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SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」誰もが働きがいを持てる企業の取り組み

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SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」は、SDGsを構成する17の目標の中でも特に企業活動と関わりが深いテーマです。誰もが働きがいを持てる環境をつくるために、企業がおこなうべき取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。 この記事では、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」の概要とともに、日本が抱える課題や働きがいをつくるための企業の取り組みをご紹介します。

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目次

 SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」とは

SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年9月の国連サミットにて採択された世界共通の国際目標です。持続可能でよりよい世界を目指すことを目的とし、17の目標(ゴール)と169のターゲットで構成されています。

SDGsの目標8は「働きがいも経済成長も」であり、各国の状況に応じた経済成長や誰もが働きがいを持てる雇用の創出、労働者の権利保護などが掲げられています。また「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」をテーマとしています。

ここで出てくる「ディーセント・ワーク」は、現在計187か国が加盟する国際労働機関(ILO)の活動の主目標として位置付けられている概念です。ディーセント・ワークとは「働きがいのある人間らしい仕事」を意味する言葉で、労働者一人ひとりの権利や社会保障が確保された、人間としての尊厳を保てる仕事をいいます。

ディーセント・ワークを実現するためには、以下の4つの戦略的目標に取り組む必要があります。

1.仕事の創出
2.社会的保護の拡充
3.社会対話の促進
4.仕事における権利の保障

日本もILOの加盟国であり、ディーセント・ワークの実現に取り組む国の一つです。目標8の達成を目指す上でも、ディーセント・ワークの概念のもとで、働きがいのある環境をつくるための取り組みが求められています。

●目標8のターゲット一覧

目標8に紐付けられているターゲットは以下の12項目です。
下表の8.1〜8.10は「達成目標」、a〜bは「実現のための方法」が示されています。

表:外務省|JAPAN SDGs Action Platform

引用元:外務省|JAPAN SDGs Action Platform

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SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」にまつわる日本の課題

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」を達成するためには、まず日本における現状の課題を洗い出す必要があります。目標8にまつわる日本の課題としては、長時間労働や賃金の低さ、性別や雇用形態による賃金格差などが挙げられます。

長時間労働・低賃金

日本では依然として「長時間労働・低賃金」が大きな問題となっています。特に日本の長時間労働に関しては「zangyo(残業)」「karoshi(過労死)」といった言葉が海外でも浸透しているほどで、目標8の達成に向けて早急に見直していかなければならない課題です。

○長時間労働
OECD(経済協力開発機構)の調査によると、2020年における日本人1人あたりの年平均実働時間は1,598時間。これは世界平均の1,687時間と比べて短く、世界的に見るとそれほど長時間ではないように見受けられます。しかし、日本の労働者のうち25.8%が非正規のパートタイマーであり、世界平均の16.7%よりも高い数値となっています。つまり、世界平均よりも短い日本の労働時間は、パートタイマー比率の高さが影響しているのです。

さらに、日本男性の1日あたりの有償労働時間は452分と世界最長クラス、日本女性も272分と世界平均の218分を上回っていることからも、やはり日本人の労働時間は長いと言わざるを得ないでしょう。

参照元:OECD|労働時間 (Hours worked)/雇用-パートタイム雇用率/時間の使用

○低賃金
同じくOECDの調査によると、2020年における日本の平均賃金は38,515米ドルでした。これはアメリカの平均賃金(69,392米ドル)の55.5%程度で、世界平均の49,165米ドルと比べても大幅に低くなっています。

参照元:OECD|平均賃金 (Average wage)

○新たな問題
近年、働き方改革や健康経営の促進により、日本でも長時間労働への規制が進められています。一方で、申告をせずに残業をする「隠れ残業」や、残業はないものの昇給が見込めない「ゆるブラック企業」といった新たな問題も噴出しており、根本的な課題解決に至っていない現状も見受けられます。

雇用・賃金格差

日本では、男性と女性の雇用・賃金格差、正規職員と非正規職員の賃金格差も問題となっています。

○雇用格差
総務省が公表した「労働力調査」によると、2021年における男女別の正規職員・非正規職員の人数は以下のとおりです。

令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況

参照元:総務省|労働力調査(詳細集計)2021年(令和3年)平均結果の概要

また、家事・育児・介護等と両立しやすいために非正規職員となった労働者の人数は、男性8万人、女性209万人と、女性の方が圧倒的に多くなっています。仕事と家庭を両立する上で、女性が正規職員として働き続けることは難しい現状がうかがえます。

○賃金格差
厚生労働省が公表した「賃金構造基本統計調査」によると、2021年における性別・雇用形態別の賃金は以下のとおりです。

労働力調査(詳細集計)2021年(令和3年)平均結果の概要

参照元:厚生労働省|令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況

賃金が高い傾向にあるのは「男性」「正社員・正職員」で、性別や雇用形態によって大きな賃金格差が生じていることがわかります。

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誰もが働きがいを持てる環境をつくるための企業の取り組み

誰もが働きがいを持てる環境をつくり、SDGsの目標8の達成に貢献するには、企業による積極的な取り組みが欠かせません。

ここでは、目標8を実現するために企業が進めるべき取り組みをご紹介します。

働き方改革の推進

働き方改革の推進は、誰もが働きがいを持てる環境をつくるために欠かせない施策です。企業は長時間労働を是正し、性別や年齢、障がいの有無などにかかわらず、安定した労働の機会と収入を得られるように努める必要があります。

具体的な取り組みとしては、在宅勤務やフレキシブルワーク、超短時間労働、フレックスタイム制、ワークシェアリングなど、社員の状況や希望に応じて選択できる多様な働き方を導入することが挙げられます。

人事制度の見直しと適正な運用

どれほど努力しても正当な評価を得られなければ、仕事に働きがいを見出すことはできません。社員に働きがいを持ってもらうためには、現状の人事制度を見直し、一人ひとりの仕事を正当に評価する人事制度への変革と適正な運用が必要です。

具体的な取り組みとしては、リアルタイムフィードバックや360度評価など、公平で透明性があり、誰もが納得できる評価制度の導入が挙げられます。また、キャリアパス制度やメンター制度を取り入れて社員のスキルアップを促進するなど、人材育成を充実させることも大切です。

健康経営の推進

社員が心身ともに健康であることも、働きがいを持つための重要なファクターです。企業が社員の健康に投資する健康経営に取り組むことは、誰もが働きがいを持てる環境づくりにつながるでしょう。

具体的な取り組みとしては、健康診断や人間ドッグ、食事などの補助のほか、運動機会やマッサージサービスの提供、気軽に利用できる健康相談窓口の設置などが挙げられます。また、社員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐためには、自分自身の心の不調への気づきを促すストレスチェックの実施、メンタルヘルスケアの重要性を説くストレスマネジメント研修の導入などが有効でしょう。

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まとめ

SDGsの目標8は「働きがいも経済成長も」です。ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を実現し、持続可能な経済成長と働くすべての人に十分な雇用機会を確保することがテーマとなっています。

日本では長時間労働や雇用・賃金格差が課題となっており、目標達成に向けては企業の積極的な取り組みが不可欠です。働き方改革や健康経営の推進、人事制度の見直しと適性な運用によって、誰もが働きがいを持てる環境をつくっていくことが求められています。

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