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「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」

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2016年01月25日

「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」

この言葉は、京セラや第二電電(現KDDI)の創業者である
稲盛 和夫氏の経営哲学の一つだ。

新しいことを進め、成功させるには、まずは楽観的に構想を描けることが必要。
自分で壁を作っては、夢のようなことはやる気になれず、新しいものは決して生まれない。

しかし、夢のようなことばかり考えていては、現実化はしないので、
計画の段階では、悲観的に構想を見つめ直し、考え尽くすことで、悲観的な要素に対する対策を準備しておく。
しかし、実行の段階では再び楽観的に行動に移さなければ、成功に向けた果敢な行動が取れない。

そんな仕事や人生に向き合う上でとても大切な基本姿勢を示した言葉ではないだろうか。

実は、ソフトバンクの創業者であり、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイルのCEOでもある
孫正義氏も同じような思考の持ち主である。

彼は経営に関してこう述べている。

「最初は右脳を使って思う存分、成功のイメージをつかみますが、
その次の段階では、そのイメージを実現するための具体策を左脳で翻訳していくんです。
『この未来を実現するためにはどうすればいいか』と。
そこからはもう、完全に論理の世界です」

「右脳を使って思う存分、成功のイメージをつかみ」、というのは、
稲盛氏の「楽観的に構想し」という点と同じであり、
「そのイメージを実現するための具体策を左脳で翻訳していくんです。」
というのは「悲観的に計画し」に当てはまる。

いかがだろうか?
異なるタイプの経営者であり、好き嫌いが分れるところでもあるかもしれない。
しかし、両者とも同じような思考プロセスで、それぞれのビジョンを描き、実現していることが伺える。

2008年に「パーソナル・グローバリゼーション」を上梓した。
これからのグローバリゼーションの中、自分自身の責任で自らをグローバル化していくことの緊急性と重要性を述べ、
そのために必要な要素をパーソナル・グローバリゼーションモデルとしてまとめた。
私自身が影響を受けてきた尊敬できる方々を思い描きながら作ったモデルだが、
その中核要素として「ビジョナリ―・シンキング(ビジョン構想力)」を掲げている。
右脳的にビジョンを描き、その実現のためのステップを左脳的な思考力で組立てることが
変化の時代において、時代に適応し、新たな道筋を見出し、行動しながら
自分自身を成長させていく上での力の源泉となると考えている。

稲盛氏、孫氏の考え方を知ったのはこのモデルが出来た後だったが、
まさに同じような考え方であり、共感を受けた。

さて、この話を出したのは、経営者の皆様にとって
重要であるのはもちろんのこと、これからの後継者育成や、
現場レベルにおいても重要だからだ。

例えば、日本人の不得意とするところに、仕事するにしても、プロジェクトをするにしても、
日本人の多くは「What」を考えること、と言われている。
つまり何を達成すべき、どこへ向かうかを考えることである。

逆に得意なことは「How」、「どのようにやるか?」を考えることと言われている。

結果、例えばミーティングにおいては、ゴールを決めずに話し始め、
手段、どのようにやるかの話に議論が集中してしまうため、
話の流れはぶれ、時間もかかるし、納得の行く結論も出ない。
そんなことが往々にして起こる。

どこを目指すかが明確になっていれば、大きな力を発揮するが、
それがない中で行動していると、一生懸命仕事をしているが、
結局は成果につながっていない、ということになりかねない。

経営者としては、大きなレベルでのビジョンを描き、
メンバーもそれぞれの業務において、ビジョンを描き、
実現へのステップを考える力が必要ではないだろうか。
特に変化の激しい時代においては尚のことではないだろうか。

当社も創業から数多くの方々に支えられながらはや15期目を迎えることが出来ている。
師走が迫る中、これからどのような会社にしていくのかを考える中で、
改めて一人ひとりの社員が、ビジョナリー・シンキング(ビジョン構想力)を持つことの
重要性を感じている。

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