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「採用学プロジェクトとは?」~その実践への応用を聞く~

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2014年04月24日

横浜国立大学大学院 准教授・服部泰宏氏
採用学プロジェクト運営事務局 株式会社ソシアルワードシェアリング 代表取締役・作馬誠大氏

企業も学生もお互いに情報処理ができていない現状

――まずは、現状の新卒採用市場についてですが、どのような課題があるとお考えでしょうか?

 

服部 採用市場の課題は4つほどあると考えています。1つ目は採用の段階で企業と学生がお互いに何を期待するのか、求めているのかという部分が非常に曖昧になってしまっていることです。これが、後々のボタンの掛け違いに繋がっています。次に、学生にどんな能力やスペックを期待するのかということを、採用する側の企業も分かっていないことです。企業にとって必要な能力が把握できていないと、何回も面接を繰り返してパーソナリティーを見極めようとします。そうすると、人間的な部分で評価せざるを得ませんから、長い時間、面接をして、必要以上に採用を過熱化させることになる。これが3つ目の課題。そして、最後に学生は面接などで等身大の自分よりも良く見せたり、いい回答をしようと対策をしてくるので、企業との化かし合いになり、採用がゲーム化してくることが挙げられるでしょう。この4つ要素が複合しているのが、採用市場における課題だと考えています。

 

――企業側も必要な人材を曖昧ではなく、特定した打ち出し方をしていれば、効率的な選考ができるということですね。作馬さんは現在の採用の課題について、どのように感じていますか?

 

作馬 学生からの話としてよく聞かれるのは、企業のホームページを見たり、合同説明会に出席しても、何をやっている会社なのか、どういう職場なのか分からないということです。そのため、とりあえずナビ媒体に登録してメールが来るのを待つ。それに対してリアクションをするのがポピュラーな手法ですが、何社にエントリーしたらいいのかも分からない。これは、学生が自分で何をやりたいのか落とし込めていないのが問題だと思います。一方で企業からすると、ナビ媒体に頼らざるを得ないような状況ですので、他の手段での情報発信の仕方を模索しているようです。

 

――ナビ媒体に頼るあまり、企業も学生もどのように動いていいのか分からなくて困っているようですね。

 

服部 企業が打ち出している情報が分かりにくいことも問題ですが、学生もその会社でどんな働き方がなされているのか、条件面はどうなっているのかといった具体的なこととは別の次元、たとえばイメージであったり、フィーリングであったりといったもので企業を評価している、というのが実態だと思います。

 

ロジックとエビデンスに基づいた採用を考える

――ナビ媒体は便利なものですが、いわゆる広告の一つですから、企業のいいところしか出ていません。株式を公開しているような企業ならば、ホームページでIR情報まで見れば、悪い部分も見えてきますが、学生はなかなかそこまでは見ないですからね。そうした課題があったからでしょうが、服部先生は“採用学”という日本では馴染みのない新しい分野を立ち上げました。この採用学を始めるきっかけについてお聞かせください。

 

服部 私は元々、人と組織がどのように関わっていくのかということに関心がありました。大学院時代からの研究を通して、処遇や配置の問題で社員と企業との間にズレがあると感じていたのです。それが、横浜国立大学でさらに研究を進めた結果、どうやらボタンの掛け違いはスタート地点から起きているのではないかと思いました。しかし、企業も学生もお互いにそのことに気づくのが遅く、2年、3年して社員が辞める頃になって初めて気づく。ここに不幸があるわけです。それならば、時間軸を入口の採用という部分にフォーカスした方がいい。そこで、新たに採用学という分野を立ち上げました。

 

――実際に、外国で採用学はどれほど普及しているのでしょうか?

 

服部 採用学という言葉は私たちのプロジェクトのフレーズに過ぎません。外国で言うと、“リクルートメントリサーチ(Recruitment Research)”になります。リクルートメントというのは「募集」という意味で使われることもありますが、本来は「採用」という意味です。アメリカの経営学会や産業・組織心理学会では1970年代から研究が進められていて、一つのセッションが立つほど非常に大きなトレンドになってきています。しかし、なかなか日本では普及してこなかったのが現状です。

 

――だからこそ、採用が曖昧なままになっているということですね。

 

服部 そうですね。採用学で重視していることは、エビデンス(根拠)とロジック(論理)に基づく採用活動を行っていく必要があるということです。それは、採用学の根本的な哲学と言ってもいいと思います。今までの採用活動は、感覚や経験が重視されてきました。別に、それを全て否定するつもりはありません。ただ、それだけではなく、実際にデータを収集したり、そのデータに基づいて採用活動がうまくいっているのかどうかを分析することも必要です。その際に、良質なエビデンスとロジックがあれば、科学的な根拠から成果を導き出していき、それをツールとして採用現場に提供していくことができます。

 

採用学における“募集”、“選抜”、“定着”の3フェーズ

――服部先生が始めようとされている採用学では、採用を3つの時期に区切っているとのことですが?

 

服部 採用学では企業と学生が効率よく出逢い、その中でお互いが適正に評価をし合って、いい関係に入っていくことを目指しています。そこで、採用学を3つのフェーズに分けました。まずは、学生が企業と出合うフェーズで、私は“募集”と呼んでいます。募集というのはお互いが現状を開示し合うことですね。企業としては「当社はとても魅力的な会社ですよ」と伝えるのか、あるいは「当社は魅力的な部分もありますが、課題も抱えています」と伝えるのかは自由です。学生の自己アピールの仕方についても同じことが言えます。いわゆる情報戦のような世界がここにはあるわけですが、その時点でミスマッチを減らすのが募集の研究です。私たちは企業がどんな情報を出しているのか、それに対してどんな学生が興味を示しているのかを調査をしています。

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