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ピープルアナリティクスを採用やタレントマネジメントに上手に活用する方法とは?

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個人の主観や固定概念を取り除き、データに基づいて判断や行動をおこなう「データドリブン」が近年のトレンドとなっています。客観的なデータを用いた意思決定が重要視されるなかで、人事領域においては「ピープルアナリティクス」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。

この記事では、ピープルアナリティクスとは具体的にどういうものなのか、ピープルアナリティクスを人材採用やタレントマネジメントに活かす方法とともに解説します。

目次

ピープルアナリティクスとは

ピープルアナリティクスとは「人材データの分析と活用」を指す言葉です。
具体的には、社員に関するさまざまなデータを収集・分析し、人材の配置や評価、組織改善などに幅広く活かす取り組みをいいます。

ピープルアナリティクスで収集するデータには以下のようなものがあります。

表:ピープルアナリティクスで収集するデータ

ピープルアナリティクスにおけるデータの活用領域は幅広く、人材採用から配置、育成、人事評価、離職傾向の分析・改善、組織改革、ウェルビーイングの取り組みまで多岐にわたります。客観的なデータに基づく公平かつ効率的な判断は、意思決定の精度や従業員満足度、生産性の向上に大きく寄与するものであり、すでにヤフーやソフトバンク、日立製作所などの日本企業も取り組みを進めています。

ピープルアナリティクスが注目されたきっかけ
ピープルアナリティクスが注目されている背景には、担当者の主観や経験に依存した意思決定による「人事のミスマッチ」をなくす必要性が高まっていることが挙げられます。

このような風潮をもたらしピープルアナリティクスの火付け役となったのは、2006年ごろから人事領域でのデータ分析・活用をスタートさせたGoogle社です。Googleの人事部門「ピープル・オペレーションズ」では、社員を対象に「プロジェクト・オキシジェン」や「プロジェクト・アリストテレス」といった大規模調査を実施。データアナリストによる分析をもとに、優秀なマネージャーの特徴や生産性の高いチームの条件を明らかにしました。

人事領域を科学的な視点で分析したGoogleの調査結果は、組織改革の新たな指針として世界の注目を集めました。その知見はGoogle元CEOのエリック・シュミット氏や元人事担当トップのラズロ・ボック氏の著書でも語られています。

また、Googleではよりよい働き方を促進するためのキュレーションプラットフォーム「Google re:Work」を開設し、ピープルアナリティクスの実践に役立つガイドを公開しています。Googleの指針を参考にしている日本企業も多く、人事領域における意思決定に大きな影響を与えています。

●タレントマネジメントとの違い
人事データの活用に関する概念で、ピープルアナリティクスよりも古くからあるのが「タレントマネジメント」です。

タレントマネジメントとは、社員が持つ資質や能力、経験をデータとして一元管理し、戦略的な人材配置や能力開発に活かすことをいいます。社員のデータを資源として人事領域に活かす点は共通していますが、ピープルアナリティクスでは人材データのほかにもデジタルデータやオフィスデータ、アクティビティデータまで幅広く情報収集するのに対し、タレントマネジメントでは基本的に人材データのみを取り扱います。

また、タレントマネジメントは個人に焦点を置いて人材配置などの組織戦略を考えるものであるのに対し、ピープルアナリティクスは組織全体のパフォーマンス向上と組織課題の解決を目的としています。どちらも組織運営において重要な取り組みであり、双方に共通性や親和性があるため、横断的に取り組んでいくとよいでしょう。

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ピープルアナリティクスを用いた採用方法

ピープルアナリティクスを人材採用に活かすには、大きく以下の2つの方法があります。

●活躍している社員の共通点を明確にし、合致する人材を採用
社内の優秀な人材、いわゆる「ハイパフォーマー」を分析することは、ピープルアナリティクスのセオリーといえます。組織全体におけるハイパフォーマー、あるいは人材を必要とする部署におけるハイパフォーマーの行動や能力を分析し、活躍している社員の共通点を明らかにすれば、そのデータを採用選考の指標として効果的に用いることができます。

