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サステナビリティとは?意味や企業経営における重要性を解説

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いまやビジネスシーンだけではなく、日常生活でも耳にすることが増えた「サステナビリティ」。環境や経済、社会における「持続可能性」を指す言葉ですが、なぜこんなに多くのメディアで取り上げられているのか、なぜ取り組む企業が増えているのか疑問を持っている方もいるでしょう。

この記事では、サステナビリティの意味や広まった背景、企業経営におけるサステナビリティの重要性についてわかりやすく解説します。

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今、企業・組織においても求められているサスティナビリティのマインド。持続可能なマインドを醸成することで、長期の成長を可能にしていく事ができます。チームメンバーが自分自身や会社に求めるバリュー・働きかたについて、チームディスカッションを通じて再確認し、チームの受容性を高めていきます。

目次

サステナビリティの意味

サステナビリティ(sustainability)とは、日本語で「持続可能性」を意味する言葉です。環境や経済、社会などの観点から、地球上に存在しているすべてのものが多様性と生産性を失うことなく、将来にわたってその機能を継続することができるという概念を指します。

SDGsとの違い

似たような意味で捉えられやすい言葉に「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」があります。SDGsは2015年の国連サミットにおいて、持続可能な世界の実現に向けて加盟国193カ国の全会一致で採択された国際的な目標です。

サステナビリティは、社会・環境の持続可能性と生産性との両立を実現していくという概念であり、SDGsはサステナビリティ実現のために、世界の国々がどのように活動すべきかを具体化したものです。17の目標と169のターゲットが示されています。

SDGsは非常に野心的な目標であったこともあり、2024年時点で加盟国169のターゲットの達成率は15%と低調な進捗ですが、日本は「2023年の世界SDGs達成度ランキング」で第21位と、比較的取り組みが進んでいるといえます。

用語解説「SDGs」❘ 組織・人材開発のHRインスティテュート

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サステナビリティとCSRの違い

CSRもサステナビリティと混同されやすい用語です。Corporate Social Responsibilityの略語であり、直訳すると「企業の社会的責任」という意味です。こちらは1950~1960年代に、米国で社会運動や環境保護運動とともに登場した概念です。

企業は経済的な成功を目指すだけでなく、社会的な影響や環境にも責任を持つべきという考え方であり、雇用創出・情報開示・従業員への配慮・慈善活動などが提唱されています。

両者は共通点も多いのですが、CSRは企業の責任について提唱されている概念です。サステナビリティは、世界各国の政府や企業、個人がともに目指すべき概念である点が違います。

サステナビリティとESGの違い

ESGとはEnvironment(環境)・Society(社会)・Governance(統治)を考慮した経営や投資を指します。

もともと投資の世界から生まれた用語です。2006年に、国際連合事務総長のコフィー・アナン氏が機関投資家にESGの観点を持つことを提唱したことを契機に、投資のガイドラインとして広まりました。

投資家が投資判断をするときに、キャッシュフローや利益率などの財務情報だけでなく、ESGへの取り組みを考慮して投資を判断することを「ESG投資」と呼びます。また、企業が環境、社会、ガバナンスというESGの3要素を重視しておこなう経営を「ESG経営」と呼びます。

サステナビリティが広まった背景

SDGsの採択

世界にサスティナビリティを浸透させるきっかけとなったのは、前述の2015年の国連サミットにおける「SDGs」の採択です。2030年までに達成すべき具体的な目標として17の目標と169のターゲットが示されたことで、影響力のある著名人・大企業が環境負荷の削減や格差の解消に取り組むようになりました。

CSRの浸透

また、企業が社会的責任を担い、社員や消費者、投資家などのステークホルダーに対して適切な意思決定をおこなうべきであると考える「CSR」の概念が重要視されてきていたことも、ビジネスや企業経営におけるサステナビリティの浸透を加速させたといえるでしょう。

企業が果たすべき責任は法令遵守のみならず、労働面における人権の尊重や環境への配慮、社会貢献など多岐にわたります。CSRとサステナビリティとの結びつきは強く、CSRに基づく企業の社会的な活動をまとめた報告書「サステナビリティレポート」が海外では1990年代、日本では2000年代から発行されるようになりました。

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サステナビリティを構成する3つの「E」

サステナビリティの概念を理解するためには、サステナビリティの柱である3つの「E」について知っておく必要があります。

環境(Environment)

気候変動や海面上昇などさまざまな環境問題が深刻化するなか、環境保護は地球の持続可能性を高めるうえで世界全体の緊急課題となっています。

日本でも近年は平均気温が上昇し、夏場は関東地区でも40度近い温度になることも珍しくないなど、異常な事態が起きています。熱中症をはじめとする人体への影響や生態系への影響も懸念されます。

国連の公式サイトによると、自然は過去 50 年の歴史上のどの時期よりも広範囲に減少し、種は自然絶滅率の1,000倍のペースで絶滅しています。もし、健全な生態系がもたらす恩恵がなくなれば、2030 年までに世界の国内総生産が年間 2 兆 7,000 億ドル減少する可能性があるという指摘もされています。

