人事を変える集合知コミュニティ HRアゴラ

自社講師による研修のすすめ

0

2018年03月02日

先般、ある企業から、評価者研修の実施にあたって人事部門の社員が講師を務めるので、その養成をしてほしいとの依頼があった。筆者は普段から、社員(特に若手・中堅)の人材育成には、研修講師をするのが非常に有効と考えていたので、快く引き受けた次第である。

自社で研修を行うメリットとして、まず、一番に考えられるのは、講師体験を通じて本人の能力開発ができることである。多数の人に何かをレクチャーするというのは、大変な労力を伴うものだ。「しなければならないこと」を挙げてみると、

・専門的な知識・技術など、話す内容を準備しなければならない。
・それを体系的に整理するとともに、ストーリーや展開の仕方も構想しなければならない。
・パワーポイント等でテキストや資料を作成しなければならない。
・理解してもらうために、話すスキルも高めなければならない。
・思わぬ質問を受けたり、想定外のトラブルがあったりして、判断力・対応力も発揮しなければならない。

と、ビジネスパーソンに必要な専門知識、構想力、PCスキル、コミュニケーション力、判断力などが必要とされ、講師を務めることで総合的な能力が磨かれる。 知識について言えば、実務で経験的にはわかっている知識を体系的に整理し、さらに理解を深めるまたとないチャンスとなる。これだけでも、大きな財産である。

他にも次のメリットがある。

・自社に即した話ができる。たとえば、評価者研修であれば、特定部門や特定上司に評価の甘辛があるなどの実態をよく知っているはずなので、それを踏まえた話ができる。
・研修コストを低くできる。特に、受講者数や開催場所の関係で複数回の実施が必要なものや、毎年継続的な実施が予定されるものはコストのメリットが大きくなる。

一方、デメリットとなるのは次のものである。

① 品質が低くなる恐れがある。
② 講師の準備負担が大変となる。
③ 他社の例や外部からみた客観的な見解などが弱くなる。
④ 受講者の緊張感が薄れ、真剣さが不足する可能性がある。

このうち、特に懸念されるのは①と②だろうが、この点は、冒頭に述べたように、最初は外部講師の支援を受けるなどの対応も考えられる。また、1人にすべて任せるのではなく、チームで役割分担すれば過度の負荷は避けられるし、品質向上やメンバー全員の能力アップも期待できる。

もちろん、専門性が非常に高いものや、自社の業務と直接関連のないものなど、自社講師が難しい研修もあるだろうが、「研修⇒外部講師」と条件反射的に対応するのではなく、自社の社員に任せられないか、一度検討してみる価値はあると思う。

この記事はあなたの人事キャリア・業務において役に立ちましたか?

参考になった場合はクリックをお願いします。