ジェンダーギャップ指数とは?2022年日本の現状と解決策を紹介
世界経済フォーラムが公表した「ジェンダーギャップ指数2022」によると、日本の順位は146か国中116位であり、先進国のなかで最低レベルの結果となりました。教育・健康分野は世界的にみてもトップクラスである一方、政治・経済分野では依然として大きな男女格差が生じています。
この記事では、日本におけるジェンダーギャップ指数の現状や、ジェンダー平等に向けた政府・企業の取り組みについて詳しく解説します。
ジェンダーギャップ指数とは?
ジェンダーギャップ指数とは「男女共同参画に関する国際的な指数」であり、スイスの非営利財団「世界経済フォーラム(World Economic Forum)」が発表しています。これは、教育・健康・政治・経済の分野ごとに、男女格差の指標であるジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index)を算出したものです。「0」が完全不平等、「1」が完全平等を表しており、0に近づくほど格差が大きく、1に近づくほど格差が小さいといえます。
ジェンダーギャップ指数は以下の4つの基本的なカテゴリーに分けられます。
○教育 識字率および基礎教育・高等教育就学率の男女比 (日本の順位:146か国中1位) ○健康 出生児性比、健康寿命の男女比 (日本の順位:146か国中63位) ○政治 政治家や高級官僚など、政治的に重要な地位にある者の男女比 (日本の順位:146か国中139位) ○経済 男女の賃金格差、労働参加率や管理職などの男女比 (日本の順位:146か国中121位) |
※順位は2022年のもの
参考:内閣府 男女共同参画局『ジェンダー・ギャップ指数(GGI)2022年』
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ジェンダーギャップ指数:日本の現状
ジェンダーギャップ指数からみる日本の現状について以下にまとめました。
日本の現状
上述の通り、2022年の総合順位は146か国中116位であり、前回(2021年)の156か国中120位とほぼ横ばいの結果となっています。教育・健康分野においては世界でもトップクラスの順位ですが、政治分野は146か国中139位、経済分野は146か国中121位と、日本における女性の政治・経済参画の遅れが目立っています。
日本のジェンダーギャップ指数が低い理由
日本のジェンダーギャップ指数を押し下げている要因は、女性の「政治参画」と「経済参画」の低さにあります。
日本では女性の政治参画が遅れています。例えば、2021年10月の衆議院議員総選挙では候補者に占める女性の割合は17.7%、当選者に占める女性の割合は9.7%でした(男女共同参画局『男女共同参画白書 令和4年版』より)。平成以降は候補者・当選者ともに女性比率が上昇傾向にあるものの、依然として低い水準が続いているのが現状です。制度を作る側・決める側に女性の参画が少なければ、考え方の多様化が担保されず、女性の働きやすい環境の構築が遅れる要因となります。
(引用元:1-1図 衆議院議員総選挙における候補者、当選者に占める女性の割合の推移)
また、女性は出産や育児などのライフイベントにより、一時的に仕事を離れることがあります。これに対し、女性が仕事と家庭を両立しながら活躍できる環境が十分に整っていないことが、女性の管理職登用の遅れにつながっていると考えられます。さらに、コロナ禍の影響で女性の労働参加が減ったことも、経済分野のジェンダーギャップ指数を押し下げる要因となっています。
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ジェンダーギャップ指数:日本政府の取り組み
ジェンダーギャップ指数の改善には、社会で働く女性の活躍を推進することが不可欠です。
ここでは、日本政府による女性活躍推進の取り組みについてご紹介します。
女性活躍推進法
女性活躍推進法とは、女性が仕事と家庭を両立しながら活躍できるように環境整備することを事業者に求めた法律です。具体的には、常時雇用する労働者が101人以上の事業主に対し「一般事業主行動計画の策定・届出」および「自社の女性活躍に関する情報公表」を義務づけるものです。
企業が女性活躍推進に取り組む効果としては以下のようなものが挙げられます。
- 女性が働きやすい環境整備が進み、社員一人あたりの生産性が向上する。
- 女性が活躍する企業として、対外的なイメージアップや優秀な人材の確保につながる。
- 家庭と両立しながら長く働けるようになり、離職率の低下や定着率の向上が見込める。
- これまでになかった自由な発想が生まれ、新しい商品やサービスの開発につながる。
- 顧客の多様なニーズに応えられるようになり、市場での競争力が高まる。
キャリア形成支援制度
キャリア形成支援制度とは、派遣労働者を対象に、正社員化や直接雇用化といった待遇改善を目的として教育訓練や能力開発などの研修をおこなうことを義務づけた制度です。具体的な研修内容は派遣会社によって異なりますが、派遣労働者のキャリア形成に結び付くものにしなければなりません。また、派遣労働者が無理なく受講できるように、費用負担は実費程度とすることが求められています。
