【5,711社に調査】採用難と人件費高騰が企業経営を直撃。6割の企業で「人件費の上昇」が経営課題に

東京商工リサーチは2025年5月、全国5,711社を対象に実施した「経営環境、審査業務に関するアンケート調査」の結果を発表した。調査結果においては、企業が直面する最大の経営課題が「人件費の上昇」(61.7%)であるほか、「人材の採用難」(55.6%)も上位に挙がるなど、雇用関連の負担が経営を強く圧迫している実態が明らかになった。

人件費高騰・採用難が経営の“重し”に

調査において、はじめに経営上の課題(重し)となっている項目を尋ねたところ、「人件費の上昇」が最も多く、全体の6割超が回答した。以下は「エネルギー価格の上昇」(56.8%)、「人材の採用難」(55.6%)が続き、特に雇用関連の課題が経営層の大きな懸念となっている様子がうかがえた。

同社はこの結果について、企業規模(資本金の額)別で比較している。すると、大企業(資本金1億円以上)と中小企業(同1億円未満など)では、人材課題の傾向がやや異なっており、大企業では「人材の採用難」(68.6%)が1位だったのに対し、中小企業では「人件費の上昇」(61.55%)が最多となった。この傾向から、企業規模によって労働分配の余力や採用環境に差が生じていることが見て取れる。
経営上の重し・課題

倒産増加への懸念と与信管理の現状

2024年度の企業倒産件数は11年ぶりに1万件を超えたといい、今後も倒産リスクや取引先の休廃業・解散が増えていくことを懸念する声も多い。そこで同社は、企業が健全な取引や経営を続けるため仕組みである「与信管理体制」について、「今後どのようにする方針か」を尋ねた。その結果、最も多かったのは「特に変化させる予定はない」との回答で、80.3%と依然として現状維持が大勢を占めている。

一方で、「倒産件数の増加」を与信管理上の最大の懸念とする企業は60.2%、「休廃業・解散の増加」も48.1%に達し、実務現場におけるリスク意識の高まりがうかがえる。
与信管理体制の方針
本調査では、企業の人事・経営層にとって「人件費の上昇」と「人材の採用難」という二大課題が深刻なものになっている現状が明らかとなった。環境変化に対応していくためにも、企業現場では人材マネジメントの見直しが急務となっている。加えて、倒産リスクの増加や与信管理体制の現状維持傾向は、今後の経営の安定性に新たな課題を投げかけているといえる。持続的な企業成長を目指す上で、賃金上昇への対応策や採用力強化、さらには与信管理体制の再点検を進めておく必要があるだろう。

出典:https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201283_1527.html