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部課長の対話力〈2〉~貢献意欲を湧かせるコミュニケーション

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2015年07月05日

「働くこと」基礎概念講座9-2
部課長の対話力〈2〉~貢献意欲を湧かせるコミュニケーション

◆指示・命令に劣らず大事なコミュニケーションがある
上司が部下とやりとりするもろもろのコミュニケーションは何のためのものか?―――こう問われたとき、みなさんはどうお答えになるでしょうか。おおかたは「そりゃ決まっている、事業組織においては、指示・命令の伝達が生命線なんだから、そのためにコミュニケーションをしている」そんな答えになるでしょう。

確かに「伝達のコミュニケーション」は第一に重要なことです。では、ほかに何があるでしょうか。このことを考えておくことはとても有意義ですので整理してみましょう。

事業組織において、上司・部下間のコミュニケーションは次の3つに分けられます。

 1)「情報伝達」のためのコミュニケーション
 2)「貢献意欲喚起」のためのコミュニケーション
 3)「関係性融和」のためのコミュニケーション

1番目は冒頭に述べたとおりです。上司は指示や命令、経営側の意思など諸情報を伝達するためにコミュニケーションを行います。ひとつ飛んで3番目、上司は部下とスムーズな人間関係をつくるために私語や雑談をします。これが関係性融和のためのコミュニケーションです。

そして忘れてならないのが、2番目の「貢献意欲喚起」です。つまり、上司は部下の1人1人が「事業目的に向かって貢献したい」という気持ちを呼び覚ますためにコミュニケーションをしなくてはならないのです。

経営学者であるチェスター・I・バーナードは『新訳 経営者の役割』の中で、組織を成立させる3要素として「コミュニケーション・貢献意欲・共通目的」を挙げています。この3要素は深読みするといろいろあるのですが、ともかくこれらのうちどれを欠いても組織たりえないと彼は論じました。

なるほどバーナードの示すとおり、組織は単に人の集まりではなく、その集団が掲げる目的完遂のために貢献したいという「意欲の集まり」「やる気の束」ととらえるのは、ひとつのうまい定義です。企業とは、文字通り「業を企てる」です。事業目的を完遂させようという意欲を持たぬ人間の集まりは、烏合の衆であって、そもそも存続すら危ういでしょう。

◆部下を自分に従わせるのではなく、目的に従わせる
往々にして、部課長というものは、1番目の情報伝達のコミュニケーションに偏りがちですし、そこに自分の存在意義を込めようとします。指示・命令の正確な伝達と徹底こそ部課長の役目として、権力の上下関係を後ろ盾に、部下を自分に従わせようと躍起になります。そして、部下が従順に従えば従うほど(あるいは従うふりをしたとしても)、部課長はそこにある種の安堵感を覚えるものです。

しかし本当のところ、部下は仕事上の家来でも子分でもありません。意欲喚起のコミュニケーションを十分に知っている部課長は、部下を自分に従わせようとするのではなく、目的に従わせようとします。つまり目的完遂のために彼らをどう貢献させようか、その貢献過程で彼ら自身が成長を得られるにはどうはたらきかけをすればよいか、について頭を巡らせます。

そうした部課長は、部下に対し「なぜ、あいつは俺の言うことをきかないんだ」とイライラはしません。「あいつは俺の言うことをきかないが、反骨エネルギーは持っている。そのエネルギーを目的に結び付けるにはどういう刺激を与えればいいのか」、そういう発想になるのです。

ある意味、情報伝達のためのコミュニケーションは簡単かもしれません。「何を・どうやるか」について、職権を土台にして伝達すればよいからです。
一方、2番目の貢献意欲喚起のためのコミュニケーションは、職権パワーはあまり効力がなく、その上司の語る力、想う力、人間的な包容力、根気が問われることになってきます。部下を一人の人財として慮り、彼(彼女)の意欲を目的につなげ、会社を働く舞台とし、仕事を成長機会にしてやる、そうしたことは大変なことですが、それこそが部課長が行うコミュニケーションのチャレンジングな部分であり、深い喜びの部分でもあります。