化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトや、生物多様性に与える負荷の軽減や温室効果ガスの抑制など、環境分野において取り組むべき重要な課題は多いといえます。

公平性(Equity)

貧困や人権、ジェンダーによる格差をなくし、公平性を維持することもサスティナビリティの一つであり、これらの不平等は個人に起因するのではなく、社会の構造から生まれるものです。特に近年は、新型コロナウイルスの感染拡大によって社会的弱者や貧困層への深刻な影響が浮き彫りになったことから、世界中のあらゆるシステムを見直し改革する「グレート・リセット」の必要性が高まっています。

経済(Economy)

経済は人の生活を維持するうえで必要なものであり、環境や公平性を守りながら成長できる経済のあり方が求められています。環境汚染と引き換えに急激な経済成長を進めてきた時代においては、環境や社会への配慮と経済的リターンは相反するものと考えられてきました。

しかし近年は、さまざまな環境課題・社会課題を解決したうえで、長期的な収益性を実現することができるという考えが主流になりつつあります。具体的には、環境への影響を最小限に抑えつつ、社会的な課題にも対処し、経済的な繁栄を実現するための戦略や方針が含まれます。

取り組みの例としては、照明のLED化によりエネルギー効率をよくする・太陽光発電や風力発電、地熱エネルギーなどの再生可能エネルギーを導入する・廃棄物を減らす・リサイクルできる原材料を活用する・包装を簡易にするなどの活動があります。

また、企業が環境問題や社会課題の解決につながる商品・サービスを新しく開発することも推奨される取り組みです。こちらの例としては、植物性代用肉の開発や自然に返る素材を活用した商品開発などがすでにおこなわれています。

企業経営におけるサステナビリティの重要性

近年では、環境保全や社会問題の解決、持続可能な開発を企業が考える「サステナブル経営」が注目されるなど、企業経営においてもサステナビリティの重要性が高まっています。

企業がサステナビリティを重要視する理由には以下が挙げられます。

長期的な企業活動の実現に有効

企業が長期的に活動していくためには、自社の利益だけを追求するのではなく、個人や社会に還元し、企業に関わる広い範囲で豊かさを実現していく必要があります。サステナビリティで環境保全や格差解消、社会課題の解決に取り組むことは、企業活動を長期化させるための有効な施策となるのです。

また、近年は「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の3要素を考慮したESG投資や、SDGsへの取り組みを評価する個人投資家が増えています。企業を取り巻くステークホルダーからの信頼を高めるためにも、サステナビリティへの取り組みは欠かせないものとなっています。

ビジネスチャンスや人材確保につながる

企業が環境保全や格差解消に取り組むことは、企業価値やエンゲージメントの向上に大きく寄与し、ビジネスチャンスや人材の確保につながります。

サステナビリティへの取り組みにより、環境・公平性・経済に貢献するプロダクトや技術を開発・提供できれば、それは新たなビジネスチャンスとなるでしょう。また、SDGsやエシカル消費(人・社会・環境に配慮した消費行動)に関心を持つZ世代・ミレニアル世代の採用において有利に働いたり、企業に対する社員の愛着心を高めたりすることもできます。

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企業がサステナビリティを実践するメリット

企業がサステナビリティを実践するメリットを具体的に解説します。

企業の社会的信頼の維持

近年は、サステナビリティに注目する人たちがかなり増えています。サステナビリティへの取り組みが企業イメージや企業ブランドの向上につながるという段階から、サステナビリティへの取り組みがおこなわれていない企業は、マイナスイメージを持たれかねない段階に社会の認知が進んできたといえるでしょう。

サステナビリティへの取り組みが実践されていなければ、大手企業であっても社会的信頼を得られなくなる可能性があります。逆に、サステナビリティに真摯に取り組む企業は、中小企業であっても顧客や取引先、消費者などのステークホルダーから社会的な信頼を得られ、企業価値の向上や業績アップにつながる可能性が高くなるでしょう。

従業員エンゲージメントの向上

従業員は、勤め先が社会から評価されている企業であれば誇らしくなります。また、企業が職場環境や従業員の人権、海外のサプライチェーンの末端で働く人たちまで配慮する経営を進めていれば、信頼感や安心感を持つことができるでしょう。

社会的弱者に対するサポートを提供したり、サステナビリティの実現に向けた優れた商品・サービスを開発したりする企業であれば、自分の仕事も間接的に社会に貢献していると実感しやすくなり、仕事や組織へのエンゲージメントが高まると考えられます。

資金調達の容易化

近年は、日本の金融機関も投融資の際にサステナビリティへの取り組みを判断基準にするケースが増加しています。2021年の帝国データバンクの調査では「SDGsへ積極的な企業」への金融機関からの積極的な融資姿勢が、29.9%と約3割近くになっています。

