リーダー人材の採用と育成|リーダー人材の育成は新卒採用から始まる採用の見極めポイントと事例紹介

これからの人事に求められるのは、「人」を育て「人」で企業を成長させること

採用・育成をリデザインする

これまで、従来の「マス」型ではリーダー候補人材の採用が難しいという現状を見てきた。新卒採用は就活ルールの廃止や通年採用の拡大などの見通しにより、「マス」から「個」へと流れが変化している。さらに、リーダー候補人材についてはそれだけでなく、個別にアプローチしないと出会いの機会すらないのが実情である。

人材育成についても、現状の施策は既存事業のハイパフォーマーを育てることに照準を合わせており、新リーダーを輩出する体制にはなっていない。ファストトラックを導入するなど、ここにも大きな変革が求められる。

理想としては、これまで別々に行われてきた採用と育成を一体化させ、さらにはリーダー候補人材の発掘や出会いから採用、育成、活躍までを一気通貫で手がけることだ。発掘・出会いの段階では、必ずしも自社の採用に結びつかなくてもいいという考えも必要になる。採用に至った場合は、「社会の若者」を一人前に育てあげるつもりで、従来は現場に任せきりだったキャリア初期から、リーダー候補として育成するのである。しかし、そうするからには、自社にマッチするリーダー人材かどうか、発掘や出会いの段階で十分に検討する必要がある。いくら社会の若者を育てるといっても、手をかけた人材が社内に全くとどまらないようではいけない。じっくりと見極め、スピーディーに育てることが肝心だ。

出会いを創出し、リーダーの育成に結びつける手段としては、「没頭層」との多くの出会いを実現させるTEXを実施するのも有効だ。ただし、その前提として、求める人材についての定義は必須となる。就活慣れした「意識高い層」を安易に優秀とする姿勢を改め、自社にとっての「優秀さ」を再考する時が来ているといえる。

また、HRテクノロジーの活用も重要なカギとなる。採用や育成の方法を刷新していく過程で、テクノロジーを使ったほうが適切な場面は少なからず出てくるはずだ。グローバルに見ると、人事のデータドリブンは当たり前になってきている。テクノロジーの活用は、もはや避けては通れないし、HR領域でも業務の効率化や質的向上に活用したという事例が次々と報告されている。一説には、テクノロジーを使いこなせるようになるには3年かかるというから、少しでも早く使い始めてみることが重要である。

人事が組織と会社を変える

「企業は人」とは、これまでも言われつづけてきた言葉だ。イノベーションを起こす源流が人にあると考えるならば、新規事業の創出やイノベーションが求められている今、人事の持つ影響力はこれまでにないほどに大きくなっているといえる。

新しさを受け入れず、多様性に乏しい組織は脆いといわれる。変化の激しいこの時代に、これまでのあり方に固執することは、非常に危うい行為だろう。リーダー候補人材のみならず、時流を見極める力のある社員にとっては、自社が古いやり方を続けているという事実そのものがエンゲージメント面でのリスクともなりえる。

単純な終身雇用が過去のものとなりつつある中、採用や育成をはじめ、エンゲージメントやダイバーシティ、働き方改革など、すでに人事が向き合うべき課題は数多くある。そして、今後も雇用のあり方はさらに大きく変わっていくはずだ。将来にわたる持続的な成長と発展を遂げていくためには、目の前の問題に対応するだけでなく、本コラムで述べてきたような新たな視点をもち、「人」を育てるしくみをより確かなものにしていくことが必要不可欠である。

言うのは簡単だが、その道のりが平坦ではないことは容易に想像がつく。経営への強い働きかけ、今働く人の意識改革など、これまでにないチャレンジを求められるかもしれない。しかしそれは、人事が組織の中で存在感を発揮し、より大きな仕事ができるチャンスにつながる。未来のリーダー輩出や新事業の創出、イノベーションの創造は、人事にかかっていると言っても過言ではないのだ。

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