学習院大学

独自の学習システムや海外研修(留学)制度など
“自立力”を養うカリキュラム

寺澤
国際社会科学部では、そういった能力を習得するために、より実践的な学習を提供されているそうですが、カリキュラムの内容や特徴についてご説明ください。
私たちが重視しているのは、広い意味でコミュニケーション能力を高めることです。グローバルな場でのビジネスコミュニケーションには英語力が不可欠ですが、同時に自分の考えを論理的に、データの裏付けを持って伝えることも求められます。そこで1年目は英語教育を徹底し、2年目以降は英語を使って実践的な社会科学(法学・経済学・経営学・地域研究・社会学)を学習します。同時に、企業からのニーズの高い「課題発見・解決力」を養う演習も行います。それら英語教育と専門教育を統合させる取り組みが、「CLIL(クリル)」と「ブリッジ科目」です。

国際社会科学部の4年間のカリキュラム概念図

カリキュラム概念図
「CLIL(クリル)」とは英語学習の手法で、専門科目(社会科学)に関する内容を英語で学習することで、実践的な英語力を高めます。一方の「ブリッジ科目」は、2年生の2学期から英語で専門科目(社会科学)を学ぶ際、スムーズに英語の授業へ移っていけるように橋渡しをする科目です。また、教壇に立つ教員陣の顔触れも、年齢、性別、国籍のダイバーシティに配慮し、実社会で豊富な経験を積んできた人材を揃えております。

本学部が提供する5つの社会科学分野

5つの社会科学分野
寺澤
カリキュラムのもう一つの特徴として、4週間以上の海外研修(留学)を義務付けているそうですね。
はい。私たちの海外研修(留学)は、自分で作るオーダーメイドなのが特徴です。多くの大学では、決められた国の、決められた大学で、用意されたプログラムをこなすような、レディメイドタイプの海外研修(留学)を行っています。これでは、旅行気分で終わってしまうケースもあるでしょう。一方、国際社会科学部では自分が何を学びたいのか、そしてそのためにはどこの国に行き、どういうプログラムを、どのくらいの期間学べばいいのかを学生自身で考えなければなりません。
守島
オーダーメイドは「一人ぼっちで行く」海外研修(留学)で、これがレディメイドタイプとの大きな違いです。例えば、現地の提携校に何十人も送り込むと、海外研修(留学)期間中はずっと日本人同士でいることになります。しかし、オーダーメイドだと、周りはみんな外国人で、勉強も生活もすべて自分で何とかしなければなりません。それが学びにとっては非常に重要なのです。
寺澤
まさに成長を促す「ストレッチ」ですね。厳しい経験させることで、学生自身が変容、成長していくと。実際そういった経験を経て、ガラっと変わった学生も多いのでは?
ある学生は、ある程度英語の点数が高かったので入学後は上級クラスに配属させたのですが、やや消極的な性格で、当初は上級クラスへの配属や海外研修(留学)などに戸惑っていました。しかし、学習を重ね、海外研修(留学)なども経験するうちに、それまで自分では気づかなかったようなグローバルな適応力や、自分の中に眠っていたポテンシャルに気づき、まるで別人のように変わっていったのです。就職活動では、外資系のIT企業などを志望していますが、とても順調で、入学した頃からすると、本人も思いもしなかったような進路を歩み始めています。
守島
大学における学習において重要なのは、自分でも知らなかった能力に気づき、のばしてあげることです。学生時代は、先の例のように何かを与えられると、気づきを得てパッと開花することが多くあります。そして面白いと感じると、より積極的に学び、さらに成長していく。大学というのは、そういうスパイラルを回し続けることが何より重要なのです。学生たちの隠れた能力をいかに開花させてあげられるか、それが私たちの役割だと思っています。

