経営×人事×タレントマネジメント
Vol.1 グループ・グローバル経営を担う次世代リーダーを国内外から選抜・育成
求めるタレントマネジメントシステムの姿を模索中
ストレッチ制度を運用されている中で、タレントマネジメントシステムはすでに導入されているんですか。
導入していかないといけないという段階です。グローバルで本当に優秀だと思われる人財を発掘しようとしても、人財のデータベースを持っていないいとできません。日本人社員と海外ストレッチ人財については人財データベースがありますが、それ以外の外国人社員については、個人情報の問題などもあって、なかなか情報共有が難しく、苦労している最中です。いま、ようやく海外のコア人財の基本情報もほぼ集まりつつあるところです。
システムについては検討中ですか。
本来なら、その人の経験やコアコンピタンスなどのデータが入っていて、こういう事業でこういう人財が必要だから適切な人がいないかというとき、条件を入れればリストが出てくるようなものが一番良いですが、そこまではまだできなくて、まずはExcelベースでつくらざるを得ないというのが現状です。
なるほど。でもExcelベースだといずれは限界が来ますよね。
そうですね。タレントマネジメントシステムをどう活用していくのかをまず明確にして、かつ、情報を出す側にもメリットがあるような形を考えた上で、グローバルで統一的なシステムを導入していこうと考えているところです。
今後はストレッチの早期選抜化と選抜枠の絞り込みを
ストレッチ制度に関して、今後の課題や取り組まれていることはありますか。
いろいろ見直しをしようとしています。これまでは、年齢制限を設けていて、ストレッチⅠなら48歳ぐらいを上限にしていましたが、今年、社長が交代し、一気に若くなったので、その後継者候補の母集団であるストレッチ認定者も若返りをしていかなければいけないということがひとつあります。
社長はおいくつですか。
50代半ばです。
本当にお若いですね。50代ですか。
ですから、早いうちに研修を終えていつでも役員になれる人をつくっていかないと。これまではストレッチⅠで48歳から3年間研修を受けると51歳で、早い人は51歳か52歳で役員になるイメージでしたが、45歳までに研修を受けはじめることを原則として、遅くとも48歳で仕上がって役員になれる状態を目指しています。
ストレッチⅠが3歳若返れば、ストレッチⅡも同様に3歳若返るということですか。
そうです。ほかにも人数枠の絞り込みをしようとしています。当初設けた枠はストレッチⅠが40人、ストレッチⅡが80人でしたが、ストレッチⅠなら30人に絞って、本当に徹底的にその人たちを鍛える方向に持っていこうと。絞り込んだ人財に対して、個々人の現状でどういう能力や経験が不足しているかを明らかにした上で、そこを伸ばすなり経験を与えるなりしていく、要はより一人ひとりに合った育成システムにしていこうと考えています。360度評価も管理職は全員2年に1回実施していますので、そのレポートもきちんと活用していく仕組みをつくろうとしています。
それは人事でもわかるし、現場のマネージャーも部下のMBO面接などでうまく使えるような仕組みにしていかれるということですね。
そうですね。
しかも、それをグローバルで。
やっていかないといけません。
そうなってくると、まさにタレントマネジメントシステムを導入していく必要がありますね。導入していく上で難しくなりそうなことはありますか?
たとえば、これからは社員がグローバルに異動するようになっていくことを考えると、処遇の枠組みをある程度グローバルで共通なものにしておかないと難しいので、そこをつくっていかないといけません。このレベルの人たちはここに異動させるといった、グローバルなポストのレベル分けを進めているところです。
人事自身のグローバル化も課題
人事と経営の関わりということについてはどのようにお考えですか?
経営戦略あっての人事戦略ということで、一体となってやっていかないといけない、それしかないなと思っています。人事のあり方としても、よく言われていることですが、戦略の方に行かなければいけませんね。これまではどちらかというとやっぱり人事管理だったのでしょうが、今後はもっと経営と一体となって、経営に資する人財活用のアドバイスや、事業に対してもアドバイスやコンサルティングのような機能を果たせるようになっていかなければと考えています。
これから御社が海外売上高比率も非日本人従業員比率も6割にしていくんだという中では、人事自身も変わっていかざるを得ないでしょう。人事の方々もストレッチⅠ、Ⅱに選抜されていると思いますが、人事の場合はどういう経験をされているんですか。
これは実は難しいのです。本当は海外で経験を積ませたいのですが、いま、人事部門で海外拠点のポストがほとんどありません。昔は東南アジアの工場などに人事のポストがありましたけど。
ああ、もう現地化されちゃっているから。
ですから、そういうポストをつくっていかないといけないなと。
海外に仕事をつくるとか、20代半ばぐらいでトレーニーでもいいから1回海外に出すとか。そういうことをしないと、グローバルマインドを持った人事というものがなかなか育ち上がってこないかもしれませんよね。
そうなんです。
逆に、現地法人の優秀な人にこちらへ異動してもらうこともできるんじゃないですか?
いま、シンガポール人が人財部に1名在籍しており、グローバル人事系の仕事をしています。グローバルチームの会議は英語でやっています。
なるほど。人事も内なるグローバル化を進めていくことが必要だと思っていますが、御社はすでにやっていらっしゃるんですね。
今日はありがとうございました。
酒井幸雄
帝人株式会社人財部長
1983年に帝人(株)に入社。松山工場で人事労務業務を経験した後、東京本社で人事業務に従事。以降、本社での人事労務業務を中心に経験を積んできたが、2004年から約3年間、オランダにある持株会社で、海外グループ会社の業務監査を経験。帰国後、総務部長を経て、現職(人財部長)に至る。
楠田祐
中央大学大学院戦略経営研究科客員教授
戦略的人材マネジメント研究所 代表
東証一部エレクトロニクス関連企業3社の社員を経験した後にベンチャー企業社長を10年経験。2009年より年間500社の人事部門を5年連続訪問。人事部門の役割と人事の人たちのキャリアについて研究。多数の企業で顧問も担う。主な著書:「破壊と創造の人事」(出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン)「内定力2015〜就活生が知っておきたい企業の『採用基準』」(出版:マイナビ)
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