【「Future of HR」~これからの人事はどうあるべきか~】第2回 従業員エンゲージメントをどう高めるか

近年、企業と従業員の関係を表す指標の一つ「従業員エンゲージメント」が注目されている。「従業員エンゲージメント」とは「組織の成功に貢献することに対する従業員のモチベーションの高さ」、一言でいえば「「組織と従業員の一体化レベル」のことだ。アメリカではGMやコダックといった従業員満足度が高い企業が経営破綻し、企業の指標は従業員満足度から従業員エンゲージメントへと転換しつつある。

また、時代は既に、IoT、ビッグデータ、人口知能などの新たな技術がもたらす「インダストリー4.0(第4次産業革命)」に突入した。激変する環境に対応する力を企業がもつためには、従業員との一体化をはかる従業員エンゲージメントが欠かせない。では、従業員エンゲージメントを高めるために、企業は何にどう取り組めばいいのだろうか。前回に引き続き、「従業員エンゲージメント」の実態に詳しい一橋大学商学研究科教授の守島基博氏と、現在コグニティブ・コンピューティング※を活用した人材系ソリューション「Kenexa(ケネクサ)」を担当する河野英太郎氏に伺った。

※膨大な情報の中から必要な情報を見つけ出し、解析・評価し、予測を提示することで、人間の「意思決定をサポート」するテクノロジー。IBMが開発した自然言語を理解するシステム「ワトソン(Watson)」もコグニティブ・コンピューティングを活用したものである。

morishima_prof一橋大学商学研究科教授 守島 基博
1982年慶應義塾大学大学院社会学研究科社会学専攻修士課程修了。86年に米国イリノイ大学大学院産業労使関係研究所博士課程修了、組織行動論・人的資源管理論でPh.D.を取得し、カナダ・サイモン・フレーザー大学経営学部助教授。90年慶應義塾大学総合政策学部助教授、99年同大学大学院経営管理研究科教授を経て、現在一橋大学大学院商学研究科教授。主な著書に『人材マネジメント入門』(日経文庫)『会社の元気は人事がつくる』(共著、日本経団連出版)などがある。


koono_prof日本アイ・ビー・エム株式会社 河野英太郎
1973年岐阜県生まれ。日本アイ・ビー・エム株式会社ソーシャル事業部。東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。大手広告会社、外資系コンサルティングファーム等を経験。2002年以降日本アイ・ビー・エム株式会社にて、コンサルティングサービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門リーダー、サービス営業などを歴任し、現在コグニティブ技術を活用した人材系ソリューションKenexa(ケネクサ)の日本展開担当。著書に累計108万部を突破した『99%の人がしていない たった1%の仕事のコツ』『(同)リーダーのコツ』(以上ディスカヴァー)、監修書に『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』(翔泳社)がある。

従業員のエンゲージメントで重要なのは定点観測と自社のポジショニング

河野 今回のテーマは従業員のエンゲージメントということで、まず私の方から、よく聞くお客様の声をシェアさせて頂きます。まず多いのは、「もうES(Employee Satisfaction=従業員満足度)はやっている」という声です。そこでお話するのは、エンゲージメントとESは違うということです。エンゲージメントは価値観や方向性の一致であり、会社がその人を雇っていること、その人が会社で仕事をすることに、相互に意義を見出しているということなのです。

守島 私は、働く人から見ると、エンゲージメントは3つの要素から構成されていると考えます。1つはベースとなる従業員満足度。2つ目はこの会社は自分に合っている、それも会社の価値観や大切にするものが自分のそれとあっているということ。3番目は仕事にやりがいを見出していることです。この3つをどうやってつくっていくかが会社にとって重要です。会社視点では、会社の価値観や方針に賛同する人だけに残って欲しい、わが社が提供する仕事に積極的に関与してくれる人が重要だ、というメッセージを伝える意味もエンゲージメントにはあると思っています。

河野 自社の方針がきちんとあって、それを発信できることが重要だということですね。
守島 どんな企業にもビジョンや理念と、その具現化としての仕事のやり方や職務行動、その2つがあるのです。従業員目線で言えば、前者は頭でわかっている会社の理想、後者はそれが自分の日常の仕事や職務行動にどうかかわってくるかの理解だといってもよいでしょう。日本で問題なのはそれが分離していること。そのリンクを人事がどう付けてあげるかが重要で、「実はこの社是はこういう意味なので、あなたの仕事では、こういう風に読み替えて下さい」というサポートが大切だと思います。つまり、会社への理念やビジョンを、一人ひとりの仕事の内容として理解するための手助けです。

河野 加えて、ESやエンゲージメントを調査しても、やりっぱなしになってしまいがちな点も課題です。3年前とか4年前にやったけれども、その結果をあまり役立てることができず、次の投資に踏み切れないお客様が大勢います。

守島 単発的にやってしまうんですね。ES調査などは、本当はどこかに絶対値があるわけではなく、その会社の状態を知るために継続的にやらないといけないのですが、多くの企業が一回きりだったり、数年に一回行って数値を見て一喜一憂している。重要なのは・・・

hr_tokushu_photo_1022_4_T291NP

このあと、エンゲージメントの効果的な活用方法、自然言語を理解するワトソンが人間の意思決定をサポートする、などお話はまだまだ続きます。