016年に設置された国際社会科学部は、学習院大学にとって52年ぶりの新設学部だと伺っています。設置にあたり、どのような背景や経緯があったのでしょうか?
学習院大学全体としてグローバル化を進めていきたいという大きな目標がありました。一方で社会の要請として、グローバル人材を供給していくことが、これからの大学の役割の一つと捉えていました。この2つのミッションに対して、既存の学部で取り組むだけではなく、新たなフラッグシップとして先進的かつ牽引役を担う学部を作ろうと考えたのが、国際社会科学部を新設した経緯です。
守島
大学全体がグローバル化を目指すという流れの中で、従来型の英語教育や海外研修(留学)だけでは、真のグローバル人材は育てられないのではないかと判断しました。また、学習院大学なりのグローバル人材を考えた時に、重要なのは、基盤として社会科学的な思考力を持った人間です。そういった学生を一人でも多く社会へと輩出していくことが、国際社会科学部の使命だと考えています。
寺澤
企業がグローバル人材に求めている能力とは、どのようなものなのでしょうか?
学習院大学の卒業生が入社した海外と取引のある65社に対してアンケートを実施したところ、学生に求める能力は「課題発見・解決力」が96.9%と圧倒的に多く、次いで「国際経済・社会に対する理解力」、「英語によるコミュニケーション能力」となっています。
守島
企業が求めているのは、単に「英語が話せる」、「交渉力がある」だけの人材ではありません。ビジネス上の問題や課題を見つけて、分析し、それを解決まで結びつけていける力、それこそがビジネスパーソンの基盤なのです。そういう意味では、国際社会科学部の取り組みは、企業のニーズに合っていると思います。

企業が求めている能力(海外と取引がある65社の人事担当者の回答)

企業が求めている能力

(複数回答可)2014年12月・学習院大学調べ

寺澤
国際社会科学部が社会に送り出したいグローバル人材像とは、具体的にどのように定義されているのでしょうか?
ひと言で表すなら、『グローバル化を推進するリーダーシップを持った人間』です。最近の学生は、外資系企業や日本企業の中でも先端的なIT系企業などを目指す傾向にあるのですが、そういった企業はグローバルな競争が厳しく、常に新しいマーケットを開拓し続けなければなりません。そのためには海外、現地の人々と十分なコミュニケーションを取り、論理的な根拠を持って説得する能力が問われます。そうした能力を基礎力として携えたうえで、社会に出た後、早期に実践で活躍できるような人間を送り出していきたいと考えています。
守島
例えば、ある企業がアジアの市場を開拓する際、プロジェクトリーダーは、その国の状況や人々の暮らしをあらかじめ理解し、そのうえでデータを分析することなどが必要になります。国際社会科学部の強みは、そういったグローバルな視点と現場の視点(グローカルなものの見方)を、もちろん完成形ではありませんが、社会に出る前にある程度、身につけることができるところでしょう。
学習院大学国際社会科学部とは

学習院大学国際社会科学部は2016年4月に新設された、同大学で最も新しい学部である。国際的なビジネスコミュニティで活躍できる素養を身につけた即戦力のある人材の育成を目指し、社会科学の5分野「法学・経済学・経営学・地域研究・社会学」を幅広く学ぶカリキュラムを通じて、国際経済・社会が直面する課題を理解し、さらにそれを解決する力を養う。2020年春に第1期生が卒業を迎える。

学習院大学国際社会科学部
Profile
守島 基博 氏

守島 基博

学習院大学 副学長/経済学部教授

1986年 米国イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。人的資源管理論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学経営学部Assistant Professor。慶應義塾大学総合政策学部助教授、同大大学院経営管理研究科助教授・教授、一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年に学習院大学経済学部経済学科教授に就任。2018年より副学長を務める。厚生労働省労働政策審議会委員などを兼任。著書に『人材マネジメント入門』、『人材の複雑方程式』(共に日本経済新聞出版社)、『人事と法の対話』(有斐閣)などがある。

乾 友彦 氏

乾 友彦

学習院大学 国際社会科学部長/
同学部教授

1985年 一橋大学経済学部卒業後、日本政策投資銀行入行。1990年 アメリカ・ジョンズ・ホプキンス大学経済学部修士課程修了(経済学修士号取得)。日本大学経済学部助教授・教授を経て、2006年 一橋大学経済学研究科博士後期課程修了(単位取得退学)。2009年より内閣府統計委員会担当室室長、日本大学経済学部教授を歴任し、2014年に学習院大学国際社会科学部開設準備室教授に就任。2016年に同学部教授となり、2019年より現職。専門領域は生産性、経済発展論、国際経済学。

寺澤 康介

寺澤 康介

ProFuture株式会社 代表取締役、
HR総研所長

1986年 慶應義塾大学文学部人間関係学科卒業後、文化放送ブレーン入社。2001年 文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役を経て、2007年 採用プロドットコム株式会社(現ProFuture株式会社)設立、代表取締役社長に就任。2012年 HR総研所長に就任。

    シリーズ記事一覧

学習院大学
  • 労政時報
  • 企業と人材
  • 人事実務
  • 月刊総務
  • 人事マネジメント
  • 経済界
  • マネジー