Vol.01

「NEXT HR」特別パネルディスカッション 講演録

次世代の人事、人事サービスの進化と未来(前編)

慶應義塾大学大学院 経営管理研究科(KBS) 特任教授 岩本 隆氏
PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 北崎 茂氏
日産自動車株式会社 人事本部 日本人事企画部 担当部長 福武 基裕氏
株式会社日立製作所 ICT事業統括本部 人事総務本部 人財企画部 主任 中村 亮一氏
モデレーター:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介

環境変化が極めて激しい企業を取り巻く環境のなかで、次世代の人事はどうあるべきか。人事サービスの進化と未来はどうなっていくのか。そこでは、単に現状を変革するだけでなく、人事の新しい価値の創造、パラダイムの転換が求められているのだ。 いま私たちは、次世代の人事価値を創造するムーブメント「NEXT HR」を提唱するー。

2017年1月25日(水)、東京にて、「NEXT HR 次世代の人事価値を創造する」をテーマに、ProFuture主催による人事関連業界セミナー「HR Biz Network 2017」が開催された。熱気あふれる会場で行われた特別パネルディスカッションのテーマは、「次世代の人事、人事サービスの進化と未来」。4名のパネリストから、人事部門の取り組み、未来の働き方と人材マネジメントのあり方の予測、HRテクノロジーの最新動向について貴重なお話をいただき、「Next HR」を考えていくための示唆に富むトークセッションが展開された。

ビジネス環境の変化に対応し、組織をリードする日産自動車のHR

寺澤私たちは、次世代の人事価値を創造する「NEXT HR」というテーマを、これから1年間にわたり追いかけていこうと思っています。今日はその初回のパネルディスカッションということで、4名の方にご登壇いただきました。まずは、今、企業で実際に起こっていること、取り組もうとされていることを、日産自動車の福武さん、日立製作所の中村さんからご紹介いただきたいと思います。福武さんからお願いできますか。

福武まず、我々のビジネス環境ですが、自動車業界のグローバル全体需要は新興国を中心にどんどん伸びており、2018年には1億台を超えると予測されています。まだまだ成長するビジネスということです。日産の海外販売比率は2014年度実績で88%、ほぼ9割という状況です。そういう中で、我々HRは、過去5年間、「Develop talents and promote diversity」、「Manage workforce and develop competencies」、「Enhance employees' engagement & enablement」、「Improve HR function efficiency & effectiveness」という4つの柱でビジネスにどう貢献するかということに取り組んできました。これらは、日産自動車がアライアンスを組んでいるルノーと一緒に、共通のストラテジーを持ってやってきています。

しかし、今後のビジネス環境はというと、大きく変化し始めています。例えば、自動運転やコネクティッドカーといったインテリジェントモビリティ、車のデジタル化、お客様の嗜好も変化しています。我々が取り組んでいなかった領域の技術を獲得するため、これまでおつきあいのなかった業界との新たなパートナーシップも必要になってきます。さまざまな変化の中で、ビジネスをサポートするためには、今後、HRの機能やプログラムをより高度なものにする必要があり、かつ、プロアクティブに役割を果たさなければビジネスの変化のスピードに追いつけない、貢献できないと考えています。
また、CEOのカルロス ゴーンに以前から言われていることですが、「優れた会社の人事とは、正確で、定量的な数値による目標を明確に持っていて、ビジネス志向が強い」と。このような人事として、今後さらにしっかりやっていかなければならないということです。

具体的には、今、HRの中期計画を練っているところです。今後のHRの方向性として、いくつか柱を考えていますが、将来を予測し、人財ラインナップをタイムリーに届けることは重要です。電気自動車や自動運転など、変化を予測しておかないと、ビジネスがGOとなってから採用を始めていては遅いですから。加えて、人財の発掘と採用におけるベストプラクティスの実現、リーダー育成と専門分野の競争力向上を目指し、能力開発面の徹底、強化を図るといったところ、さらには、こうした取り組みを行うためのファウンデーションとして、デジタルHR、そして我々HRの組織体制・組織能力を強化していかなければならないということを論議しています。