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人事業務のAI活用事例と人事システム・サービス5選

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画像認識や音声認識、自然言語処理、予測分析など、人間の知的な活動の一部をコンピュータで再現する技術が「AI(人工知能)」です。すでに製造業や医療福祉など幅広い業界で活用されていますが、近年では生産性の向上や公平な評価を実現するために、人事領域でもAI活用の動きが広まっています。

この記事では、人事業務に対しAIの支援を検討している企業の参考となるように、人事業務のAI活用事例と人事システム・サービスについてご紹介します。

目次

人事業務にAIが必要とされる理由

働き手の不足により生産性向上の必要性が増していることや、ピープルアナリティクスの推進において人事部門が扱うデータ量が膨大になっていることから、人事業務へのAIは「便利だから導入する」から「必要不可欠なもの」に変わりつつあります。

ここでは、人事業務にAIが必要とされる具体的な理由をご紹介します。

●生産性向上と業務効率化を図るため
日本において、少子高齢化と人口減少による人手不足は今後も進行するとみられ、人事業務においても生産性向上と業務効率化の必要性が高まっています。また、人事部に求められる機能は近年変化しており、従来のオペレーション業務を中心とした役割から、経営戦略の実現を担う戦略人事への転換を求められています。

AIの導入で人の手による作業を減らしたり効率化を進めたりすることで、従来の業務の負担を軽減し、空いた時間をより重要で戦略的な業務にあてられるようになります。

●データ分析の重要性が増しているため
近年、人事のトレンドとして注目されている「ピープルアナリティクス」。この手法の鍵を握るのが人材データで、従来よりも細かい情報まで含めた組織に関わる社員のデータを収集・管理する必要があります。

社内に蓄積した膨大なデータの分析は人の手でおこなうと多くの時間と知見を要するため、AIの活用が特に望まれる分野です。その中でも、社内のビッグデータの分析にAIを活用する取り組みはすでに進められており、人材の適正配置に関する予測などに利用されています。

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●採用や評価で公平な判断をするため
採用・評価においては、担当者のバイアスが入ってしまうために人によって選考基準が異なり、これまでの経験や勘から担当者の主観で判断してしまうということが起こりがちです。このような事態を避けるためには、データに基づいた客観的な判断をおこなう必要があります。

AIによって社員に関わるデータを収集・分析すれば、評価項目を多角化しても担当者に負担はかからず、一覧に表示されたデータをさまざまな角度から公平に判断できるように     なります。データ分析の結果を根拠とするため、社員の納得感を得やすいこともポイントです。

人事業務のAI活用事例

実際にAIを人事業務に導入している企業や自治体はどのような方法で活用しているのか、取り組みの参考になるAI活用事例を3つご紹介します。

●ソフトバンク:エントリーシートの確認や動画面接にAIを導入
2017年にいち早く採用プロセスにAIを導入したソフトバンク。エントリーシートの確認時間の削減と評価の精度向上のため、AIの自然言語認識を活用した一次選考を実施し、担当者の確認時間を従来の約4分の1に短縮しました。

2020年には新卒採用選考の動画面接にAIを導入し、応募者に事前に通知した質問への回答動画をAI動画解析システムで評価。AI動画選考の正確性を担保するために、不合格判定となった場合は人事担当者による動画確認と最終判断もおこないます。人事側の場所と時間確保の負担を減らすと同時に、学生側の時間と交通費の負担削減にもなっています。

●サントリーホールディングス:問い合わせ対応にAI搭載チャットボットを活用
サントリーホールディングスでは、これまで人事・給与関連の問い合わせ対応に辞書型チャットボットを使っていましたが、同義語登録等のメンテナンス工数削減と回答精度向上を目的にAI搭載型のチャットボットに移行しました。

チャット内の幅広い言い回しに対応できるAIの揺らぎ吸収機能により正答率が向上し、利便性を高めたことでチャットボットの利用者が増加。その結果、年間約1,000時間もの問い合わせ対応時間の削減に成功しました。今後は人事業務以外にも、対象部門を拡充する予定です。

