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ティール組織とは?企業事例や組織モデル、運営方法を解説

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2010年代以降の急激な社会情勢の変化を背景に、組織モデルのあり方にも変化が求められています。そのような中で近年注目を集めているのが「ティール組織」です。ティール組織は組織マネジメントの常識を覆す手法として脚光を浴びているものの、新たなマネジメントのあり方を示す斬新なアプローチであるために、ビジネスパーソンにおいてもまだ深く理解できていないという方は多いでしょう。

この記事では、ティール組織とは具体的にどのようなものなのか、企業事例や組織モデル、運営方法についてわかりやすく解説します。

目次

ティール組織とは

ティール組織とは、組織に所属するメンバーそれぞれが意思決定権を持っている自律分散型の組織形態をいいます。組織コンサルタントのフレデリック・ラルー氏が提唱した新しい組織モデルであり、著書『Reinventing Organizations』の中で紹介されました。日本では2018年に『ティール組織』というタイトルで出版され、これまでになかった新しいマネジメントを提示するものとして大きな話題を呼びました。

ティール組織の「ティール(Teal)」とは「青緑色」の一種を表す英単語です。しかし、これは単純に色を意味しているわけではなく、組織のあり方の最も発展した形を象徴する色として「ティール=青緑色」が用いられています。ティール組織は5つの段階を経て形成されるものであり、その最上位が「ティール」となっています。

用語解説「ティール組織」❘ 組織・人材開発のHRインスティテュート

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5つの組織モデル

ティール組織は5段階の組織モデルで構成されています。Teal(ティール)を最上位として、Red(レッド)を始点に段階的・発展的に組織が進化していきます。

ここでは、それぞれの組織モデルについて解説します。

①Red(レッド)組織

レッド組織の特徴は、組織運営が個人の力に依存していることです。特定の個人の力に従属し、リーダーへの依存から安心感を得ている状態で「オオカミの群れ」とも比喩されます。

問題点としては、特定のリーダーの力に依存する組織であるために、再現性がないことが挙げられます。あくまでも個人の欲求の追求を目指すものであり、戦争など混乱状態への対応力は高いものの、安定した環境下では力を発揮しにくい組織形態といえます。

②Amber(アンバー/琥珀)組織

アンバー組織の特徴は、個々に与えられた役割を忠実にこなすことです。上意下達によるトップダウンを基本とし、組織内の規範の遵守が求められる組織形態です。下の階層は上からの命令に従わなければならず、その様子から「軍隊」とも比喩されます。

レッド組織と比較すると特定の個人への依存が減少し「組織としての運営」という側面が強くなることで安定的な運営が可能です。一方で、規律を遵守する組織であるがゆえに状況変化が起きても柔軟に対応できず、ヒエラルキーが最優先されてしまうことは問題点といえるでしょう。

③Orange(オレンジ)組織

オレンジ組織の特徴は、ピラミッド型の階層構造でありながら、成果や実績に応じて昇進できる実力主義をとることです。「機械」と比喩される組織構造で、日本の企業の多くがオレンジ組織に当てはまります。ヒエラルキー構造は残るものの、アンバー組織のような厳格さはなく、環境の変化にも柔軟に対応できます。

しかし、変化する環境のなかで常に競争が最優先されるため、機械のように働き続けなければならず、メンバーが疲弊してしまうという問題点があります。組織の歯車として働くことが求められ、結果的に「人間らしさ」の喪失につながってしまいます。

④Green(グリーン)組織

グリーン組織の特徴は、組織内の個人が主体性を発揮でき、個々の多様性が尊重されることです。メンバーに対する権限委譲がある程度進んでおり、意思決定の大半は現場の社員がおこないます。下意上達のボトムアップで運営がなされ「家族」とも比喩されます。

オレンジ組織と比較すると、組織のメンバーが機械のように働き続けるのではなく「本来の自分」や「自分らしさ」を表現でき、主体性を発揮しやすい組織といえます。一方で、ヒエラルキーはオレンジ組織と同様に残存しており、決定権限の多くは経営者が握っています。

⑤Teal(ティール)組織

ティール組織の特徴は、組織はそれを構成するメンバー全員のものであるという共通意識のもと、組織の目的達成のために全員が自律的に行動することです。上司が業務を指示・管理するような指揮命令系統がなく、メンバーそれぞれが信頼関係を持って業務をおこないます。すべての社員が意思決定権を持っており「生命体」と比喩される組織形態です。

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ホラクラシー経営とは?

