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企業のSDGs取り組み8選!メリットや方法も解説

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2015年9月の国連サミットにて全会一致で採択された、世界が解決すべき国際目標である「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」。近年はさまざまな場面でSDGsという言葉を耳にするようになり、企業評価の指標として社会的に浸透しつつある。しかし、実際にはその取り組みをどう進めていくかを課題に挙げる企業も多いようです。

この記事では、SDGs達成に向けた活動の重要性と、それに取り組むメリット、企業の取り組み事例と成功のポイントについてご紹介します。

用語解説「SDGs」❘ 組織・人材開発のHRインスティテュート

目次

SDGsとは?

SDGsとは、持続可能な社会のために、すべての国連加盟国を対象に採択された2016年~2030年までの15年間に達成すべき共通目標のことです。

SDGsは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において採択され、貧困や格差、気候変動、技術革新など、世界共通のあらゆる社会・経済問題を解決するために、2030年までを期限とした「17の目標」を指します。「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、この17の目標とそれに関連する「169のターゲット」から構成されており、同年11月に採択された気候変動への取り組み「パリ協定」と並び世界中の企業の指針となっています。

SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)は、発展途上国の課題解決に重点を置いていました。しかし、SDGsは先進国の課題解決も含んだ目標であり、世界全体の共通目標という意義を持っています。また、MDGsは国連や政府を対象としていましたが、SDGsは企業や個人の行動も対象となります。

関連記事:SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」においての企業の取り組み

17の目標とは?

SDGsの「17の目標」には「社会」「経済」「環境」の3分野と、それぞれの分野において横断的に関わる枠組みの目標があります。1~6が「社会」、7~12が「経済」、13~15が「環境」の分野、16~17が3分野と横断的に関わる目標です。

内容分野
1 貧困をなくそう社会
2飢餓をゼロに社会
3すべての人に健康と福祉を社会
4質の高い教育をみんなに社会
5ジェンダー平等を実現しよう社会
6安全な水とトイレを世界中に社会
7エネルギーをみんなに そしてクリーンに経済
8働きがいも経済成長も経済
9産業と技術革新の基盤をつくろう経済
10人や国の不平等をなくそう経済
11住み続けられるまちづくりを経済
12つくる責任 つかう責任経済
13気候変動に具体的な対策を環境
14海の豊かさを守ろう環境
15陸の豊かさも守ろう環境
16平和と公正をすべての人に横断的に関わる枠組み
17パートナーシップで目標を達成しよう横断的に関わる枠組み
(参照サイト:国際連合広報センター

169のターゲットとは?

17の目標の下位目標とも呼ばれるのが「169のターゲット」です。具体的な取り組み内容が示されています。

例えば「目標1:貧困をなくそう」のターゲットとしては「2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。」「2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、 すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。」などの7つのターゲットが提示されています。

SDGsを軽視するリスク

欧米のグローバル企業はリーマンショック以降、CSR(企業の社会的責任)に力を入れ、サステナビリティ経営を強化しました。目的は営利追及をあまりに追い求めてきたことで失った社会的信頼を回復することにあります。

今の社会で企業が社会的責任を軽視していると見なされると、投資家から注目されず、調達先の選定から外れ、消費者から評価されなくなり、社員のエンゲージメントが低下し、社会課題を見誤り新規ビジネスチャンスを逸失する危険性が高まります。

SDGsに取り組むことで、これらのリスクを回避できます。

関連記事:SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」女性活躍を推進する企業の取り組み
関連記事:SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」誰もが働きがいを持てる企業の取り組み
関連記事:SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」~多様な働き方を実現する企業の取り組み

企業によるSDGsへの取り組みの現状

日本企業のSDGsの取り組みについて、2021年に帝国データバンクが実施した「SDGsに関する企業の意識調査(2021年)」では、SDGsに対して積極的な企業は半数以下の39.7%でした。

ところが、2022年の同じ調査によるとSDGsについて「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は 23.6%と前年比で9.3%増加。「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」企業も 28.6%と3.2%増加しました。

すでにSDGsに前向きな企業は52.2%となり、過半数以上の企業が積極的になっています。

参照ページ:
SDGs に関する企業の意識調査(2021 年)|帝国データバンク(PDF)
SDGs に関する企業の意識調査(2022 年)|帝国データバンク(PDF)

