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採用担当者を対象とした、新卒採用動向調査の結果

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2014年04月18日

2月に入り、大学の後期試験もそろそろ終了の時期を迎え、再び採用活動が熱気を帯びてきました。セミナーはもちろんのこと、早い企業では面接選考も始まっていることでしょう。今回は前回に引き続き、採用担当者を対象として昨年末に実施した新卒採用動向調査の結果を紹介します。ご参考にしてください。

ターゲット校設定企業、調査開始以来初の減少

弊社独自の調査項目として注目されているのが「ターゲット校の設定率」です。HR総研の調査方法の特徴は、人事部門あての郵送アンケートではなく、「HRプロ」会員(個人)向けのWEBアンケート方式を採るともに、回答者名はもちろんのこと、回答企業名も一切公表しないというお約束の上で回答協力をいただいていることです。では、通常の郵送アンケートと何が違うのでしょうか。ずはり、回答の質です。郵送アンケートの場合、人事部門(あるいは会社)としてのオフィシャルな回答として扱われることを想定して、本音の回答にはなりづらく、極めて当たり障りのない回答にとどまる傾向があります。
これに対して、人事部門の個人からの回答は、回答企業名も秘匿性を持たせるため、極めて本音に近い回答を集めることができるのです。今回のテーマである「ターゲット校の設定」などは、郵送アンケートと個人向けのWEBアンケートではまったく異なる結果になるはずです。「ターゲット校の設定」とは、指定校まではいかないまでも、一部の特定大学についてのみ採用重点校として特別な対応をしている大学があるかどうかを問うものです。表面的には「大学名不問」の採用活動をしている企業からすれば、特定大学の存在は公にはしたくない事実です。郵送アンケートで実施した場合には、「ターゲット校の設定はない」とする回答が大半を占めることが容易に予想されます。
さて、本題に入りましょう。HR総研では、この「ターゲット校の設定の有無」について、2011年新卒採用(2009年12月調査)から毎年調査をしています。これまでの調査結果の推移を見てみると、ターゲット校を設定している企業の割合は、2011年卒33%→2012年卒39%→2013年卒48%→2014年卒52%と右肩上がりの上昇を見せてきましたが、2015年卒採用では44%と大きく減少することとなりました[図表1]。

ターゲット校設定が減ったのは大手以外

では、その背景にあるのはなんでしょうか。設定している企業の割合を企業規模別に見てみましょう。回答企業を「300名以下」「301~1000名以下」「1001名以上」の3区分に分けてみると、「300名以下」37%、「301~1000名以下」48%、「1001名以上」55%と、企業規模により傾向が異なる結果が浮かび上がって来ます[図表2]。

前回(2014年卒)の調査では、「300名以下」47%、「301~1000名以下」57%、「1001名以上」54%となっており、「1001名以上」の大企業では減少していない(というよりも微増)のに対して、それ以外の中小・中堅企業で大きく設定率が減少しているのがわかります。中小・中堅企業で大きく設定率が減少したのには三つの訳があります。一つは、景気回復基調から各企業の採用意欲が向上し、昨年に比べて採用計画数の増加が予測されること。企業側の採用計画が膨れ上がれば、需給バランスからして企業側の学生争奪戦が激しくなり、昨年以上に採用には苦労することになります。
二つ目には、学生の大手企業志向が再燃していることです。ここ数年、景気の低迷から大手企業の採用数はリーマン・ショック以前と比べるとかなり減ってきており、必然的に学生は中堅・中小企業にも目を向けざるを得なかったわけです。ところが、円安・株高基調の中、企業の経営状況は大幅に改善してきており、最高益を更新する企業も少なくありません。ただでさえ需給バランスの悪化が予測される中、さらに学生の大手企業志向が復活するとなると、中堅・中小企業側(大手企業の中にもB to B企業や不人気業界などは、採用の苦戦が予想されるのですが)の条件はさらに厳しいものになります。
三つ目には、昨年の採用活動の反省があります。昨年は、4月1日には内々定をもらう学生が続出するなど、大手企業の採用選考活動の早期化・短期化が指摘されましたが、中堅・中小企業の選考活動もそれまでと比べるとかなり早いものでした。4月後半に採用選考のピークを持ってきた企業も多かったようです。結果的に大手企業と選考時期や選考学生がバッティングし、選考辞退や内定辞退を数多く招く結果となってしまったわけです。これらのことに鑑み、中堅・中小企業ではターゲット校設定の見直しをした企業が多かったと推測できます。ただ、中堅・中小企業におけるターゲット校は、必ずしも多くの大手企業がするように入試偏差値ランキングを基に設定されているわけではありません。地元の大学であるとか、OB/OGが多いなどの理由によるところも多いでしょう。今回、ターゲット校設定を見直した企業の多くは、大手企業のように入試偏差値ランキングをもとに大学を設定していた企業群に多かったのではないかと推測しています。

国公立大偏重主義の大手メーカー

ターゲット校にしている大学群をメーカー、非メーカー別に分けて、さらに企業規模別に見てみると、面白い傾向が見られます。
まずはメーカーと非メーカーでの全体比較です。非メーカーで最も人気があるのは「GMARCH・関関同立クラス」55%で、次いで「日東駒專・産近甲龍クラス」と私立大グループが上位を占め、3番目が「地方国公立大クラス」となります。意外にも「早慶上智クラス」はそれほど高くありません。
一方、メーカーを見ると、最も人気があるのは「地方国公立大クラス」の53%、「理系単科大クラス」40%、「中位国公立クラス」38%と続き、国公立大グループが人気となっています[図表3]。

さらに規模別に見てみると、非メーカーでは「GMARCH・関関同立クラス」の大企業での人気が突出して高いこと、「地方国公立大クラス」が大企業での人気が低いこと以外は、規模による大きな差異は見られません[図表4]。これに対してメーカーの大企業のデータを見ると、1位「旧帝大クラス」、2位「上位国公立クラス」、3位「地方国公立大クラス」、4位「中位国公立クラス」「GMARCH・関関同立クラス」と、上位を国公立大グループが独占しています[図表5]。メーカーの国立大偏重の傾向がはっきりと見て取れます。メーカーは歴史の古い企業が多く、今も旧態依然とした大学評価が脈々と受け継がれているのだと思われます。

非ターゲット校の現実は

最後に、こちらも弊社調査でしか浮かび上がってこないであろうテーマについて見てみます。ずばり「ターゲット校以外の学生に対して、どのような対応をしているのか」です。企業規模による差異は若干あるものの、傾向値としてはそれほどの開きがありませんでしたので、ここでは全体のデータで見てみます[図表6]。

「すべてを通常の選考ルートに上げている」とする企業は79%にとどまり、2割の企業は採用広報でターゲット校とそれ以外の大学と差をつけているだけでなく、選考においても差をつけているという結果になりました。しかもその差は「選考段階に上げていない」という、学生や大学関係者が知ったら驚くべき内容です。つまり、どんなに素晴らしいエントリーシートを提出したとしても、これらの企業では「見られてもいない」ということです。この2割の企業においては、「ターゲット校=採用指定校」と言い換えてもよいでしょう。
以前から就活における大学格差は指摘されていましたが、この数字を皆さんはどう感じますか?(筆者注)[図表6]のデータは、あくまでも「ターゲット校を設定している企業」における割合を示しています。“世の中の2割の企業がターゲット校以外の学生を選考に上げていない”わけではありません。ご注意ください。

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