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「多残業体質」から脱却する為の朝型勤務制度の取組み

〜朝型を通じた効率的な働き方改革〜

伊藤忠商事株式会社 人事・総務部 部長代行 兼 企画統轄室長
垣見 俊之 氏
モデレーター
中央大学大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール)客員教授
楠田 祐 氏

多くの企業が業務の効率化、生産性向上を目指し、様々な施策に取り組んでいます。その中でもユニークな取り組みとして注目を集めているのが、伊藤忠商事の朝型勤務です。多残業体質からの脱却、業務効率の向上、社員の健康増進などの効果が期待される朝型勤務ですが、その導入には多くの苦労がありました。この取り組みを主導した人事のリーダーが、導入のプロセスとそこで乗り越えた障害、実現するためのポイントなどについて語り、オーディエンスの質問に答えます。
【モデレーター挨拶】
 最近、朝型勤務を導入したいという相談が増えています。今日お話しいただく垣見さんは、伊藤忠で朝型勤務へのシフトを主導されているということで、話を聞きたいという要望が多数あり、忙しい日々を送られています。  私は2008年、垣見さんがグローバルHR部門に移られた頃から存じていますが、いつか2人でセッションをやりたいと思ってきました。今日は伊藤忠商事における朝型勤務の取り組みをお話しいただいた後、オーディエンスの皆さんからの質問に答えていただきます。

なぜ朝型勤務だったのか?

当社では以前から全社で残業削減キャンペーン、会議・資料の削減、全社一律フレックスタイム制度の廃止など、働き方改善に取り組んできました。しかし「ノー残業デー」などの残業削減キャンペーンは、仕事が次の日以降に持ち越されるだけというケースが多いなど、業務の効率化という面で満足な成果は得られませんでした。

 

1995年から実施してきた全社一律のフレックスタイム制度は、業務効率化どころか残業をかえって増やす結果につながったため、2012年10月に全社一律を廃止し、育児や介護といった時間に制約のある社員に対して申請ベースで個別に認める仕組みに変更したのですが、全社一律を廃止しただけでは十分な効果が生まれず、残業体質を根本から変える必要性を痛感するようになりました。

残業が減らない理由には、そもそも業務効率に対する意識が低く、残業することで充実感を感じる体質が残っていること、残業手当が生活費の一部になっていること、付き合い残業の風習があり、自分一人だけ帰りにくいことなどがあります。

これを変えていくには単なる制度の導入ではなく、社員一人ひとりの意識改革が必要です。そこで考え出されたのが、朝型勤務へのシフトを通じて社員の働き方と意識を変えていくという取り組みでした。

社員の気持に配慮した導入前・導入後の取り組み

朝型勤務制度の概要は、まず深夜勤務(22:00〜5:00)を禁止し完全消灯、20:00〜22:00は原則禁止とし、残った仕事は翌日朝勤務にシフトするというものです。欧州など時差のある地域との取引や突発的な対応のため20:00以降業務を行う場合は、上司からの事前申請・許可制としました。

さらに、翌日朝に勤務した場合は(5:00〜8:00)、深夜勤務と同様の割増賃金を支給、8:00前始業の社員には軽食の無料配布というインセンティブを設けました。また、効果を把握し、スムーズな導入につなげるため、本格導入前に半年のトライアル期間を設定しました。

当然、こうした改革には様々な拒否反応が予想されたので、障害を乗り越えるために様々な方策を考えました。導入前には社員説明会15回、並行してカンパニー毎の組織長説明会20回、入退館管理システムの構築。導入後は人事・総務部課長による各フロア巡回・追い出し、業務効率化に向けた組織毎のキャンペーン、朝型勤務へのシフトを加速させるための110運動(夜の飲み会は1次会、夜10時まで)や健康増進講演会、毎月の役員会での実績報告と経営トップからの継続的なメッセージ発信などです。

数々の反対を粘り強い説得と経営トップの決断で乗り越える

導入のスケジュールは極めてスピード感のあるものでした。
2013年5月中旬に社長から朝型シフトに向けた検討指示、7月31日に経営会議でトライアル実施決定と労働組合への提案、8月上旬に社員説明会・全組織長説明会をスタート(約1 か月間)、8月中旬に入退館管理システム開発スタート(約1ヶ月半で完成)、9月上旬に労働組合との団体交渉スタート(3回)、9月末に労使合意・確認書締結といった具合です。

 

予想どおり各所から抵抗の声が上がりました。組織長の約3割が色々な理由を付けて抵抗し、「人事・総務は現場を分かっていない」「顧客から文句が出たら誰が責任をとるのか」といった具合です。これに対しては、「トライアルとして実施するものゆえ、まずは取り組んでみてください。」という説明を繰り返し、各部署・全支店を回り、粘り強く説得を行いました。

 

入退館管理システムの開発では、システム会社から「あまりにも開発期間が短すぎて対応できない」と言われましたが、これもなんとか無理を言ってお願いしました。従来から入退館システムはあったのですが、時間管理対象者に限定されていましたから、これを全社員に広げる必要がありました。

 

労働組合にも「こんな短期間では組合員をまとめられない」と抵抗されましたが、朝型勤務がいかに社員にメリットがあるかを強調し、人事・総務から全社員に徹底的に説明することを約束し、最後は「とりあえずトライアルを行い、うまくいかなければ導入しない」ということで納得してもらいました。このトライアル期間を設定したことが、朝型勤務をスタートさせる上で大きな役割を果たしたと思います。 

レポートはまだ続きます。気になる内容の続きはダウンロードしてお楽しみください。

提供:profuture株式会社

源田 泰之 氏

伊藤忠商事株式会社
人事・総務部
部長代行 兼 企画統轄室長
垣見 俊之 氏

1990年慶応大学経済学部卒業後、伊藤忠商事入社と同時に人事部に配属。1995年10月から実務研修生として約1年半 ニューヨークに派遣。帰国後 人事考査・労務問題・職務給制度導入・組合対応等 人事制度全般を担当。2003年より、4年間伊藤忠米国会社のDirectorとして再度ニューヨークに駐在。HRデューデリや北米地域の人事戦略全般を担当すると共に経営企画も兼任。帰国後2008年4月より伊藤忠におけるグローバル人材戦略全般の構築・推進、又2011年4月からは本社のダイバーシティ推進も兼任。2012年4月より現職、人事・総務全般の戦略・企画立案を担当。

源田 泰之 氏

モデレーター
中央大学大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール)客員教授
楠田 祐 氏

中央大学大学院戦略経営研究科 客員教授 戦略的人材マネジメント研究所 代表 東証一部エレクトロニクス関連企業3社の社員を経験した後にベンチャー企業社長を 10年経験。2009年より年間500社の人事部門を6年連続訪問。人事部門の役割と 人事の人たちのキャリアについて研究。多数の企業で顧問及び 日本テレビNEWS ZERO コメンテーター、特定非営利活動法人 女性と仕事研究所 理事なども 担う。