Vol.04

「NEXT HR」調査レポート・コラム

「人事不要論」は本当か?次世代型人事の在り方とは?〜人事アンケート調査結果から読み解く[後編]〜

ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介

HRテクノロジーで変わる人事の業務。対応策は?

しかしながら、HRテクノロジーが人事の業務に大きな影響を及ぼすと考え、危機感を抱いている人が少なからずいることは間違いない。この質問で「そう思う」と回答した方に、「それはどのような影響か、また、それに人事はどう対応すべきか」を自由記述式で聞いたところ、さまざまな回答をいただいた。いくつかご紹介しよう。

「必要なデータを必要なタイミングで入手できるので、より戦略的な対応ができる。反面、単純定型労働型の人事業務は淘汰されると思われる」

(サービス/1,001名以上)

「HRテクノロジーを活用する企業と活用しない企業とでは、人事の役割やパフォーマンスに大きな差が生まれる。HRテクノロジーの導入なくして企業は生き残れない」

(メーカー/1,001名以上)

HRテクノロジーの影響については、「社員情報の可視化・データ化により、育成や人事異動などの高度判断業務について客観的な根拠情報を示しやすくなる」といった回答も見られた。HRテクノロジーを活用するかしないかで、人事のパフォーマンスに大きく差が付いてしまうことは、今後、十分に考えられる。また、HRテクノロジーの存在が一層大きくなれば、人事の存在価値自体にも変化が生じるかもしれない。

「人を知っていることが人事屋の武器だったが、そこはAIに取って代わられる。その際、人事屋は何を強みとして戦っていくのか?」

(メーカー/1,001名以上)

こうしたとまどいの声が上がる一方で、次のように、「AIと人事の共存」を考える意見もある。

「給与・賞与・社会保険等計算に代表される定型的な業務だけでなく、採用や昇格等の非定型・企画型業務もAIに取って代わられるのでないでしょうか。我々は、AIができない対人スキルを磨き、現場に必要とされる人事でありたい」

(メーカー/301〜1,000名)

「人事評価や異動・要員配置の判断領域でAIが活躍するようになる。人事部門は自分たちの仕事の領域を守るのではなく、HRテクノロジーの活用を推進するべき」

(情報・通信/301〜1,000名)

HRテクノロジーに対しては、「これまで経験と印象に頼っていた諸人事施策に裏付けができる」、「人事業務を科学的・客観的に執行できる」と期待を寄せる回答も少なくない。だからこそ、人事としては「それらを使いこなし、分析して先手を打つ施策を編み出せる能力」、「ITリテラシーの向上や分析思考」を持たなければならないとする意見も見られた。

「人事はHRテクノロジーの分野にも長けた人間を置くか、その分野に特化したベンダーやコンサルと組んで対処する必要がある」とする回答も見られた。データアナリスト、データサイエンティストといった専門スタッフの配置や育成、外部との連携を含め、HRテクノロジーを使いこなすための組織体制はできるだけ早く整えておくことが望ましいだろう。