学び続ける力と
一歩前に出る勇気を持ってほしい

寺澤
2020年3月、国際社会科学部の第1期生が卒業を迎えますが、社会へと出ていく学生たちにどのような活躍を期待されていますか?
私たちが一番期待しているのは、学生時代に身につけた学び方を活かして、学び続けてほしい、ということです。残念ながら、大学の授業で学んだことの多くは、やがて陳腐化していきます。学んだ知識は常にアップデート、さらにはアップグレードし続けなければなりません。変化の激しい時代において、自分の考え方を柔軟に変えながら、常に新しいことを学び続けられる人になることを期待しております。
守島
私は、一歩前に出る勇気を持ってほしいと思っています。と同時に、前に出たときに後ろを振り返って、みんなを導けるような人になってほしい。一歩前に出る勇気と、周りを巻き込む力。その両方を兼ね備えて初めて、組織人として完成されるのではないでしょうか。極端な言い方をするなら、英語など後からいくらでも勉強できます。しかし、そういったマインドセットは若いうちに鍛えたほうがいいのです。
寺澤
今後この学部をどのように進化・発展させていきたいとお考えでしょうか?
時代によって社会の要請も変わり続けますので、その都度フレキシブルに応えられるような体制を整えていきたいと考えております。特にAIやロボットが急速に進化している昨今、人間に求められるスキルとは何なのかを、我々も、そして学生自身も考える必要があるでしょう。今後も新しい時代の要望や技術に適応し、絶えず変化し続けられるような人間を育てていきたいと思っています。
守島
AI時代のキーワードは、「共感」です。他人の言っていることを単に言葉として理解するだけでなく、シンパシーを持って理解してあげる。それはAIやロボットにはできない、人間だけができる最後の砦でしょう。共感力のある人材を育成することは、私たちの大学にとっても、そして社会にとっても大きな課題ですので、その点を意識した教育を、国際社会科学部はもちろん、学習院大学全体として大切にしていきたいと考えております。
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学習院大学国際社会科学部とは

学習院大学国際社会科学部は2016年4月に新設された、同大学で最も新しい学部である。国際的なビジネスコミュニティで活躍できる素養を身につけた即戦力のある人材の育成を目指し、社会科学の5分野「法学・経済学・経営学・地域研究・社会学」を幅広く学ぶカリキュラムを通じて、国際経済・社会が直面する課題を理解し、さらにそれを解決する力を養う。2020年春に第1期生が卒業を迎える。

学習院大学国際社会科学部
Profile
守島 基博 氏

守島 基博

学習院大学 副学長/経済学部教授

1986年 米国イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。人的資源管理論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学経営学部Assistant Professor。慶應義塾大学総合政策学部助教授、同大大学院経営管理研究科助教授・教授、一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年に学習院大学経済学部経済学科教授に就任。2018年より副学長を務める。厚生労働省労働政策審議会委員などを兼任。著書に『人材マネジメント入門』、『人材の複雑方程式』(共に日本経済新聞出版社)、『人事と法の対話』(有斐閣)などがある。

乾 友彦 氏

乾 友彦

学習院大学 国際社会科学部長/
同学部教授

1985年 一橋大学経済学部卒業後、日本政策投資銀行入行。1990年 アメリカ・ジョンズ・ホプキンス大学経済学部修士課程修了(経済学修士号取得)。日本大学経済学部助教授・教授を経て、2006年 一橋大学経済学研究科博士後期課程修了(単位取得退学)。2009年より内閣府統計委員会担当室室長、日本大学経済学部教授を歴任し、2014年に学習院大学国際社会科学部開設準備室教授に就任。2016年に同学部教授となり、2019年より現職。専門領域は生産性、経済発展論、国際経済学。

寺澤 康介

寺澤 康介

ProFuture株式会社 代表取締役、
HR総研所長

1986年 慶應義塾大学文学部人間関係学科卒業後、文化放送ブレーン入社。2001年 文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役を経て、2007年 採用プロドットコム株式会社(現ProFuture株式会社)設立、代表取締役社長に就任。2012年 HR総研所長に就任。

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