経営×人事×タレントマネジメント

タレントマネジメントに取り組まれている企業を訪問し、その導入事例をシリーズでご紹介するとともに、
タレントマネジメントを切り口として、人事と経営の関係性や今後求められる人事のあり方を考察していきます。

Vol.9 2020年に時価総額1兆円企業に。経営目標の実現に向け、グローバル経営人材のパイプライン構築に取り組む

日清食品ホールディングス株式会社 執行役員 CHO グループ人事責任者 上村 成彦氏 / 人事部 人材開発室 課長 橋本 晃氏
聞き手:中央大学 大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール) 客員教授 楠田 祐氏

世界初のカップ麺「カップヌードル」を80カ国以上で販売し、即席麺に加えてチルド食品、菓子、飲料などの食品事業を幅広く展開する日清食品グループ。
即席麺の市場は日本で56億食、世界では1,000億食
日清食品さんは「カップヌードル」という世界で知られる強い商品をお持ちで、グローバル展開も早くからされていますが、今の事業の状況や、これからどういうところに向かおうとされているのかを教えていただけますか。
国内の事業は、現在、非常に好調です。これまで我々のメインのお客様はどちらかというと男性で、若干、年齢層も上がってきていますから、今、女性のお客様をもっと増やそうと、低カロリーの「カップヌードルライトプラス」など、女性を意識した新製品を次々に出していますし、若者を意識したコマーシャルなどのプロモーションや商品開発にも力を入れていて、売上は伸びています。ただ、長期的に見れば日本の人口は減っていきますね。即席麺の市場は日本では56億食ですが、世界ではどれぐらいだと思われますか? 1,000億食です。
世界には、日本よりはるかに大きい市場が存在すると。
当然、海外の事業を拡大していかなければならないということです。
今、海外売上高比率はどれぐらいですか?
2割程度です。
だったら、まだいくらでも伸ばせますね。これからですね。
また、もう一つ、我々は、人類を「食」の楽しみや喜びで満たすことを通じて社会や地球に貢献する「EARTH FOOD CREATOR」をグループ理念として掲げており、食に関わるものすべてにチャレンジしていこうということで、今、M&Aを含め、積極的に多角化を進めています。特に、大きく伸ばそうとしているのは、即席麺で培った乾燥化技術が活かせる菓子事業です。
グローバル化と多角化を進め、「日清1.0」から「日清2.0」へ
将来に向けて、これからグローバル化と多角化を加速していかれると。
国内を中心にビジネスを展開し、イノベーティブな新製品をどんどん送り出しながらやってきているのが、今までの日清食品です。我々はこれを「日清1.0」と呼んでいます。しかし、今後、さらなるグローバル化と多角化を進めていく、未知の領域にチャレンジしていくとなると、同じ日清食品ですが、違う日清食品にならないといけません。すなわち「日清2.0」です。
「日清1.0」から「日清2.0」へ。大きなトランスフォーメーションですね。
そして、経営目標として、日清食品ホールディングスでは2016年から始まった中期経営計画で、「2020年の東京オリンピック・イヤーに時価総額1兆円企業になる」ことを掲げています。
すると、それらを実現するための人材開発も相当変革していく必要がありますね。
2014年に上村が日清食品グループの最高人事責任者、チーフヒューマンリソースオフィサーに着任して以来、一緒にいろいろ議論しながら変革を進めてきています。まず取り組んだのは、我々が向かうべき方向性と、戦略に沿ってどういう人材が必要なのかを定義付け、その人材を育てるためにどういうプログラムが必要か、もしくはどういうジョブアサインメントをするべきかといったことを、総合的に系統立てるということでした。
当初の課題感はどういうものでしたか。
弊社には優秀な従業員は多数いるのですが、日清食品グループがグローバル化を加速するにあたって、より多くのグローバル人材を育てていかなければならないということが喫緊の課題でした。当社では従来からある程度のトレーニングプログラムは整備していたのですが、どちらかというと、各種のプログラムが「点」として行われていたため、連続した「線」になるように体系を構築し直しました。
当社のグループ経営において最重要のキーポジションは、国内と海外の事業会社の社長と、ホールディングスの執行役員です。現在は合計37ですが、2020年にはさらに増えていきますから、このキーポジションの人材パイプラインを構築する上で、将来有望な若手を含め、候補者がトータルで200人必要だと考えました。しかし、リストアップできているのは100人で、あと100人足りません。では、足りない100人をどうするか。外部から採用することも選択肢ですが、できるだけ内部で育てたいと考えています。2020年までには100%充足させる計画です。
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