●NEC系×福島市:職員情報をAIで分析し人事異動案を作成
NECソリューションイノベータは、AIが職員情報を分析したデータをもとに異動候補者を抽出し、個々に最適な配属先のシミュレーションと提案をおこなうシステムを開発しました。異動案に対して条件が合わない候補者は配属先を変更し、何度も分析することができます。

2020年度に福島市で実証実験をおこなった結果、候補者選出にかかる時間を25%、異動案作成にかかる時間を17%削減、さらには条件に沿う配置か確認する時間を92%と大きく削減することに成功しました。2021年には自治体向けにシステムの販売を開始し、2023年4月までに20の自治体への導入を目指しています。

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AIを活用できる人事システム・サービス5選

人事業務にAIを導入する際は、どのような業務にAIを活用したいか、どのような効果を得たいかという点から、自社に最適なシステムを選ぶことが大切です。

ここでは、人事業務にAIを活用できるシステム・サービスを5つピックアップしてご紹介します。

●人事評価の納得度を高める【あしたのクラウドHR】
人事評価の運用を一元管理できる「あしたのクラウドHR」には、AIを活用した目標添削機能と評価者モニタリング機能が搭載されています。

目標添削機能では、より具体的な目標内容にするためにAIによる添削が可能です。評価者モニタリング機能では評価を担当する者が目標設定や評価を適切におこなえているかどうかを診断でき、人事評価の納得度を高めることができます。

●エントリーシートからマッチング度を測る【i-web】
採用管理システムとして高いシェアを誇る「i-web」は、エントリーシート診断ツールにAIエンジンを活用しています。

応募者の個人情報登録直後からマッチング度や志望予測度の算出を開始するため、早期から応募者に合わせた細やかな対応を行うことができます。あわせて剽窃(ひょうせつ)チェック機能により、応募者のエントリーシートがコピー&ペーストした内容になっていないかチェックすることも可能です。

また、2022年の7月からAI予測分析サービス「exaBase 予測・分析」を提供するエクサウィザーズと提携しており、予測分析を用いて録画面接の精緻(せいち)化と効率化を図ることができるようになっています。

●採用応募者の入社後評価を予測する【アッテル】
“未来予測型ピープルアナリティクスサービス”を掲げる「アッテル」は、10万人のデータから活躍人材を定量化し、AIによって応募者の入社後評価と早期退職を予測することができます。

次の人事施策に活用できる分析をおこなっていることが特長で、活躍人材を分析し採用基準を見直したり、退職リスクの予測により防止策を講じたりすることが可能です。担当者の経験と勘に頼った「感覚人事」から脱却する、定量化・分析・予測・改善までのワンストップサービスを提供しています。

●人材の最適配置を提案する【POSITIVE】
総合型人材システムの「POSITIVE」は、タレントマネジメント機能の一つとして、AIが人材の最適配置を提案する「タレントアナライズ機能」を搭載しています。

機械学習を用いてPOSITIVEに登録されている人事情報を分析し、人手を必要とする部署にマッチングする人材を社内から見つけ出します。膨大な人事データをAIが分析することで、人事担当者も気づかないような適切な人材配置ができるようになります。

●回答精度の高いチャットボットを実現する【QuickQA】
「QuickQA」は最先端の自然言語処理技術を活用した自動応答システムです。純国産で日本語を得意としており、少ない学習データでも言葉の揺らぎを学び、質問内容に対する最適な回答を提示します。

チャットボットやSNSとの連携が可能で、人事業務においては社員からの問い合わせにQuickQAを組み合わせたチャットボットを活用できます。これまで人が対応していた問い合わせ業務が自動化し、対応工数と時間の削減、解決率の向上につながります。

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まとめ

人事業務へのAI活用は、生産性向上や業務効率化を図り、効率的なデータ分析や公平な評価を実施するうえで欠かせないものとなりつつあります。すでに採用や人事異動、問い合わせ対応などにAIを活用している企業や自治体もあるため、その事例から効果と課題を参考にすることで、自社に最適なAI活用を検討できるでしょう。

戦略的な業務にあてる時間が足りない、ピープルアナリティクスの実行手段に悩んでいるという企業も、今回ご紹介したAIを活用できる人事システム・サービスを参考に、自社業務への導入を考えてみてはいかがでしょうか。

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