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キャリアにおけるセレンディピティ(※)――「うな玉丼」がくれた気付き

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2014年08月05日

マーサー ジャパン株式会社 組織・人事戦略コンサルティング部門    寺田 弘志

コンサルティング業界に足を踏み入れた際に、人に自慢できるような「高い志」があったわけではなかった。大学院生のときに学校の掲示板に貼られていたコンサルティング会社の「サマーインターン募集」の紙を見て、もらえる金額の多さに思わず申し込んだのが始まりである。

そこで、理系の学生でビジネスのイロハもわからず四苦八苦していたわたしに、担当コンサルタントが、「精のつくものでも・・・」と言って、うな玉丼をご馳走してくれた。その美味しさに“こんな上手いものを食べているのか。コンサルティングというのは素晴らしい仕事に違いない”と思い込んでしまった。それがきっかけとなり、当時の担当教授の反対を押し切ってコンサルティング業界の門を叩いたのである。とまあ、安易にキャリアを選んでしまったせいか、当初は期待したとおりにいかず苛々することも多かった。「あのときの“うな玉丼”」が恨めしく思えることもあった。理不尽な不満も積もりきった頃、ある本の中にこんな一節を見つけた。「面白い仕事とそうでない仕事があるのではない。面白い仕事の仕方とそうでない仕事の仕方があるのである。」そのフレーズが不思議と頭に残って離れずにいると、次第にこんな風に思えるようになってきた。

“期待に応えることができれば、仕事の進め方は結構任せてもらえるのではないか”

そうすると、自然とえり好みをせずに仕事に向き合えるようになり、仕事の幅も徐々に広がっていった。その頃を境にして、後の成長につながるような経験にも多々巡り合えたような気がする。

自分のキャリアにおいて、好きなことだけに取り組めることは皆無である。任された仕事の中には、気に入らない、どうしても乗り気になれない、と思うこともあろう。そんな時、わたしはこんな風に自分なりの工夫を心がけてきた。
■視点や角度、時間軸を変えて見直すことで、気づかなかった「意味」を見出す。
■“内容”でなく“プロセス”から新しい「意味」が見出せないか考える。
■「無意味」だと感じる自分に問題はないのかを振り返ってみる。
■あとで振り返るときっと“いい思い出”として笑って済ませられるだろう、と前向き(ないしは気楽に)に捉える。
■将来を見据えた「自己投資」と捉える。
■意味は「与えられる」ものでなく「創り出す」ものと信じる。
自分がこの仕事を通じて社会に貢献できているとすれば、それはきっと様々な出会いがあったからこそ、と思っている。しかしそれは単に、“出会い”という偶然があったからだけではなく、その“偶然の出会い”の中から自分なりの“意味”を見出していこうとした一つひとつの積み重ねと、そんな自分を支え、励ましてくれた人々がいたからに違いない。それがなければ今頃は、罪の無い「うな玉丼」に逆恨みしている自分がいるのかもしれないし、それはなんだかとてもつまらない人生のような気がする。

「仕事」は選べないかもしれないが、「仕事の進め方」は自分で選べる、と考えると、人に頼らずとも自分自身で仕事の幅も拡げられるし、“偶然の出会い”の中に様々なチャンスが見えてくる。そうすることで、仕事を通じた「幸せ」を自然に実感できるようになるのではないだろうか。

(※)セレンディピティ:ふとした偶然をきっかけに閃きを得、幸運を掴み取る能力

 

※本記事は2011年11月時点の記事の再掲載となります。

マーサー ジャパン株式会社 組織・人事戦略コンサルティング部門 寺田 弘志

グループ人材マネジメントシステムの設計・導入、人材モデルの策定・運用支援、企業統合・再編に伴うマネジメントおよび社員コミュニケーション支援、および、日系企業のグローバル化支援と海外現地法人の人材マネジメント改革支援に従事。
アンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)、日本ジェイディエドワーズ(現・日本オラクルインフォメーションシステムズ株式会社)、およびアーサーアンダーセンを経て現職。
京都大学大学院工学研究科電気工学専攻を修了。

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