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仕事「観」のダイバーシティによって学ぶ場

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2016年06月03日

人事・組織の世界で「ダイバーシティ」というと、主には性別や年齢、学歴、人種、働き方などハード面での多様性に目がいきがちです。しかし、考え方や価値観といったソフト面での多様性もまた重要です。また、マネジメントの視点からすると、多様性はそれをどう管理していくか、制度上でどう保持していくかという、やや課題めいたとらえ方になりがちです。しかし、多様性(とくに価値観の多様性)は、実は、学びの場にとっては啓発の源泉となり、解決すべき課題どころか、生かすべき財産となります。

このシリーズ記事で紹介している「コンセプチュアル思考」研修のプログラムは大きく次の5つのパートに分かれていますが、例えばその2番目にある「モデル化」のセッションはまさに、受講者の仕事観の多様さから学ぶ場と言えます。

〈1〉定義化    物事の本質をつかみ言葉で表わす
〈2〉モデル化   物事の仕組みを単純化して図に表わす
〈3〉類推     物事の核心をとらえ他に適用する
〈4〉精錬     物事のとらえ方をしなやかに鋭く
〈5〉意味化    物事から意味を見出す/意味を共有できる形として描く

本稿では、いかに価値観の多様さが学びの刺激となりコンテンツとなるかをみていきたいと思います。


◆「成長する」とはどういうことかを概念モデル化する

では、コンセプチュアル思考研修の「モデル化」セッションでのワークを紹介しましょう。コンセプチュアル思考のトレーニングでは、「仕事」とは何か、「事業」とは何か、「自信」とは、「幸福」とは、といったような人それぞれで解釈が異なる大きな言葉を選び、それを題材にして抽象化・概念化を行ないます。そういう思考作業をやる過程で、自分自身の「観」をあぶり出し、醸成していくわけです。そして各自の「観」を披露し合うことで刺激を与え合うのです。本稿では、例えば「成長」というワーク題材を取り上げます。

私が研修・ワークショップで使用するワークシートは次のようなものです。この記入欄の設計は、コンセプチュアル思考の基本フローである「π(パイ)の字」(抽象化→概念化→具体化)の流れにそっています。

CT09a コンセプチュアル思考 パイの字フロー

思考作業としては、まず具体の世界に思いを巡らせることから始まります。ワークシートの作業1の欄には、次のような指示が書き込まれています。

【作業1】「成長」にまつわる体験・出来事・見聞・観察・記憶
これまでの仕事生活・人生を振り返って、または世の中を見渡してみて、  ・自身のこれまでの成長体験、成長エピソード  ・他者を通して見てきた人が成長・変化する姿 を具体的に思い浮かべてみましょう。

次にそこから抽象に入ります。作業2の欄は次のような記載になっています。

【作業2】「成長」の定義 
「成長とは何か」「成長についての解釈」を自分なりの言葉で表すとどうなりますか……

このステップでは、「成長」というものがはらむ本質的な要素を自分なりに引き抜いてくることが求められます。豊かに経験をたくわえ、深い洞察ができる人ほどコンセプチュアルに考える力は強くなります。そして次のステップがメインの作業になります。

【作業3】「成長」の絵図化 
作業2の定義をふまえて、「成長とはどういうものであるか」を図や絵で表わしてみてください。

物事の構造や仕組みを単純化して図的に表現する。これをコンセプチュアル思考では「モデル化」と言っています。


◆人それぞれの「成長観」がにじみ出る図

では、実際の研修・ワークショップで受講者が描いた「成長とは何か」のモデル図をいくつか紹介しましょう。なお、概念を図的に表現する手法は別途講義で学んでいます。

CT09 コンセプチュアル思考作品01

CT09 コンセプチュアル思考作品02CT09 コンセプチュアル思考作品03CT09 コンセプチュアル思考作品04CT09 コンセプチュアル思考作品05

いかがでしょう。各自の「成長観」がにじみ出ているモデル図ではないでしょうか。研修ではこれらをグループ・クラスで共有し、互いに意見を出しあったり、図を添削しあったりして、自分の描いた図をさらに深化させていきます。受講者は図化された多様な「観」に触れることによって、自分の観(=ものごとのとらえ方)の浅い深い、熱い冷たい、強い弱い、傾きや色合いを感じ取ります。そうして自らの「観」を醸成しなおしていきます。講師側から何かしらの「観」に誘導するのでもなく、どれが正解だと押しつけるのでもありません。この場では、さまざまな人のさまざまな見方こそ、最良の教材になっています。

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コンセプチュアル思考は、概念を起こす思考であり、意や観をつくる思考です。その意味では、コンセプチュアル思考研修はスキルトレーニングではなく、マインド醸成系のものです。いずれにせよ、ある物事に対し、辞書/事典の定義を覚えることは簡単です。そうした客観を超えて、どうその人なりに主観的・意志的な物事の定義を持つか、概念モデル化するか、こういった思考訓練がとても重要です。「世の中に事実はない。ただ解釈があるのみ」(ニーチェ)という言葉があるように、結局、私たちは個人であれ、組織であれ、自身が養うものの見方(=観)で生きる世界を決めていくからです。

 

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【シリーズ】コンセプチュアル思考
〈第1回〉~新・思考リテラシーへの誘い
〈第2回〉~「コンセプチュアル思考」とは何か
〈第3回〉~「成長」欠乏不安症の若手に必要なのは成長「観」の醸成
〈第4回〉~「具体的に指示されなければ行動できない社員」の育成処方箋
〈第5回〉~リーダー・マネジャーに必要な思考技術~ロジカル思考を超えて
〈第6回〉~仕事「観」のダイバーシティによって学ぶ場

 

〇キャリアポートレートコンサルティングの『コンセプチュアル思考』研修 の詳細については次の資料をご覧ください →PDF資料

〇『コンセプチュアル思考の教室』ウェブサイト開設 (ワークショップも開催します) http://www.conceptualthink.com/

 

 

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