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「調整給」の解消

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2019年05月03日

企業の給与規程や支給明細を見ると、よくあるのが「調整給」あるいは「調整手当」(以下、調整給で統一)である。

調整給は、「各種の原因によって生じる労働者の賃金の不均衡を是正」(日本経団連出版「人事・労務用語辞典」)するもので、金額としては、大体数千円からせいぜい数万円程度と比較的少額が多い。

調整給の内容は、大きく次の3つに分かれる。

1.給与制度の改定に伴って発生したもの
新たに設定した号俸に移行した際に、端数となったものや、号俸からはみ出た分を調整給として支給するようなケース。

2.企業統合により発生したもの
企業合併などで、吸収された方の給与水準が異なる場合に、差額を調整給として支給するようなケース。

3.給与規程外の何らかの手当を支給するもの
たとえば、単身赴任者が帰省するための交通費を支給する際に、給与規程にルールがないため、調整給として支給するようなケース。

1と2は、本来は基本給に含めてしまえばよいのだが、そうすると、退職金や賞与の算定基礎が増額してしまい、人件費の高騰につながることから、便宜的・一時的に調整給の形をとったというケースが多い。3は、人事制度運用上で何らか生じた不都合を、とりあえず調整給に押し込んで補償するという発想である。1は昇給に伴って解消していくが、2・3は、一時的なはずなのに、ズルズルと支給を続けてしまうのが通例である。

調整給の問題点は大きく次の2つである。

1.給与として、支給内容が不透明となる
給与は社員の働きの対価として支払うもので、その金額が何に対するものであるかを明確化することが大切である。「調整給」では、その点がブラックボックスで不透明となる。

2.安易な調整給の支給につながる
調整給という便利なものがあると、給与規程外のことでも、調整給で支給すればよいという考えになりがちである。極端な例だが、降格により基本給が下がった社員から文句が出たので、補填のために調整給を支給するという企業があった。

このような問題を抱える調整給は、できるなら無くしたいものである。対象者が少なく、近いうちに定年になるとかであれば放置しても構わないが、そうでなければ制度的に解消したい。なくすタイミングとしてもっともよいのは、給与制度を変えたときだが、そうでなくても、「人事部門の英断」でスパッと廃止するのが望ましい。

解消の手法としては、次の2つが基本となる。

①他の名目が明確な手当とする
②基本給に繰り入れる

まず①は、上記の帰省費用などで、これは給与規程に「帰省手当」等で明文化すればよいので比較的容易だ。

問題は②で、1つは、前述したように人件費の高騰につながることである。ただ、この点は、調整給廃止のための痛みと割り切るしかない。これを機会に退職金の仕組みを見直すのもよいだろう。

もう1つやっかいなのは、基本給に繰り入れたときに該当する号俸がないケースや、号俸の上限近くに貼り付けられて今後の昇給が見込めなくなってしまうケースである。調整給が高額で、現号俸が高い社員に発生する可能性がある。この場合は、上位の賃金テーブルに移行させるか、それが困難なら、調整給を続けるのも止むを得ない。数年かけて償却していくという方法もあるが、調整給解消のためだけに給与を減額するのは合理性に欠け、社員の納得は得られないだろう。完全に解消するのに越したことはないが、社員に説明できないやり方で無理になくすのは避けたい。可能な限りなくすというスタンスで、柔軟な対応も必要である。

調整給の存在は、のどに刺さった小骨のようで、気に障る人事担当者の方も多いのではないだろうか。上記を参考に「英断」を期待したい。

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