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2010年の中国人材マネジメント -鍵は「マネジメント人材」の確保-

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2014年07月24日

マーサー ジャパン株式会社 組織・人事変革コンサルティング部門 内村 幸司

筆者が中国ビジネスに関わって15年が経過した。今年はどのような年になっていくのであろうか。筆者は、市場としての魅力が増してきている「中国」において、これまで以上に「人材」が重要になる年になるのではないかと考えている。では、これからの中国で求められる「人材」とは、どのような人材なのだろうか。

中国の市場としての魅力が増したとしても、その攻略は容易ではない。中国各省において購買力が高まり、市場が地理的に広がってきている。また、人口構造におけるボリュームゾーンの購買力も底上げされており、顧客となりうる層が深まっている。こうした市場の「広がり」と「深まり」に対応しなければ、中国市場の果実にありつくことはできない。これまでのように高付加価値な製品を自然発生的な需要に応じて流通させているだけでは、敗者になってしまう。これまでの在中国日系企業の課題は、「中国」という異文化に対応し、中国進出の目的を果たすべくオペレーションを早期に立ち上げることであった。改革開放以来、日系企業も中国で努力を重ねている。ロジカルでないもの・曖昧なものに対する拒否反応が強い中国人材に親和性の高い役割ベースの人事システムを導入したり、情報を培い、経験を重ね、中国の商習慣・法規制に対応する体制を整えたりして異文化に対応し、本社から課せられている生産目標を達成するためのオペレーションや既存製品を流通させるためのオペレーションを立ち上げている日系企業は多い。オペレーションを立ち上げた後、市場の「広がり」と「深まり」にどう対応するか。特に奇策を講じる必要はない。中国ビジネスにおける思考の軸を日本(日系企業)と中国の違いに対応するという異文化対応から、自社と他社の違いを踏まえて市場における競争に対応するという市場対応に転換すればよい。つまり、普通に「マーケティング」を行うということである。これまでは、オペレーションの立ち上げに現地や本社の経営資源が優先的に投下されていたため、自社がもつマーケティングのノウハウを中国市場に活かすことや中国固有のマーケティング戦略を立案することができず、もどかしさがあった。しかし、オペレーションが立ち上がってくれば、本格的にマーケティング機能を拡充するステージへと移行できる。「広がり」と「深まり」によって複雑さが増している中国市場と向き合い、中国市場固有のマーケティング戦略の立案・実施に取組めるようになる。

そうなると中国において必要になってくる人材は、「中国市場に精通し、自社の強み・弱みを理解し、自社の進むべき道を明示し、その道に従って自社を牽引することができる人材」になってくる。
「中国に精通し、自社を熟知し、マネジメントができる人材」をどうやって確保するか。日本人駐在員に現地経験を積ませ、中国市場に精通させるという方法もあるだろう。現地社員に自社の価値観や業務を熟知してもらいながらマネジメントスキルを開発する方法もあるだろう。あるいは、中国市場に精通し、かつマネジメントのできる外部人材をヘッドハンティングし、自社を熟知してもらう方法もあるだろう。実際に、先進的な日系企業の一部は、既に、それぞれ工夫を凝らしながら上記のような取り組みを開始している。もちろん、これらの選択肢は相互排他的ではない。すべて行うべき取り組みなのかもしれない。

この答えを出し、魅力ある中国市場へ果敢に挑む。これが日系企業の2010年の課題であり、この課題解決のサポートが我々の課題である。

 

※本記事は2011年10月時点の記事の再掲載となります。

 

報酬・評価・等級制度の設計及び導入支援などの人事・組織行動全般のコンサルティングに従事。特に中国・台湾・香港・ASEANにおいて、グローバル経営人事制度構築など日系多国籍企業を対象とするプロジェクトに多数参加。日系大手精密機器メーカー(中国駐在を含む)を経て現職。中国現地法人における営業組織体制構築の経験を持つ。 早稲田大学大学院修士課程修了(国際関係学専攻)

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