ホラクラシー経営はティール組織の一形態であり、アメリカの企業家であるブライアン・J・ロバートソン氏が2017年に提唱した概念です。経営上の意思決定権を組織全体に分散させる経営手法のことで、スピード感のある意思決定が可能となり、社員のやりがいや主体性の向上に期待が持てます。

階層が存在しないホラクラシー経営では、ロール(役割)とサークル(チーム)が重要な概念となります。ロールとは事業に必要な役割のことで、サークルとは細かなロールをまとめた「上位のロール」を意味するものです。組織を構成する全員が意思決定を担うため、決定プロセスにおいては上司の承認を得るのではなく、ロール(役割)を担うメンバーが意思決定をおこないます。

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ティール組織の運営方法

ティール組織を十分に機能させるためには「自主経営」「全体性」「存在目的」という3つの要素を重視する必要があります。

①自主経営(セルフマネジメント)

自主経営(セルフマネジメント)とは、社員を自主的に動かすための仕組みや工夫のことです。ティール組織には上意下達による指揮命令系統がなく、指示が与えられないなかでも社員各々が業務を進める工夫が必要となります。

階層のないティール組織では、メンバー全員がフラットな立ち位置で意思決定をおこないます。それぞれに大きな裁量を付与することになるため、情報の透明化や意思決定のプロセスに関する権限委譲、人事プロセスの明確化などの仕組みが必要となるでしょう。

②全体性(ホールネス)

ホールネス(全体性)とは、心理的安全性の高い環境のもとで、それぞれが持つ多様な価値観や個性を互いに認め合うことを指します。

ティール組織はフラットな関係を基本とし、社員にはさまざまな役割を担うチャンスが与えられます。企業としては、社員が仕事に対して自律的・主体的に動けるよう、心理的安全性の高い環境を確保する必要があります。一人ひとりが恐れや不安を感じずにアイデアを出せる、またそれぞれの多様性を受け入れられる組織をつくることが重要です。

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③ 存在目的 (エボリューショナリーパーパス)

ティール組織においては、組織を一つの生命体と捉え、組織が存在する目的を社員全員が共有します。固定化された目的を追求する従来型の組織とは異なり、ティール組織では組織の存在目的を継続的に問いかけるため、その目的は組織の成長とともに進化し流動的になります。

社員は流動的な目標、つまり組織の存在意義を常に自分に問いかけ、状況に合わせて臨機応変に対応することが求められています。

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ティール組織を取り入れている企業事例

ティール組織を取り入れている企業の事例を3社ご紹介します。

事例①:Zappos(ザッポス)

靴の通販を扱うアメリカの会社「ザッポス」では、ピラミッド型の組織構造はとらず、役割ごとに500のチームを設けて業務をおこなっています。

同社ではティール組織の根幹ともいえる「Zappos 10 Core Values」を定め、たとえば返品は何回でも可能、翌日配送、24時間365日の顧客対応などのサービスを実現しています。売上高は2001年から右肩上がりの成長を続けており、2008年に10億ドル(約1,100億円)を達成しました。その後、Amazonが12億ドル(約1,300億円)で買収しています。

事例②:Buurtzorg(ビュートゾルフ)

オランダの非営利住宅ケア組織「ビュードゾルフ」では、持続可能なコミュニティケアモデルを掲げ、地域密着の小規模運営をおこなっています。オランダにおける「在宅ケア」の約60%を占めるまでに成長し、スタッフ満足度と利用者満足度は国内でトップを誇ります。

同組織ではフラットな組織体制を導入しており、マネージャーなどの管理職は存在しません。看護師各々が自分の専門性を発揮し、すべてのプロセスに責任を持ちます。こうしたマネジメントスタイルを支えるのが「Buurtzorg Web」と呼ばれるITツールで、自分の仕事内容や勤務時間、提供するケアの説明や質などが可視化できるようになっています。

事例③:GCストーリー株式会社

国内で屋外広告物の施工をおこなうGCストーリーでは、2018年にマネージャー職を撤廃し、自律型の組織運営に取り組み始めました。

同社で重要視しているのは、業務をおこなう際は社員自ら主体性を持ち、上からの指示を待つのではなく自分で考えて行動することです。内発的動機を重視したフラットな組織づくりに取り組んだ結果、2019年には「ホワイト企業大賞」(ホワイト企業大賞企画委員会により「社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にしている企業」へ贈られる賞)を受賞するなど、その実績が認められています。

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まとめ

ティール組織とは、自社の「存在目的」を基軸とし、組織を構成するメンバーそれぞれが意思決定権を持つ組織形態をいいます。レッド・アンバー・オレンジ・グリーンの組織形態を経て進化した最上位が「ティール」で、現場の社員が意思決定をおこなえるフラットな組織であることが特徴です。

日本企業の多くはメンバーシップ型の組織であり、5つの組織モデルのなかでは「オレンジ組織」にあたります。個々の実績は評価されるものの、常に成果を追求しなければならず、過剰な労働により「人間らしさ」が失われることが懸念されてきました。

従来型の組織マネジメントに慣れ親しんでいると、フラットな組織形態への変換は一見無謀な取り組みのように思えるかもしれません。しかし、変化の大きい時代だからこそ、組織の抜本的な変革が求められています。目指すべき方向性として、ティール組織は一つの到達した組織形態といえるでしょう。

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