企業がSDGsに取り組むメリット

企業がSDGsに取り組むメリットには以下があります。

①企業の長期的な存続

SDGsに取り組むことで企業価値が向上し、事業の持続可能性が高まり、結果として企業の長期的な存続につながります。SDGsと聞くと社会貢献のイメージが強く、売り上げにつながらないと感じるかもしれません。

しかし、17の目標やターゲットを見るとわかるように、SDGsは顧客、社員、地域社会、投資家などすべてのステークホルダーに配慮することや、よりよい社会のための技術革新を奨励する内容です。長期的に考えればSDGsへの取り組みは企業の存続につながり、利益をもたらすでしょう。

②企業イメージの向上

企業は社会的責任(CSR)を意識して行動すべきという風潮が高まっています。このため、SDGsへの取り組みは企業イメージを左右します。

企業イメージが向上すると人材を集めやすくなるので、採用活動で母集団形成が容易となり優秀な人材の確保につながるでしょう。市場においても、環境にやさしく働く人たちの人権にも配慮している企業と認識されることで、商品のブランド力がアップします。

③新規のビジネスチャンスの創出

SDGsの17の目標は、世界各国が直面している課題、つまり多くの人たちに求められている新たなニーズでもあります。これを解決しようとする試みは、そのまま新規のビジネスの機会創出につながります。

市場は大きくかつ多様なので、大企業だけでなく中小企業にとってもビジネスチャンスは豊富にあるでしょう。近年はESG投資が拡大しており、SDGsに前向きな企業への投資が集まりやすいため、新規ビジネスを展開しやすい環境も整ってきています。

関連記事:【実例で学ぶ】SDGsで求められる多様性(ダイバーシティ)とは?企業が取り組むダイバーシティの実現

 企業がSDGsに取り組む方法

企業がSDGsに取り組むにあたって、そのステップを示す「SDGコンパス」という行動指針があります。以下のように企業が取り組む5つのステップを提示しています。

ステップ①:SDGsへの理解

社内でSDGsの17の目標と169のターゲットへの理解を深めます。あわせて「自社でSDGs を有利に活用できるか」「SDGs がどれほど従来の企業責任の上に成り立っているのか」についても理解を進めていきます。

ステップ②:優先課題の決定

17の目標に関して、自社が抱える問題を考慮しつつ、優先的に取り組むべき目標を定めます。ここでは、自社の特性や業種・業態を考えて貢献しやすい目標を選びましょう。これまでのCSR活動などで、すでに取り組みを進めている領域にも目を向けて、SDGsと紐づけていくと方向性が見出しやすいでしょう。

ステップ③:目標の設定

目標達成に向けた具体的なKPIを設定します。そして、具体的に設定したらその内容を社外に公開することが大切です。目標を公開することで本気度が伝わり、社内の取り組みもより真剣になります。

ステップ④:経営への統合

設定した課題や目標を自社のビジネスモデルに組み込みます。その際は、目標および取り組むべき根拠や価値について会社全体で共有し、理解を得ます。SDGsへの取り組みは一部のチームだけでなく経営者を筆頭に、法務、人事、製品企画、営業、販売、調達ほかすべての部署の社員に何らかの関わりがあります。

ステップ⑤:報告とコミュニケーション

実際の取り組みの進捗確認をおこない、社内外のステークホルダーと共有します。このような途中経過の情報共有がステークホルダーとの信頼関係につながります。改善ポイントを確認して、修正をおこない、PDCAサイクルを回すことで順次、取り組みを改善していきましょう。

詳細について「SDGs の企業行動指針(PDF)」もあわせてご覧ください。

SDGsの取り組みで評価される企業

2015年の国連サミットにおいて、先進国を含めた国際社会の「開発目標」として採択されたSDGs。貧困や格差、気候変動、技術革新など、世界共通のあらゆる社会・経済問題を解決するために、2030年までを期限とした「17の目標」とそれに関連する「169のターゲット」から構成されています。

すべての国、すべての人が誰一人として取り残されず、個々の権利が尊重されるような社会を目指すために、日本でも多くの企業がSDGsへの取り組みを進めている状況です。社会や環境の課題を解決するにはどのような活動をおこなうべきか、企業が主体的にSDGsと向き合い取り組みを実践することで、さまざまなステークホルダーからの信頼を獲得し企業価値の向上につなげられます。

SDGsの取り組みや責任を果たす姿勢そのものが顧客や投資家、社会に大きな影響を与えることを踏まえ、企業は「自社がビジネスを通して貢献できること」や「社会課題の解決に向けて進めている取り組み」などを積極的に公表していくことが重要です。SDGsの活動に対する評価が高まれば、企業の持続的な成長にも期待が持てるでしょう。

