若手社員の“仕事への不安感”をどう指導する? ネガティブ心理をポジティブに活かすための考え方とは(第7回)

どのような組織にも、「仕事が上手くできるか」との不安を抱く若手社員が少なからず存在するものである。このようにネガティブな心理状態にある社員は、どう指導をすれば自社の戦力となり得るのだろうか。今回は、ネガティブな心理状態にある若手社員の教育指導について考えてみよう。

「不安感の強さ」が仕事の成果につながることも

仕事に不安を抱く若手社員は、決して少なくない。これまでに仕事で失敗をしたことがない社員であっても、「次の仕事は上手くいくだろうか」などと不安な思いに駆られることがあるようだ。しかしながら、ビジネスパーソンが「不安感が強い」といった心の状態に陥るのは、決して悪いことではない。むしろ、仕事で良い結果を残すためには、必要な心理傾向ともいえる。

具体例で考えてみよう。若手社員が課長に「企画書の提出」を命じられたとする。このとき、不安感が強い社員の場合には、企画書の作成途中で「課長に『○○はどうなっている?』と聞かれたらどうしよう」、「『なぜ、○○なのか?』と問われたら何と答えよう」などと、次々に不安がよぎりがちだ。そのため、このような社員は上席者からのチェックに耐えられるよう、あらゆる可能性を考慮して入念に準備をした企画書を作成する傾向にある。その結果、さまざまな不安材料が払拭された、完成度の高い資料が提出されやすい。

それでは、不安感が強くない社員の場合はどうだろうか。このような社員の場合には、企画書の作成時に「課長に『○○はどうなっている?』と聞かれたらどうしよう」といった不安感を抱くケースが相対的に少なくなる。「まあ、この程度でいいだろう」などと楽観的に考えてしまい、十分に練り上げた企画書の作成が行われないことも少なくない。そのため、企画書の完成度が上がりづらく、上席者からやり直しを命じられるような事態に陥りやすいようである。

「不安感が強い状態」が対人関係を良好にする

若手社員の中には「上司や先輩と上手くやっていけるか」といった不安など、職場の対人関係に不安感を覚える者もいるであろう。人間関係についての不安感が強い社員は、多くの場合、「相手が自分のことをどう思うか」に不安を抱く傾向にある。「このような発言をしたら、課長は私のことをどう思うだろう」、「こんなことを言ったら、先輩にどう思われるだろう」などといった思いが人一倍強いのである。

ところが、このような心理状態に陥りがちな社員は、見方を変えれば「相手の心理状態に注意を払う能力」に秀でた社員だともいえる。そのため、一般的にこのような社員は慎重な言動が多く、自身の不用意な発言で相手の気分を害してしまったり、無配慮な行動で他人に迷惑をかけてしまったりという事態に陥りづらい。その結果、人間関係をこじらせるなどのトラブルを起こしにくく、対人関係の良好な職場環境が構築されやすいのである。

一方、人間関係への不安感が強くない社員は、相対的に「自分の言動が相手にどのような影響を与えるか」という点への関心が弱い傾向にある。そのため、自身の発言で相手に不快感を与えてしまうなどのトラブルも起こしやすく、結果的に就業環境の悪化を招いてしまうケースも存在している。

「ネガティブな心理状態」をポジティブに活かすための意識改革

しかし、「不安感が強い」という心理傾向を持つ若手社員が、仕事や職場に適応できなくなるケースが発生している。

例えば、企画書の作成で「課長に『○○はどうなっている?』と聞かれたらどうしよう」、「『なぜ、○○なのか?』と問われたら何と答えよう」などの思いがよぎった際、押し寄せる不安感に心が耐えられずに「私には企画書の作成なんて無理だ!」、「もうやってられない!」などと悲観的な結論に帰着してしまうのである。その結果、早期離職などの事態に陥る事例も少なくない。

このような状況を回避するためには、「『不安感が強い』という心理傾向は、ビジネスパーソンが仕事で良い結果を生むために必要な心理状態のひとつである」ということを、若手社員に明確に指導することが必要である。つまり、仕事で不安感に陥ったら、「良い仕事をするために必要な心の状態になれた」と前向きに理解して仕事に臨むことを教育するのだ。

以上のように、「不安感」などのネガティブな心理状態は、ポジティブに捉えることで大きな効用を得られるケースも存在している。従って、いまだ心が成長途上にある多くの若手社員に対しては、ネガティブな心理状態の解釈の仕方を繰り返し指導することが肝要といえよう。