サステナビリティは世界的な潮流なので、資金調達面で今後ますます重視されていくでしょう。サステナビリティへ取り組むほど企業は資金調達が容易になり、環境や社会に配慮した商品・サービスの開発や社会活動にリソースを投下でき、それがまた資金調達を容易にするというよいサイクルになることが期待できます。

優秀な人材の確保

ミレニアル世代やZ世代は、ネットを通じて世界の環境問題や格差の問題などの情報に詳しく、社会問題に関心が高い傾向があります。Z世代については、SDGsネイティブと表現されるほどです。

2022年の株式会社IDEATECHの調査では「企業のSDGsへの取り組みが企業選びに影響した」と答えた2023年卒業予定の学生は約9割にも上りました。また、就職情報サービス会社の学情が、2025年卒業予定の学生を対象に調査した結果「SDGs」の認知率は98.5%と、100%に近い数値になっています。

サステナビリティに取り組むことは、優秀な人材確保のためにも重要です。

日本企業によるサスティナビリティの取り組み事例

日本でもサステナビリティへ積極的に取り組む企業が増加しています。以下に5社の事例を紹介します。

株式会社 ファーストリテイリング

サステナビリティの取り組みのなかでも、近年特に注目されているのが「責任ある原材料調達」です。途上国の自然環境への配慮や児童労働や強制労働問題など人権への配慮について、社会は注目しています。

この点、ファーストリテイリング社は、サプライチェーン全体に責任を持つために、いち早く原材料調達から生産、消費、廃棄までの履歴追跡を可能にする「トレーサビリティ」の確保を進めてきました。

また「People(人)」「Planet(地球環境)」「Community(地域社会)」という3つのテーマで多様な取り組みを展開しています。2024年1月の能登半島地震の被災地に衣料を10万着提供したことは記憶に新しいですが、それまでも世界各国の難民や被災者を支援してきました。

その他、不要になった製品をリサイクルやリユースする取り組みを積極的に進めるなど、「服」を通じたサステナビリティを展開しています。

楽天グループ株式会社

楽天グループは「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」という企業理念のもと、サステナビリティ活動の重点分野に「従業員と共に成長」「持続可能なプラットフォームとサービスの提供」「グローバルな課題への取り組み」の3つと事業基盤を特定して、活動を推進してきました。

一例をあげると、サステナビリティに基づいて作られた商品を選びやすくした「EARTH MALL with Rakuten」を展開しています。また、2021年時点で、事業活動で使用する電力について、再生可能エネルギー導入率100%をすでに達成しています。

日産自動車株式会社

日産自動車では、2018年にサステナビリティ戦略「NissanSustainability2022」を公表し、グローバルに取り組みを進めてきました。

2022年度までの目標である、新車からの排出量40%削減については、41.2%削減を実現して目標を達成しました。企業活動全体からCO2排出を30%削減するという目標に対しても、2022年度は27.7%まで削減するなど着実に成果を上げています。

現在も「ゼロ・エミッション」「ゼロ・フェイタリティ」社会の実現を目標に、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラル実現を目指して活動を推進しています。

株式会社大林組

建設会社の大林組は、地球・社会・人のサステナビリティの実現のための中長期的なビジョンとして「Obayashi Sustainability Vision2050(OSV2050)」を打ち出しています。

脱炭素に向けた取り組みとして、事業活動で排出するCO2削減だけでなく、ZEB建築の推進などを通して、顧客に提供する建築物の運用時に排出されるCO2削減を実現するなど、建設会社ならではの取り組みを実践しています。

また、農業ビジネスへ参入し、カーボンニュートラル実現に向けた再生可能エネルギー事業の推進ほか、サステナビリティ関連の新規事業も目立ちます。

エーザイ株式会社

製薬会社のエーザイは、パーパスであるヒューマン・ヘルスケア理念を実現するために、サステナビリティに関しての取り組みを進めています。

具体的には、2040年に向けてカーボンニュートラルを実現すると宣言。水の効率的利用、資源の循環利用などの取り組みを進めています。また、医療アクセス向上に向けた取り組み、くすり博物館の運営や奨学金を提供する財団の設立、環境負荷低減に向けて他の大手製薬会社と包装分野で連携するなど、多様な取り組みを実施しています。

エーザイは、カナダの出版社コーポレートナイツ社の「2023年 世界で最も持続可能な100社」において、グローバル製薬企業で最上位の53位にランクされました。

関連記事:【実例で学ぶ】SDGsで求められる多様性(ダイバーシティ)とは?企業が取り組むダイバーシティの実現

まとめ

環境・経済・社会の持続可能性を実現するサスティナビリティへの取り組みは、SDGsの採択やCSRの浸透によりさらなる広がりを見せています。今後、サスティナブル経営をおこなっていることを取引条件とする企業が出てくる可能性もあり、自社の長期的な企業活動を考えるうえで、サスティナビリティは避けては通れないものとなっています。

「企業として社会的責任を果たせているか」「自社の技術や販路を活かして解決できる社会課題はないか」などの観点から、自社でできるサスティナビリティへの取り組みを考えてみてはいかがでしょうか。

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