ハイパフォーマーの分析においては、何をもって「ハイパフォーマー」と定義するのか、あらかじめ実績・昇進などのデータや議論によって決めておくことが大切です。その定義に基づくハイパフォーマーを社内から選定し、傾向の分析と共通点の抽出をおこない、選考時の指標をつくっていきます。

また、ハイパフォーマーのデータは現在のものだけではなく、入社時のデータも分析することが重要です。特に新卒採用においては、入社時のハイパフォーマーの傾向と照らし合わせて選考することで、自社での活躍が大いに期待できる「ハイパフォーマーとなり得る人材」を判別しやすくなります。

●設問への回答と合否を分析し、確度の高い内容に改善
人材採用に欠かせないエントリーシートの設問は、ピープルアナリティクスを用いることで精度の高い内容に改善でき、選考プロセスの効率化につなげられます。

データの分析・活用を積極的に推進しているヤフー株式会社では、エントリーシートの設問への回答について、採用に至った人材と至らなかった人材とで比較をおこないました。回答によって合否に差がない設問は選考に影響しないと判断し、該当する設問は削除したり別のものに変更したりすることで、設問の質の向上に成功しています。

ポイントは、設問への回答と合否の両方を分析し、合否の判定に影響するとデータで証明された設問に絞ることです。効果的かつ効率的な選考をおこなうことができ、志望者の負担も軽減されるでしょう。

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ピープルアナリティクスをタレントマネジメントにどのように活用するか?

人事領域のさまざまな意思決定に幅広いデータの分析を用いるピープルアナリティクスと、主に人材配置や能力開発に人材データを用いるタレントマネジメント。両者には共通する部分が多く、組み合わせて活用することで精度の高いデータ分析ができるようになります。

タレントマネジメントにおける人材配置では、住所や年齢、学歴などの基本情報に、能力やスキル、経験値などのデータを追加で登録することで、空いたポジションにふさわしい人材をマッチングしたり、人事異動の際に個人に適した部署を検討したりします。

一方、ピープルアナリティクスを用いて最適な配置を考える際は、まず人材データをもとにポジションにふさわしい人物像や現在活躍しているハイパフォーマーの定義を決定し、能力や傾向の分析をおこないます。個人の情報に着目するよりも先に、そのポジションに最適な人材についてデータ分析していることがポイントです。

従来は人事担当者や部署のリーダーが主観的に決めていた「ふさわしい人物」を人材データから明確化し、さらに社員個人の特性についても分析することで、より精度の高いマッチングが可能となります。また、チーム単位で社員の特性を分析し、パフォーマンスを発揮しやすい組み合わせになるように人材を配置するなど、生産性を高めるためにより多角的なアプローチができることもピープルアナリティクスの特長です。

このように、ピープルアナリティクスのデータや分析をタレントマネジメントに用いることで、社員一人ひとりのポテンシャルが最大限に発揮される適材適所の人材配置が実現します。データに基づく客観的かつ効果的な人材配置ができるようになれば、人事担当者の業務負担を軽減することにもつながるでしょう。

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まとめ

ピープルアナリティクスとは「人材データの分析と活用」のことで、2000年代にGoogleが取り組み始めたのをきっかけに注目されるようになりました。タレントマネジメントと共通する部分は多いものの、ピープルアナリティクスでは人材に関するデータだけではなく、オフィス設備の利用状況やデジタルデバイスの位置情報なども含めた幅広い情報から分析をおこないます。

日本でもすでにヤフーや日立製作所などの企業が取り組んでおり、人事領域におけるピープルアナリティクスの活用は今後も広まっていくことが予想されます。より効果的な人材採用やタレントマネジメントを可能にするために、ピープルアナリティクスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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