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浮いた残業代を賞与に

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2019年03月01日

時間外労働削減に取り組む際、浮いた残業代をどうするかというのは大きな課題となる。何もしなければ、社員は収入が減ることになるので、削減への意欲がそがれてしまうからだ。

企業としては、社員に何らかのメリットがあることを、できるだけわかりやすい形で示したい。対応としては、基本給や手当の増額、福利厚生の充実、人材開発への投資などがあるが、その1つが賞与原資にするという方法である。

昨年6月に、電子部品大手のアルプス電気が、浮いた残業代を賞与で還元すると発表した。同社のプレスリリースによると、

・働き方改革による成果を社員へ還元する賃金制度「所定外労働時間削減に伴う賞与還元」を2017年度より試行導入
・2017年9月16日~2018年3月15日までの全社月1人あたり平均所定外労働時間が2016年同期間と比較し2.4時間削減されたため、今夏季賞与へ0.04ヶ月分上乗せする形で支給

とのことだ。

0.04ヶ月といえば、基本給が30万円とすると1.2万円ということになる。賞与全体から見れば大した金額ではないだろうが、「残業が減って得をするのは、社員の皆さんですよ」というメッセージは伝わるはずだ。残業を削減する際のインセンティブになるだろう。

ところで、このような施策を導入するとき、よく出てくるのは、「残業減らしに貢献してない人にも支給されるのか?」「それだと不公平ではないか?」という意見だ。アルプス電気でもあったのではないかと推測する。

確かに、必死の努力をして残業時間削減に貢献する社員がいる一方で、何ら努力をせず逆に残業時間を増やす社員もいるだろう。前者の立場から、後者のようなフリーライダーに不平不満が出るのは容易に想像できる。

設計時の選択肢は大きく次の2つ。メリットを受けられる対象者を実際に残業削減できた社員に限るか、それとも残業削減できなかった社員も含め全員を対象とするかである。

前者のやり方は、先のフリーライダーを排除するという意味で一定の説得力はある。原資は浮いた残業代なのだから、残業に貢献したものだけで分配するというのも理屈は通る。

ただ、留意しなければならないのは、残業時間の実態は部署・社員によってさまざまということだ。

たとえば、生産部門などは生産量によって労働時間が左右されるし、事務部門に比べて元々効率化が進んでおり、さらなる時短は困難という側面もある。また、事務部門であっても、従来から効率化に努力している部署では時短の余地がそれほどないかもしれない。逆に、これまで残業が野放しであったがゆえ、少しの工夫で大幅な時短が可能となるケースもあるはずだ。さらに、部署の特性云々ではなく、部門長や上司の時短意識が低ければ社員の努力は実り難いだろう。

そのように考えると、本当に不公平となるのは、時短が可能な環境にあるにもかかわらず、その努力を怠っているようなケースで、対象者はごく一部に限られると思う。

では、そのような社員の特定ができるかといえばこれが難しい。誰か(たとえば部門長)に定性的な判断を委ねざるを得ないが、これにより数万円とは言え支給額が変わってくるのだからいい加減な決定もできない。多忙な管理者の負担を考えれば、実施は無理というのが現実だろう。

結論としては、対象者は全員とする方がよいということである。もちろん、フリーライダーを放置するのではなく、個々に指導をしたり、人事評価で調整をしたりするのが適切な対応となるだろう。

万一、フリーライダーが多発するような組織であれば、このような制度自体が向かない、さらに言えば、社員がまともに働く意欲を失っており、制度云々よりも会社の存続自体が危ぶまれていると考えた方がよさそうである。

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