部下の「成長実感」がある管理職はフィードバックの“タイミング”や“目的”を意識。調査結果から見える効果的な手法とは

株式会社ラーニングエージェンシーは2023年10月13日、ラーニングイノベーション総合研究所とともに「管理職意識調査」を実施し、第2弾として「部下へのフィードバック手法」に焦点を当てた分析結果を発表した。調査期間は2023年6月19日~8月31日で、企業の管理職484名より回答を得ている。本調査により、部下の成長を感じている管理職が実践しているフィードバックの頻度や伝達方法、心がけていることなどが明らかとなった。

4割以上の管理職が「即時フィードバック」で部下の成長を実感

「人材定着」や「人材育成」といったマネジメントの取り組みは、年々その難易度が増しており、多くの管理職の悩みともいえる。部下に「成長してほしい」との願いを持ってフィードバックを行う際に、管理職はどのような工夫をしているのだろうか。

はじめにラーニングエージェンシーが、「フィードバック後の部下の行動について、悩んでいること」を尋ねた。すると、上位には「自分の課題を認識してはいるが、すぐに行動につながらない」、「質問や反論はないが、自分の課題を認識してもらえないことが多い」、「フィードバックを反映した行動はできているが、成果につながらない」などの回答があったという。そこで同社は、フィードバックの違いにより、管理職の感じる「部下の成長度合い」に差があるのか、関係性を調査した。

まず、「部下にどれくらいの頻度でフィードバックをしているか」を尋ねると、部下が「非常に成長している」と回答した管理職のうち、44.4%が「即時にフィードバックをしている」ことがわかった。一方で、部下が「成長していない」と感じている管理職における同割合は14.3%と、「非常に成長している」と感じている管理職より30.1ポイントも低くなっていた。部下の成長には「即時にフィードバック」することが有効だと推察できる。

また、フィードバックの頻度を「特に決めていない」とした管理職の回答に着目すると、部下が「成長していない」(28.6%)、「わからない」(34.5%)とする割合が高く、「非常に成長している」(22.2%)、「成長している」(21.9%)との回答率よりも高くなっている。
部下の「成長実感」がある管理職はフィードバックの“タイミング”や“目的”を意識。調査結果から見える効果的な手法とは

部下の成長実感がない管理職ほど「ネガティブフィードバックの場所」を気にする傾向

次に同社は、「フィードバックをする際の場所・場面を気にかけているか」を尋ね、同じように部下の成長度合い別に比較した。すると、いずれの項目でも「常に最適な場所を選ぶようにしている」との回答が他よりも高い傾向になった。

また、特徴的な傾向として、「部下が成長していない」と感じる管理職ほど、「ネガティブフィードバックの環境(場所・場面)」を気に掛けている実情がうかがえた。
部下の「成長実感」がある管理職はフィードバックの“タイミング”や“目的”を意識。調査結果から見える効果的な手法とは

部下の成長を実感する管理職ほど「チャット/メール」でのコミュニケーションも併用

続いて、同社が「フィードバックの伝達方法」を尋ねると、「対面で、口頭伝達している」が8割を超え、最も多かったという。

そこで、「フィードバックの伝達方法」を部下の成長度合い別で比較したところ、「非常に成長している」とした管理職の94.4%が「対面で、口頭伝達している」ことがわかった。部下の成長を実感できている管理職ほど、この割合は高い傾向にあるようだ。

また、「非常に成長している」とした管理職の61.1%が、「チャットやメールなどで文書伝達している」と回答しており、この割合は「成長していない」とした管理職よりも46.8ポイント高くなった。これを受け同社は、「『非常に成長している』と実感する管理職は、前設問で『即時フィードバック』する割合が高かったことからも、チャットやメールを使用して即時にフィードバックすることを意識している傾向があるのではないか」との見解を示している。
部下の「成長実感」がある管理職はフィードバックの“タイミング”や“目的”を意識。調査結果から見える効果的な手法とは

成長実感がある管理職の6割以上が意識していることは?

次に同社は、「フィードバックをするときに気を付けていること」を尋ね、部下の成長度合い別に集計した。すると、部下が「非常に成長している」と感じている管理職は、「部下の意見を傾聴すること」、「部下の納得感を醸成すること」がいずれも61.1%で、6割以上の管理職が意識していることがわかった。

対して、「成長していない」とした管理職では、「部下の意見を傾聴すること」が14.3%、「部下の納得感を醸成すること」が0%と、大きく差が見られる結果となった。
部下の「成長実感」がある管理職はフィードバックの“タイミング”や“目的”を意識。調査結果から見える効果的な手法とは

“ポジティブの割合が多い”フィードバックほど部下の成長に寄与か

続いて同社は、「フィードバック内容は、ポジティブ/ネガティブのどちらの割合が多いか」を尋ね、部下の成長度合い別に比較した。その結果、部下が「非常に成長している」とした管理職は「ポジティブが多く、ネガティブが少ない」(55.6%)が最も多かった。

さらに、部下の成長について「わからない」とした管理職では、フィードバックのポジティブ/ネガティブの割合を「特に決めていない」とする人が44.8%と、最も高い結果になっている。
部下の「成長実感」がある管理職はフィードバックの“タイミング”や“目的”を意識。調査結果から見える効果的な手法とは

部下の成長を促す管理職は「意図」や「目的」とともに伝達か

最後に同社は、「フィードバックで心がけていること」を質問し、部下の成長度合い別に比較した。すると、「事実や結果に基づく具体的な内容」がいずれの項目でも高く、部下の成長実感に関わらず高いことが明らかとなった。

また、部下が「非常に成長している」と実感する管理職は、最多の「事実や結果に基づく具体的な内容」(72.2%)に続き、「フィードバックの意図や理由」(66.7%)、「目的・目標や求める人材像(55.6%)、「日頃の感謝や努力へのねぎらい」(50%)の伝達が多いことがわかった。
部下の「成長実感」がある管理職はフィードバックの“タイミング”や“目的”を意識。調査結果から見える効果的な手法とは
本調査結果から、部下の成長を実感している管理職ほど「意見の傾聴」や「納得感の醸成」を通じて部下に寄り添ったフィードバックを意識していることも明らかとなった。今後、フィードバックを行う管理職は、「タイミング」や「伝達方法」を意識するだけでなく、部下に求める人材像や会社の目的・目標などを交えて伝えることで、より効果的なフィードバックができるのではないだろうか。