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メンタルヘルス不調社員の職場復帰

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2016年01月06日

労働政策研究・研修機構(JIL)が行った「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査(2011年6月)」で、メンタルヘルス不調を抱えた労働者のその後の状況について、ここ3年間でもっとも多いパターンを尋ねたところ、次のような回答となった。

① 休職を経て復職している(通院治療等を終えた完全復職)  37.2%
② 休職を経て退職した                   14.8%
③ 休職せずに通院治療等をしながら働き続けている     14.1%
④ 休職せずに退職した                   9.8%
⑤ 休職を経て復職後、退職した               9.5%
⑥ 長期の休職または休職、復職を繰り返している       8.2%

つまり、完全復職のケースが多い企業が4割弱ある一方で、「結果的に退職した」ケースがもっとも多い企業(「休職を経て退職した」「休職せずに退職した」「休職を経て復職後、退職した」の合計)も34.1%で、ほぼ拮抗する形となっているのだ。

これは、心の健康問題を抱え休業した社員の職場復帰は容易ではなく、さまざまな課題があることを示唆している。

その1つが、どの部署に復帰させるかという問題である。
原則は、元の職場に復帰させることなのだが、当該部署の仕事内容や人間関係がストレス要因となっている場合にはそうもいかない。社員も元の職場への復帰は望まないだろう。
では、他の部署へ配置転換できるかといえば、本人の仕事への適性や現場の受け入れ態勢から、適当な部署があるとは限らない。

このようなケースで、社員が職場復帰にあたって配置転換を希望してきた場合に、企業はその要望に応えなければならないのだろうか。それとも、人事権をタテに社員の要望を断ることができるのだろうか。

これについては、

① 配置転換は企業の人事権であるが、メンタル不調であることを知りながら配置転換を拒み、病状が悪化すれば、安全配慮義務に違反し、人事権の濫用と解されるおそれがあること
② 配置転換をしなければならない法律上の義務はないが、私傷病での職場復帰の場合の判例をみると、職種を限定していない労働契約では、配置可能な他の業務に就かせる配慮をすべきという考え方が主流であること
③ 安衛法第66条の5(健康診断実施後の措置)において、医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業の場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講じなければならないことを定めていること
④ 昨年12月に義務化されたストレスチェック制度においても、医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置義務を課していること

などを勘案すれば、必ずしも社員の要望に従う必要はないにしても、社員の要望に十分に配慮するのが適切といえるだろう。主治医や産業医の意見その他を考慮の上、結果的に配置転換は望ましくないとの判断を下すのであればよいが、少なくとも、最初から配置転換は認めないという方針をとるのは不適切ということだ。

判断にあたっては、厚労省が出している「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に則った対応が望ましいと考えられる。

「手引き」では、<第3ステップ:職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成>において、

① 労働者の職場復帰に対する意思の確認
② 産業医等による主治医からの意見収集
③ 労働者の状態等の評価
④ 職場環境等の評価
⑤ その他(本人の行動特性、家族の支援状況など)

をもとに、職場復帰の可否を判断するよう示している。

このうちの③の中に「希望する復帰先」があり、職場復帰の際の判断材料の1つになっていることがわかる。
ただし、「本人の希望のみによって職場復帰プランを決定することが円滑な職場復帰につながるとは限らないことに留意し、主治医の判断等に対する産業医等の医学的な意見を踏まえた上で、総合的に判断して決定するように気をつける必要がある」とされており、本人の希望はあくまで判断要素の1つとすべきことに注意が必要だろう。特に、メンタルヘルス不調時は、判断力が低下していることにも留意しなければならない。

また、<その他職場復帰支援に関して検討・留意すべき事項>として、まずは元の職場への復帰が原則というのが揚げられている。「たとえ、より好ましい職場への配置転換や異動であったとしても、新しい環境への適応にはやはりある程度の時間と心理的負担を要するためであり、そこで生じた負担が疾患の再発に結びつく可能性が指摘されているから」で、配置転換が新たなストレス要因となるリスクを指摘している。

したがって、

・現状の部署で業務の軽減はできないか?
・他部署で同様の業務はできないか?

といった、より細やかな配慮をした選択肢も検討する必要がある。

昨今の経営環境からすると、メンタル不調者はこれからも増加していくものと思われる。冒頭のJILの調査でも、5割近くの企業が今後ますます深刻化すると考えている。
プライバシー保護の観点からもデリケートな問題だけに、企業としての対応を早目にルール化・制度化しておくことが望まれる。

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