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人事部門に求められる「情報収集力」

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2014年07月18日

人事部門の仕事には大きく、

1.制度や規則等の設計・作成業務
2.採用、賃金、能力開発、福利厚生、安全衛生等、社員へのサービス業務

の2つがある。これらを適切に遂行していくうえで重要となるのは、

① 何が問題となっているのかを見出す問題発見力
② そこから適切な課題を設定する課題設定力
③ 具体的な制度を策定する創造力や計画力
④ 制度や事務を適切に運用・遂行していく事務管理力

といった能力である。もちろん、前提として人事労務に関する専門知識も必須である。

そしてこれらは、当然、人事部門における地位によって、求められるレベルが異なる。
たとえば、部長クラスであれば、①>②>③>④であろうし、課長クラスであれば②=③>④>①、担当者であれば④>③>②>①といったものになるだろう。

いずれにしろ、求められるのは物事を理詰めできちんと進めていくタイプで、「まっ、こんなのでいっか」とアバウト・ナアナアに済ませていくというタイプではない。
「能吏」とは公務員に対して使う言葉だが、企業の人事部員にもぴったりと当てはまる。

ところで、人事部門に求められる能力には、もう1つ重要なものがある。これは上記①に関連するのだが、一言でいえば「情報収集力」である。

つまり、問題発見のためには、その前提として現状に関する情報が必要なわけで、社員が仕事環境に関してどのような思いを抱いているかを知ることが、これからの人事施策を立案するうえでとても重要になるということだ。

必要な情報の中でも、特に大切なのは社員のナマの声である。
もちろん企業もそのことはわかっているので、人事のマネジャーなどが全社員と個別の面談をしたりする。

それはそれで意義はあるのだが、ここでいうナマの情報とは、そのような公的な場で得られる「意見」ではなく、仕事中についついこぼしてしまうような愚痴である。
さらに言えば、もっともっとドロドロした社員の本音である。

評価、給与、昇進・昇格、福利厚生などの人事制度面に対する不満をはじめ、ムダな仕事の多さ、無意味な会議、無能な上司、何を考えているかわからない部下、面倒な人間関係、絶望的な長時間労働など、挙げればきりがないが、仕事や組織に関する不満は山のようにあるはずだ。

公式的な面談では、これら不満の氷山の一角しかつかめない。
人事マネジャーがソフトに「気になることがあれば、何でもいいからおっしゃってください」と言っても、社員はどうしても構えてしまって、頭の中で整理をした「格好のいい不満」しか口にしない。
だからといって、社内にスパイのような存在を放って、密かに情報を集めるというのも非現実的だ。

そこで必要となるのが、社員の心中にうっ積する憤懣を、さりげなくつかむことができる能力をもった人材である。
いや、能力というよりは資質に近いかもしれない。そのような情報というのは、努力して集めるよりは、自然と集まってくるものだからだ。

簡単に言えば、愚痴をこぼしやすい人、文句を言いやすい人で、どこの企業にも必ずいると思う。
育児休業のことで電話があったのだけれど、「そういえば、この前箱根の保養所に行ったけど、スタッフの愛想が悪かったよ」など、ふと思いついたようなことをついでに言われてしまう人である。
こういう、取るに足らない情報の蓄積こそが大切なのだ。

ただ、得てしてそういう人は、能吏とは正反対のタイプなので人事部門には少ない。というよりは、人事に向かない人材として、遠ざけられているケースが多いのではないかと思う。

最近は、人事は社員へのサービス部門という認識が高まってきている。良いサービスを提供するために、顧客の気持ちを理解することが重要となるのは言うまでもない。
その意味で、顧客(=社員)の思いに直接数多く触れることのできる、このような人材は、今後の人事部門に不可欠といえる。

ある程度の企業規模で人事部員が何人もいるのなら、こういうタイプが1人いてもいいだろう。
すでにいるのなら(ひょっとして使えないヤツと持て余していても)、貴重な情報を集めてくれるという視点で見れば大きな戦力となるはずである。

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