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人事評価と企業業績との整合性

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2015年03月06日

人事評価は、一定期間の社員の能力や業績を一定の尺度に基づいて評価するものだ。

人事評価を絶対評価で行っている企業であれば、高評価の社員が低評価の社員よりも多かったとすると、企業の業績は伸びているはずである。逆に、低評価の社員が多ければ企業業績は悪化しているはずだ。
このように、個々人の人事評価の合算と企業業績や組織業績は連動しているはずである。

ところが実際は、そのような連動が見られない企業が多い。よくあるのは、5段階評価で社員の平均値が3.5くらいはあるのに、前年業績マイナスが続いているようなケースである。

そのような現象が、能力評価を取り入れている企業ならまだしも、成果主義を標榜している企業でもしばしば見られる。普通に考えればおかしな話なのだが、「まあ人事評価とはそんなものだ」とあきらめ半分で放置されているのが実態ではないだろうか。

たまたま一部の部門が大不振で、全社業績の足を引っ張ったというのならともかく、恒常的にそのような状態が続いているのであれば、評価制度の仕組み、あるいは運用の仕方に何らかの欠陥があると考えるべきだろう。

どのような欠陥があるかを整理すると、大きく次の3つに分けられる。

① 評価項目に問題がある
評価項目と企業業績がリンクしていないケースである。
具体的には、潜在能力や保有能力を評価するなど、評価項目自体が業績とあまり関係ない場合や、目標管理において、設定した目標が的外れである場合などだ。
当然ながら、このような場合は、たとえ正しく評価したとしても業績と連動しない。

② 評価基準に問題がある
評価基準の設定の仕方に問題があるケースである。
具体的には、評価レベルの元々の期待値が低い場合や、設定した目標が低い場合などである。いずれも、客観的には大した能力や業績でなくても、評価としては高くなってしまい、結果的に業績と連動しなくなる。

③ 評価結果に問題がある
評価が正当になされていないケースである。
具体的には、評価が甘すぎるなど管理者の評価スキルに問題がある場合や、基準があいまいなため年功評価に陥っている場合などである。社員の実際のパフォーマンスと評価結果が乖離しているので、これも当然に業績と連動しなくなる。

このうち、特に多いのは③のケースである。評価者には寛大化傾向や中心化傾向が多く見られるため、業績にかかわらず、一定の評価(ほとんどが「少し上」の評価)になりがちなのである。

このような個人評価と企業業績との乖離を防ぐには、まずは実態をきちんと検証することから始めなければならない。

ある企業では、評価の度にいくつかの部門をピックアップし、部門業績と個人評価の妥当性を確認している。
具体的には、部門の評価指標が前年度に比べてどうなったかと、個人評価の分布状況をチェックしている。
たとえば、部門評価指標が下がったのに、個人評価の高評価分布が増加しているときは、個人評価の妥当性を疑い、場合によっては評価をやり直す制度を設けている。

実際に再評価までさせるかどうかはともかく、まずは実態を把握し、部門ごとの評価傾向を探るのは重要だろう。
その結果、特定部門で非連動が見られたのなら、とりあえず③の観点から評価が適正に行われているかをチェックすべきであり、もし、全社的に同一の傾向が見られたのなら、上記①②の問題も含んでいる可能性が高いことから、評価項目や評価基準の見直しも検討課題になるといえよう。

なお、ここで言っているのは、あくまで個人評価の集積と企業業績との関連であって、個々の評価が企業業績と整合していなければならないということではない。たとえば、今期は会社業績が悪いから、どんなに成果を上げた社員であっても、5や4はつけられないというわけではないことに留意していただきたい。

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