企業のSDGsへの取り組み8選

企業価値やブランドイメージの向上、自社サービスの付加価値や新たなビジネスチャンスの創出にも欠かせないSDGsへの取り組み。ここからはSDGsの目標ごとに、ステークホルダーから高く評価されている企業の取り組み事例や成功のポイントをご紹介します。

SDGsの取り組み企業事例/目標3「すべての人に健康と福祉を」

関連記事:SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」においての企業の取り組み

○ローソン
ローソンでは「健康で長寿な暮らし」をサポートするために、自社の社員やその家族に対する健康相談・メンタルヘルスカウンセリングを実施しています。店舗で働くクルーやFC加盟店のオーナーにも健康サポートを提供し、心身ともによい状態で就労・生活できるよう健康維持の向上に努めています。

また、全社員がリモートでも参加できるスポーツ大会を開催したり「新幹線ウォーキング」と名付けられたイベントで歩数を競い合ったりするなど、ユニークな健康経営の施策にも企業として積極的に取り組んでいます。

その活動は高く評価され、経済産業省が創設した「健康経営優良法人2022(ホワイト500)」にも6年連続で認定されました。社内外すべての人の健康と福祉にアプローチするために、経営層が主導しながらSDGsの取り組みを進めていることがポイントです。

LAWSON SDGs HANDBOOK 2022

○ユニクロ
ユニクロでは「服のチカラ」で世界をよりよい方向へ変えていくという理念のもと、原材料をつくるために農家で働く人や、生地加工・縫製のために工場で働く人などのやりがいや働きがいを大切に、人権や労働環境への配慮を徹底しています。

具体的には、服づくりに携わっているすべての人が安心して健康に働ける環境を整備し、その権利を尊重していくための具体的な行動規範を定めました。自社のみならず、生産パートナーである取引先工場の労働環境や人権の尊重も「遵守すべき基本事項」に規定していることがポイントです。

また、第三者機関で適切な監査をおこなったり、取引先の工場で働く人が自社に直接相談できるホットラインを設置したりするなど、企業に関わるすべての人の労働環境改善に努め、モニタリングや支援を強化しています。

商品開発では、製造過程での水の使用料を最大99%カットする「BLUE CYCLE JEANS(ブルーサイクルジーンズ)」など、環境負荷を軽減する、よりサステナブルな商品を作る取り組みを進めています。

ユニクロとSDGs | 服のチカラを、社会のチカラに。 UNIQLO Sustainability

SDGsの取り組み企業事例/目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

関連記事:SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」女性活躍を推進する企業の取り組み

○日本コカ・コーラ
コカ・コーラでは、性別にかかわらずすべての人が持っている能力を存分に発揮できる社会をつくるために、ジェンダー平等についての研修の拡充や社外における啓発活動に取り組んでいます。

SDGsの目標5であるジェンダーや年齢・世代の課題を解決すべき優先事項とし「2025年までに女性管理職比率を50%にする」「男性の育児休業・休暇取得率を100%にする」「30代の管理職比率を15%にする」などの数値的ビジョンを設定しました。自社の女性リーダーシッププログラム「Accelerate HER」や、ワークショップ形式のキャリア支援トレーニング「Career Month」などを実施し、早期の目標達成を目指しています。

また、障がい者支援やLGBTQへの取り組みも、企業の重点事項として注力しています。経営戦略の柱としてダイバーシティ&インクルージョンを掲げ、多様な社員が活躍できる職場環境の整備を進めています。

サスティナビリティー | 日本コカ・コーラ株式会社

○セブン・イレブン・ジャパン
セブン・イレブン・ジャパンでは、企業内だけではなく社会全体がさまざまな価値観やライフスタイルを認め合い、誰もが自由に活躍できる世界の実現を目指し、SDGsの取り組みを進めています。

特に、育児や介護をしながら働いている社員、シニア世代や外国籍の社員、学生アルバイトなど、多様なバックグラウンドや価値観を持つ人々にとって魅力のある、働きやすい職場環境をつくることに注力しています。

その取り組みの一環として、東京・広島・宮城の3か所で「セブンなないろ保育園」を開園し、育児中の社員に安心して働いてもらうための環境を整備しました。地域に根ざした育児支援をおこない、女性の雇用促進や待機児童問題の解決にも積極的に取り組んでいます。