◆好かれる上司が「よい組織」をつくれるわけではない
よい組織における上司と部下の人間関係とはどのようなものか?―――ピーター・ドラッカーは次のように指摘しています。

 「人間関係に優れた才能をもつからといって、よい人間関係がもてるわけではない。
 貢献に焦点を合わせることにより、初めてよい人間関係がもてるのである。
 生産的であることが、よい人間関係の唯一の定義である。
 仕事に焦点を合わせた関係において成果が何もなければ、
 温かな会話や感情も無意味である。とりつくろいにすぎない」。
                  (『プロフェッショナルの条件』より)

ここでドラッカーは2つの重要なことを指摘しています。
1つめに、よい人間関係を「生産的であること」と定義したこと。よい人間関係というと、「掛け値のない相互信頼」とか「反りが合う」「気楽に付き合える」などと考えてしまいがちですが、事業組織という中でのよい人間関係とはまさにこのとおり皆が目的を共有し、各自がそこに貢献しようと生産的になれる関係です。
反りが合う、気楽な人間関係はそれに越したことはありませんが、組織の中ではそれが往々にして派閥や親分子分の連れ添いを生み、弊害となる場合も多いものです。

2つめとして、よい人間関係を持つことは能力・テクニックではないこと。
これはハッとする指摘です。私たちは往々にして、人間関係の構築を「対人コミュニケーション法」という技術で何とかしようとしますが、いくらそうした技術を身につけたところで、互いが目的を共有せず、心がバラバラな状態では決して良好な関係は生まれません。組織に属する人間たちが個々のさまざまな違いや対立を乗り越えて、よい関係が構築できるのは、技術のあるなしではなく、「共通の想い」のあるなしです。

ですから、部課長が組織を引っ張っていくために最も重要なことは、目的を皆でしっかり持ち合うようはたらきかけをすることなのです。上司は部下に好かれなくてはならない、役員に取り入らなければならない、チームは和気あいあいとしていなければならない、などとやきもき考えだす必要はありません。自分の想いを真正面から語り、共通目的の下にメンバーが貢献意欲を湧かせ、生産的になる―――それに専念することです。
1番目の伝達のコミュニケーションに長けた部課長が、あるいは3番目の関係性融和のコミュニケーションがうまく人気のある部課長が、必ずしも「よい組織」をつくれるとはかぎりません。

◆至難の旅への男子求む。報酬わずか…
英国の探検家アーネスト・シャクルトン卿は、1914年、世界初の南極横断をするための冒険隊員募集の広告を新聞に出しました。その有名な文面はこうです。

 「至難の旅への男子求む。報酬わずか。極寒。暗黒の長い月日。
 絶えざる危険。生還の保証無し。成功の暁には名誉と賞賛を得る」。

―――結果、この広告に5000人もの人が応募したといいます。シャクルトン卿はリーダーシップ研究の材料にされるほどその後伝説的な冒険をしましたが、彼が荒くれ男たちを見事に統率できたのは、「なぜこの冒険をやるのか」「お前たちは歴史をつくりに来たんじゃないのか」という問いを隊員たちにかけ続け、貢献意欲を湧かし続けたからです。

人間の真のやる気は、意味を感じられる目的の下に生じるものです。そして意味や目的といったものは、対話によってこそ共有されうるものです。

「なぜ多くの社員がやる気をなくしているのか」、「なぜ組織の空気がどんよりしているのか」を考える根っこは、果たして、うちの組織は目的(事業の意義であったり理念であったり)を明確に設定して、それを皆で共有しているだろうか? そしてそのための対話があるだろうか?との自問から始めねばなりません。目的がない、そのための対話もない。そして日々、目標だけが覆いかぶさる組織―――それでは皆が疲れるはずです。

組織の中には、「さぁ、うちの部も伝説をつくろうじゃないか」と言ってのける部課長がそこかしこにいてほしいものです。

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【グループ記事】
〇部課長の対話力〈1〉~上司は「客観的評価」に逃げるな
〇部課長の対話力〈2〉~貢献意欲を湧かせるコミュニケーション

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