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【思いの実現を支える組織づくり】-第5回「貢献責任(2)」

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2014年09月15日

株式会社 みのり経営研究所 代表取締役
秋山 健一郎

140305 KA写真 (2)

 

組織の全ての構成員は何らかの役割を担っています。その役割の構成要素は、(1)目的、(2)業務活動・業務行動、(3)業務活動の結果として生み出される成果の3つに集約されます。第3回目の稿で触れたように、みのりでは(1)と(2)をつなげる(3)の業務活動の結果として生み出される成果を「貢献責任」と定義しています。この概念が組織設計を行う時のカギとなります。

 

前回触れた原子力安全保安院の所掌事務は(2)に該当すると思えます。しかしそれぞれの事務(業務活動)を遂行する目的、遂行結果としての成果が明記されていません。その組織が何を目的として設計されたのか、そして一つひとつの業務活動がその目的に向かって何を生み出すべきなのかが明示されていなければ、そこに働く人が組織に貢献したかどうかは判定できません。日本の組織は曖昧さを残し、働く人の自主性を重んじていると主張される方もおられますが、何を目指すかも分からぬ役割の中では、自主性の発揮しようがないというのが実態です。多くの場合この曖昧さが、評価を恣意的なものにする元凶となっています。

 

「貢献責任」記述のルールは単純です。第一番目は、貢献責任の数を最低5、最大でも9つに限定すること。そして二番目が一つひとつの貢献責任を「—を—する」と表現し、業務活動の範囲と方向性を明示すること。この二つを大原則としています。まず数を制限することは、役割を単なる業務活動の羅列に終わらせないために重要なルールです。組織の中には様々な役割が存在していて、業務活動だけを見れば、似通った役割も多数存在します。しかしそれぞれの役割が異なるのは、限定された数の中でぎりぎり特定された貢献責任が異なることで明確となります。組織全体の活動に責任を負う役割とその下で様々な活動に責任を負う役割との違いは、「課長」や「部長」のような役職呼称によるのではなく、貢献責任の違いで示すことが可能となります。

 

「—を—する」と言う表現は、様々な業務活動から生み出されるべき成果に、その範囲と方向性を明示することを意味します。一度この範囲と方向性が明示されると、それを出発点として、業務活動の洗い直しが可能となります。その役割の担当者の発意と自由度が生かされるのは、まさにその出発点があればこそ可能となります。第3回目に人事部の仕事の例を挙げましたが、「採用に関する業務」をこのルールに基づいて表現してみます。当然会社の意図するところにより様々な候補が考えられますが、例えば「当社が長期的に必要とする人材を確保する」。会社として求めているものが明示され、担当者として何を目的として採用と言う業務活動を行うかが明確となっています。まず「長期的に求められる人材」が何かを考えるところから出発して、そのような人材の採用・確保には何が必要かを考えざるを得ません。「採用」ではなく「確保する」という表現の違いも注目に値します。市販されている能力テストや他社がやっている活動例などに頼る採用活動をやっているだけでは、求められる成果は得られません。従来のマンネリ化した採用活動などを見直す良い契機ともなり得ます。

 

また組織にどのような人材がどのくらいの規模で必要かは、このようにして記述された役割が基礎となり規定されることになります。貢献責任一つひとつに込められた「思い」を支えることのできる人材が、選別され配置されることが求められます。上の例では、単に採用活動ができる人材ではなく、結果として人材を確保することのできる人材を求めていることを示しています。組織設計は、以上のような原則に基づいた役割記述が大前提となります。

 

この延長線上で、先に挙げた「原子力保安院」の各課の役割を再度考えてみます。一番重要な「原子力緊急事態の発生に際して原子力の安全を確保する」責任はどの課が負っているのでしょうか?所掌事務を見る限り、「防災課」の4番目の記述がそれに一番近いようです。そこにこの貢献責任を当てはめようとすると、考えられるのは「そんな大きな責任を果たす権限が無い」という反論です。実はこの点こそが組織設計上最も重要な議論なのです。防災課の役割(あるいは別の課でもいいのですが)としてこの貢献責任を設定するということは、「防災課長」がその責任とそれを果たすことを可能とする権限も有することを意味します。貢献責任を果たすために必要な権限とは何か、それを支えるための課内の役割はどうあるべきか、その役割を果たすことを可能とする資質経験能力とはどのようなものか等々・・この貢献責任が明示されて初めて議論され特定されることになります。安全確保に関する事務を遂行しているだけでは、安全は確保できません。(大津波の可能性が指摘された時に、その対応に動きださなかったのは、大津波の結果として起こる災害時の安全を確保すると言う一番大事な責任を、どの役割も負っていなかったからとも言えます。)

 

組織設計の原点は、一つひとつの役割を貢献責任のルールに基づき定義・表現することです。暗黙の了解ではなく、文章化し明確に伝えること。経営者の思いが、社員一人ひとりの役割の中に反映されている状態。これが組織設計の原点と言えます。これはグローバル化の時代に、多様な社員に活躍の場を与える基盤ともなります。

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『思いの実現を支える組織づくり』は、2010年11月~2014年2月にわたって(株)みのり経営研究所のホームページ、人事コラムに連載した記事の再掲載です。

株式会社 みのり経営研究所 ホームページ

 

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Voice私はこう思う!

  • よしみちゃん さん 9/19 10:30 午前

    「貢献責任」記述のルールは単純です。第一番目は、貢献責任の数を最低5、最大でも9つに限定すること。そして二番目が一つひとつの貢献責任を「—を—する」と表現し、業務活動の範囲と方向性を明示すること。納得です!

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