Vol.04

「NEXT HR」調査レポート・コラム

「人事不要論」は本当か?次世代型人事の在り方とは?〜人事アンケート調査結果から読み解く[後編]〜

ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介

自社の人事は環境変化に対応する準備ができているか

では、こうした大きな環境変化を前にして、企業の人事部門の対応状況はどうなっているのだろうか。

「変化が激しい現代、自社の人事部門がその環境変化に対応できる準備ができていると思いますか」と聞いたところ、「そう思う」との回答は10%にとどまり、「そう思わない」が62%と圧倒的多数を占めた。「どちらともいえない」は28%である。まだまだ準備ができていない企業が多いのが現状のようである。

だが、どのような準備が急がれるのかは、業界によっても企業によっても異なるだろう。そこで、「自社の人事部門として、この激しい環境変化に対応するためにどのような準備が必要だと思うか」を自由記述式でお聞きした。

「先行きが不透明すぎて何から手を付けなければいけないのかわからない、というのが正直なところ」といった回答もあり、多くの企業にとって難しい取り組みであることがうかがえるが、まずひとつ、意識改革が必要だとする回答が多く見られた。例えば、次のようなものである。

「古い考えを持った人事担当者の意識を変える。変わらなければ違う仕事をさせるなどする。変革の阻害要因を遠ざける」

(メーカー/1,001名以上)

「チェンジエージェントとして機能すること。言われたことだけソツなくこなす人は要らない」

(メーカー/301〜1,000名)

「時代の急激な変化や、HRテクノロジーの進化と、企業・社員が求めているものをどうつないでいくかを、メンバー全員で考えないと、人事部門不要論になってしまう」

(商社・流通/301〜1,000名)

そのほか、寄せられた回答を見ると、「多様な働き方を可能にする制度・環境整備の推進」、「雇用の流動化や雇用形態の多様化への対応」といった、働き方改革に関連したものに加え、「IT リテラシーの強化」、「積極的なシステム投資」、「早い段階でのAIの導入」など、HRテクノロジーへの対応の必要性を挙げたものが目に付く。

また、「人事部門メンバーの多様化促進(年齢、性別、国籍、プロパーか否かなど)」、「若手人事社員の管理職への登用」、「若手人事社員の育成と思い切った仕事の取捨選択」など、人事部門の組織や仕事のしかたを変えることが必要だとする回答も見られた。

もちろん、何を変えるべきかは企業によって変わる。次のような冷静な見方は重要である。

「自社の強みをよく認識して、変えない部分と変える部分を明確にする必要がある。他社が取り組んでいるから変えるのでは意味がない」

(メーカー/1,001名以上)

ただし、一方では、次のような意見もある。

「今後のビジネスにおけるスピード感を考慮すると、リアルタイムの判断と決断ができるようにするべきである」

(メーカー/1,001名以上)

冷静に考え、スピード感を持って決断し、実行することが、いま、人事に求められているということだろう。