キリンHDが「生理休暇制度」の適用範囲・取得事由を見直し。女性の健康課題への配慮で制度を利用しやすい環境へ

キリンホールディングス株式会社は2023年10月30日、「生理休暇」の適用範囲および取得事由を拡大する制度変更を、同年11月1日より行うと発表した。これに伴い、従業員が制度を利用しやすくなることを目指すという。同グループでは、本制度変更により女性の健康課題解決に貢献するとともに、多様な人材が最大限の能力を発揮できる環境を整備したい考えだ。

多様な人材が活躍できる環境を整えるべく「生理休暇」の適用範囲を拡大、名称も変更

キリングループでは、多様性推進プラン(“KIRIN Diversity,Equity and Inclusion Plan”)を策定し、従業員一人ひとりが多様な視点や価値観を発揮できる環境を整え、多様な人材が持つ可能性を最大限に発揮することによるイノベーションの加速を目指しているという。

今回はその一環として、2023年11月1日より、「生理休暇」に関する適用範囲および取得事由を拡大する制度変更を行うことを決定した。

まず、これまで同グループで導入していた「積立休暇」(失効した年次有給休暇を上限日数まで積み立てて、一定の利用条件のもと取得できる休暇制度)の取得事由に、「生理休暇」を追加する。これにより、女性従業員が年次有給休暇を使用せず体調管理ができる環境を目指す考えだ。

さらに、これまで生理日に限定していた「生理休暇」の適用範囲を、月経前症候群(PMS)など生理に関する体調不良まで拡大する。また、「生理休暇」という直接的な表現から、女性を表す“Female”の頭文字“F”を用いた「エフ休暇」に名称変更するという。

経済産業省によると、月経前症候群(PMS)などの生理に付随する症状による労働損失は、1年間で4,911億円に及ぶという。「生理休暇」は労働基準法第68条に定められる法定休日で、企業の導入義務が定められている制度だが、直接的な表現の制度名称であるなどの理由から取得率が非常に低いという課題がある。そのような背景を受け、同グループでは制度の名称を変更することにより、従業員が利用申請する際に感じる「心理的な障壁」を取り除き、取得率の向上を目指したい考えだ。

同グループでは、2019年に策定した長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027(KV2027)」において、「世界のCSV先進企業」(CSV:Creating Shared Value:社会と共有できる価値の創造)を目指している。その中で、「イノベーションを実現する組織能力」の1つとして「多様な人材と挑戦する風土」を掲げた。本制度変更は、“多様な人材の活躍を阻む障壁を解消する”という「Equity(公平)」の観点から実施しているとのことだ。

同グループは今後も、女性の健康課題への貢献を目指すほか、多様な人材が最大限の能力を発揮できる環境を整備していくという。あわせて、「Diversity」、「Equity」、「Inclusion」の3つの柱からなる「キリングループ多様性推進プラン」に沿い、「多様な人材と挑戦する風土」の実現を加速していきたいとしている。

「生理休暇」の制度を導入しているものの、従業員の取得率は低く形骸化している企業もあるだろう。本事例のように、ただ制度利用を促すだけでなく、「どうすれば使いやすくなるのか」を考慮して内容を変更することで、従業員の取得率を上げられるのではないだろうか。社内で制度の見直しと更新を繰り返すことにより、従業員の働きやすさやパフォーマンスの向上につながっていくだろう。