7つの重点課題|セブン
セブンイレブン、コンビニ店員向けに保育園 今秋まず2カ所 – 日本経済新聞

SDGsの取り組み企業事例/目標8「働きがいも経済成長も」

関連記事:SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」誰もが働きがいを持てる企業の取り組み

○トヨタ自動車
トヨタが実践するSDGsの特徴は、企業独自の技術やアイデアに磨きをかけ、多くの人に受け入れられる「サステナブル&プラクティカル(持続可能で実用的)」なものづくり・取り組みを目指していることです。

その取り組みの一つが「Woven City(ウーブン・シティ)」と名付けられた実証都市で、人工知能やパーソルモビリティ、ロボット、スマートホームといったあらゆる技術を盛り込んだ実験を進めています。

Woven Cityには人々の生活の質を高める工夫や構想が数多く取り入れられており、自社のオペレーターが働きがいを持ち、安全かつ付加価値の高い仕事ができるような環境の開発を促進しています。人々が生活を送るリアルな環境のもとで、自社の最新技術を駆使したSDGsの取り組みをおこなっていることがポイントです。

他にもトヨタでは「水素エンジン」の開発を進めています。水素を燃料としており二酸化炭素の排出はありません。エネルギー効率を向上させつつ脱炭素に向けた取り組みを進めており、世界で販売する新車1台当たりのCO2排出量を、2019年を基準に2035年までに50%以上削減する目標の達成を目指しています。

SDGsへの取り組み | サステナビリティ | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト
トヨタの佐藤恒治社長、CO2排出「35年までに半減」 全方位で電動化 – 日本経済新聞

○カゴメ
カゴメのSDGsでは、すべての人がワークライフバランスを保ってイキイキと働き続けられるよう、企業独自の「改革」をおこなっています。

具体的には、カゴメ労働組合と協力し、社員の健康維持・メンタルヘルスケアを大前提とした安全で働きやすい職場環境づくりを実施しています。20時以降の残業を原則禁止にし、在宅勤務制度や選択制時差勤務制度の導入、副業の解禁をおこないました。全社で「健康状態の見える化」を徹底し、社員の健康リテラシーを高める企業活動も実施しています。

さまざまな取り組みを通して社員一人ひとりのパフォーマンスを最大化させ、組織の生産性向上につなげるために「働き方改革」の先を行く「生き方改革」を提唱していることがポイントです。

CSR|カゴメ株式会社

SDGsの取り組み企業事例/目標10「人や国の不平等をなくそう」

関連記事:SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」~多様な働き方を実現する企業の取り組み

○イオン
イオンでは、国内や国家間の格差を是正するためのSDGs目標10を達成すべく、海外での街づくりを進めています。

具体的には、カンボジアやベトナム、インドネシアを中心としたアジアの国々において、街を豊かにする「初めてのイオンモール」を提供しています。その土地の人々に対し、新たな価値観となる商習慣・多様性を提案しました。

日本生まれのイオンモールにはさまざまなテクノロジーが導入されており、現地では「イオン前・イオン後」といわれるほど、街を活性化させる原動力となっています。

イオンのサステナビリティ | イオン株式会社

○ENEOS
ENEOSが実施しているSDGsの取り組みは、オペレーターとして事業展開するベトナムでの「教育支援」です。

具体的には、幼稚園・小学校・中学校・高校の建設や教育資材の提供をベトナム各地でおこなっています。経済的なサポートが必要な学生への奨学金授与、石油産業の人材育成を目指す「ペトロベトナム大学」への寄付といった社会貢献活動も毎年継続しています。

さらに、ベトナム戦争時に散布された枯葉剤の影響を受けた人々を治療するリハビリ施設の建設にも携わり、建設費の寄付や備品提供などの支援をおこないました。高い倫理観と誠実・公正である価値観をモットーに、社会の一員としてSDGsの取り組みを推進していることがポイントです。

ESG|ENEOSホールディングス

まとめ

企業がSDGsを成功させるためのポイントは、自社のみの成長・繁栄を目指すものではなく、積極的に社会の変革を目指す目標を立てることです。企業によって活動できる範囲・規模は異なるものの、自社の取り組みが「やがては社会全体に影響を与える」「大きなうねりとなり変化につながる」というビジョンを持つことが重要です。

今回ご紹介したSDGsの取り組みで評価されている企業の事例を参考に、社会の変革を目指した目標設定に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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