人事のプロから「HRの考え」を学ぶ

第4回

人事は「経営戦略と
人材戦略の連動」を
どう進めていくべきか

——三井化学安藤氏から学ぶ
「戦略的タレントマネジメント」

Introduction

経済産業省により2020年9月に公表された「人材版伊藤レポート」、そして2022年5月にアップデートされた「人材版伊藤レポート2.0」を受け、人的資本経営への注目度はますます高まっている状況だ。そのような中、三井化学株式会社は、いち早く戦略的タレントマネジメントに着手し、人材版伊藤レポートで記されている“3つの視点”「経営戦略と連動した人材戦略の策定」、「As is-To beギャップの定量把握」「企業文化への定着」にも取り組んでいるという。今回、同社の人材戦略をリードする専務執行役員 CHRO 安藤 嘉規氏をお招きし、株式会社SmartHR プロダクトマーケティングマネージャー 埜村 勇斗氏が、戦略的タレントマネジメントの背景や、経営戦略と人材戦略の連動のポイントを中心にお話を伺った。

経営戦略と連動したグループグローバルでの人材戦略

埜村氏:本日は、三井化学様が取り組んでいらっしゃる人事施策を中心にお話をお伺いしたいと考えています。まずは、貴社が注力されている「戦略的タレントマネジメント」推進の背景について教えていただけますでしょうか。

安藤氏:「戦略的タレントマネジメント」をスタートしたのは、2016年度からです。当社はリーマンショックからの立ち上がりがなかなかうまくいかず、2011、12年度は最終利益が赤字になりました。その厳しい状況から立ち直る過程で、2014年度の中期経営計画で事業ポートフォリオを大幅に変換しました。それに伴い海外企業の買収を進めるなど、大きな経営戦略の転換に舵を切ったのです。その戦略を実現していくにはグローバルレベルで経営者の育成・確保が必要となるため、2016年度からグローバルベースでの「キータレントマネジメント」を始動しました。2017年度には全社経営レベルで人材戦略の議論を始め、2019年度からはさらに人材戦略を完全に全社基本戦略に組み込んで毎年、経営レベルで議論するようになりました。

埜村氏:まさに経営戦略と連動した人材戦略だと思いますが、具体的にはどのように人材戦略を変化させていったのでしょうか。

安藤氏:大きく変わったのは「グループグローバル」という視点です。三井化学グループは連結ベースで約2万人、本体には7500人ほどの社員が所属しています。全体のうち1万人ほどが海外勤務ですから、グループグローバルでの人材施策は非常に重要です。また、昨年度に策定した長期経営計画「VISION2030」においては、今年度実施する戦略ローリングの過程で、人事部門として各本部の戦略議論に入りこみ、各事業の人材ニーズについて可視化しようとしているところです。現段階では、企画系やM&Aを推進できる人材が不足していることは明確ですので、それをどのように可視化してAs is-To beギャップを埋めていくか。それが、足下の課題ですね。

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この後、下記のトピックで、インタビューが続きます。

  • 人的資本の情報開示にも積極的に取り組み、人材の確保につなげる
  • エンゲージメントサーベイで見えてきた「権限委譲・自律性」の高さ
  • 「戦略的タレントマネジメント」がなぜ文化として根付くのか
  • 「経営戦略と人材戦略」を連動させていくには
  • 人事は自組織外の人や情報にもっと目を向けるべき

Profile

プロフィール

安藤嘉規氏

安藤 嘉規 氏

三井化学株式会社
専務執行役員 CHRO

1986年入社。システム部、労働組合執行部を経て、1993年より三井化学の根幹を支える主要事業の原料調達に携わり、海外プロジェクトに参画。その後、5年間、市原工場にて人事ライン職を経験。2005年にシンガポールへ赴任し、現地プラント向け主原料調達に加え、新規事業の立ち上げを起案。帰国後、事業企画、秘書室(社長秘書)を経て、2013年に人事部へ異動。2015年より人事部長、2021年より専務執行役員。2022年4月から現職。

埜村勇斗氏

埜村 勇斗 氏

株式会社SmartHR
プロダクトマーケティングマネージャー

大学院卒業後、デロイトトーマツグループやHR系のコンサルティング会社にて組織人事のコンサルティングに従事、その後HR系スタートアップの経営に参画。2020年にSmartHRに入社し、主に人事データや人材の活用に関する機能の企画や仕組みづくりを行う。

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