育児・介護休業法
育児・介護休業法とは、育児や介護をおこなう労働者が仕事と育児・介護を両立できるように支援するための法律です。具体的には、労働者が子どもの出産や育児、家族の介護などの理由により、一時的に仕事を休むことができる制度です。
育児・介護休業法は1992年に「育児休業法」として施行されたのが始まりで、2022年10月の改正では新たに「産後パパ育休」が創設されました。これは育児休業とは別に取得可能な制度で、子の出生から8週間以内に最大4週間まで休暇を取得できます。
フレックスタイム制度
フレックスタイム制度とは、労働者が自ら労働時間を柔軟に設定できる制度です。働き方改革の一環として、2019年4月施行の労働基準法改正で見直しがおこなわれました。
フレックスタイム制度を活用すると、通常の勤務時間帯よりも早めに出社し早めに退社する、または遅めに出社し遅めに退社するというように、総労働時間の範囲内で出退勤時刻や働く長さを自由に決めることができます。自身のライフスタイルに合わせた働き方が可能となり、特に仕事と家庭生活の調和を図りやすくなるメリットがあります。
関連記事:【実例で学ぶ】SDGsで求められる多様性(ダイバーシティ)とは?企業が取り組むダイバーシティの実現
ジェンダーギャップ指数:日本企業の取り組み
ジェンダーギャップを改善するために、日本企業においても以下のような女性の活躍を後押しする取り組みをおこなっています。
日本マクドナルド株式会社
日本マクドナルドは、企業の成長を支えるのは「人」であるという考えのもと、多様な人材の活躍を推進しています。そのなかでも女性活躍推進はビジネス成長のためには喫緊の課題と位置づけており、出産や育児によってキャリアアップを諦めることがないよう、短時間勤務制度やフレックス勤務制度など柔軟な働き方を可能とする仕組みを取り入れています。
また、全社各部門の代表メンバーで形成される「女性活躍推進プロジェクトチーム」を立ち上げました。このなかで女性の活躍を後押しする仕組みの提案や意識改革のためのワークショップの展開など、他企業とも連携しながらさまざまな取り組みを実践しています。
参考:日本マクドナルド株式会社『McDonald’s CSR Report 2020』『取り組みと制度』
株式会社野村総合研究所
野村総合研究所では、多様なバックグラウンドを持つ社員一人ひとりがいきいきと働き、挑戦し続けることができる組織づくりを推進しています。
女性活躍推進の取り組みとしては、2008年度から「NRI Women’s Network(NWN)」を開始しました。これは「女性のキャリア形成支援」「仕事と育児の両立」「企業風土の醸成」の3つを柱とする社長直轄のプロジェクトであり、女性管理職の育成や仕事と育児の両立支援研修、管理職向けD&Iセミナーの開催などをおこなっています。
参考:株式会社野村総合研究所『ダイバーシティ&インクルージョン』
女性が働きやすい職場をつくることのメリット
女性が働きやすい職場をつくることは企業側のメリットも大きく、たとえば以下のようなものが挙げられます。
- 女性の社会進出が進み、人材確保につながる。
- 女性のキャリアアップが促進され、企業内での人材育成につながる。
- 女性社員のモチベーションが上がり、生産性向上につながる。
- すべての社員にとってワークライフバランスがとりやすい環境づくりを実践できる。
- 社員のストレスが軽減し、健康的な労働環境がつくられる。
- 誰もが活躍できる職場づくりに取り組む企業として、社会的な評価が高まる。
関連記事:ダイバーシティ・インクルージョンとは?基本の考え方や取り組み方法をご紹介
企業として取り組めること
上述のとおり、企業はジェンダーギャップ指数の改善に取り組むことで、生産性の向上や社内の活性化、社員のストレス軽減、ワークライフバランスの改善などさまざまなメリットを享受できます。ジェンダーギャップ指数を改善し、多様な人材が働きやすい職場環境をつくるために、企業として取り組めることを以下にまとめました。
- 「女性活躍推進宣言」の発表
- 女性管理職比率向上のための支援策
- 女性が管理職に昇進しやすい環境づくり
- 女性がキャリアアップしやすい制度の導入
- 育児休暇制度の充実
- 男性社員に対する育児休暇の取得奨励
- 育児休暇取得後の復帰支援策
- ワークライフバランスの改善
- 残業時間の削減
- フレックスタイム制度の導入
- ダイバーシティ&インクルージョン推進支援策
まとめ
日本のジェンダーギャップ指数は世界116位(2022年)と極めて低く、政府・企業ともに男女格差の改善が急務です。職場のジェンダー平等を実現することは、生産性の向上や社内の活性化、人材確保・定着率向上など、社員だけでなく企業にとっても多くのメリットがあります。今回取り上げた政府の取り組みや企業事例を参考に、誰もが働きやすく、活躍できる職場づくりを実践していくことが重要です。
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