Menu

CSR(企業の社会的責任)とは?サスティナビリティとの違いを簡単に紹介

読了まで約 8

近年、SDGsやESG投資といった言葉を耳にする機会が増え、企業が取り組む社会貢献が注目を集めています。このような中でクローズアップされているのが、企業の社会的責任を意味する「CSR」です。

CSRを実践することで、自社のイメージアップや従業員エンゲージメントの向上が期待できます。企業はCSRに対する理解を深めるとともに、社会の一員として自らの活動に責任を持つことが求められています。

この記事では、CSRの概要や注意点、サスティナビリティとの違いについてわかりやすく解説します。

目次

CSRとは?

CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略称であり、企業が活動するうえで担うべき社会的責任を意味します。

経済産業省ではCSRを以下のように定義しています。

「企業の社会的責任」とは、企業が社会や環境と共存し、持続可能な成長を図るため、その活動の影響について責任をとる企業行動であり、企業を取り巻く様々なステークホルダーからの信頼を得るための企業のあり方を指します。
経済産業省『企業会計、開示・対話、CSR(企業の社会的責任)について』より抜粋

関連記事:ISO30414とは?人的資本に関する開示項目と企業の取り組みを解説

これまでの企業活動は、利潤の追求一辺倒であっても許容されてきました。しかし、CSRにおいては、社会貢献や環境配慮を意識した事業活動をおこない、企業も社会の一員としてその責任を果たすことが求められています。

CSRが注目を集める背景

CSRが注目されるようになった背景として、企業による不祥事が頻発したことが挙げられます。そもそものルーツは高度経済成長期の環境破壊であり、近年では食品の産地偽装や建築物の耐震偽装など、利潤追求への偏重に起因する不祥事が増加しました。

さらに、消費者の意識の変化や情報化社会の進展、グローバル化など、ビジネス環境が急激に変化するなかで、企業活動が与える環境や社会への影響に対しステークホルダーから厳しい目が向けられるようになりました。これらを通じて適正な企業経営の必要性が認識され、CSRへの取り組みに注目が集まっているのです。

関連記事:サスティナビリティとは?意味や企業経営における重要性を解説

サスティナビリティとの違い

サスティナビリティ(sustainability)とは「持続可能性」を意味し、経済成長に偏った発展ではなく、社会機能との両立が可能な発展を目指す考え方のことです。企業活動を継続化・長期化させるためには、企業を取り巻くステークホルダーと共存しながら成長する「サスティナブル経営」が有効な施策となります。

サスティナビリティは実施主体の範囲が広く、企業はもちろん行政から個人までさまざまな対象が含まれます。これに対し、CSRは「企業の社会的責任」を指すものであり、企業のみに限られる点でサスティナビリティとの違いがあります。

関連記事:サスティナビリティとは?意味や企業経営における重要性を解説

CSRのメリット

企業がCSR活動に取り組むメリットには以下が挙げられます。

メリット①:企業価値の向上

近年では、ESG投資と言われ、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の各要素の取り組みレベルが高い企業が投資先として選ばれるトレンドがあります。CSRに取り組むことが、社会的な信頼を高めて投資家から見た企業価値の向上につながると言えます。

また、2015年に実施された東京商工会議所の調査によると、CSRに取り組むメリットとして「企業イメージの向上」と回答した企業は、中小企業で79.7%、大企業で98.3%となりました(東京商工会議所『「企業の社会的責任(CSR)」についてのアンケート調査』より)。CSRに前向きな姿勢は企業イメージを向上させるとともに、不祥事が発生するリスクが低いことでステークホルダーからの信頼も集めやすいといえます。

メリット②:従業員エンゲージメントの向上

企業がCSR活動を実践することで、社員は「自分の仕事が社会の役に立っている」という実感を抱くようになり、業務に対する意欲が高まります。結果的に会社への愛着や貢献意欲も高まり、従業員エンゲージメントの向上が期待できます。

また、モチベーションの高い社員が多数を占めると、互いに協力・連携しながら仕事を進められるため、職場の活性化とともに組織全体の生産性も向上します。円滑なコミュニケーションがとれている良好な職場環境は、求職者に対するアピール材料にもなるでしょう。

用語解説:「従業員満足度(ES)」|組織・人材開発のHRインスティテュート

メリット③:コンプライアンス意識の向上

コンプライアンスとは「法令遵守」を指す言葉ですが、単に法律を守るだけでなく、社会規範に従いながら健全な経営をおこなうことも含みます。CSR活動を通じ、企業統治体制の確立や適切な情報開示を実践することで、コンプライアンス違反の防止につながります。組織としての健全な経営体制が確立されると、社員のコンプライアンス意識の改善・向上も期待できるでしょう。

用語解説:「コンプライアンス」| 組織・人材開発のHRインスティテュート

CSRのデメリット

CSRへの取り組みは企業にさまざまなメリットをもたらす反面、すぐに収益を生み出すものではないために「コスト」や「人材」の面ではデメリットを感じるかもしれません。しかし、企業の経営体制には社会から厳しい目が向けられており、CSRを実践する意義は大きいといえます。CSRに取り組む際には以下に挙げるデメリットも理解したうえで、自社に適した方法を検討することが大切です。

デメリット①:コストの増大

CSR活動は短期間で大きな収益を生み出すことが難しく、人件費や材料費など新たなコストが生じるケースがあります。たとえばメーカー企業であれば、できるだけ安価な原料を使えば生産コストを引き下げられるでしょう。ところが、環境に配慮した取り組みを実践すると、必ずしもコストの低い原料が使えるとは限りません。そのため、従来よりも生産コストが割高になる可能性があります。

一方で、安価な原料を調達した結果、原料供給元の環境問題や人権リスクなどが発生し、対応に追われたり、社会問題化したりするケースも出ています。値段だけでなく、取引先の信頼性や透明性も含めた判断が必要になります。

デメリット②:人材の不足

十分な質を保ってCSRを実践するには、新たな人員の確保が必要となります。これはCSR活動が通常業務に付加しておこなわれるためであり、人材が不足するなかで施策を実行しても成果が伴わない不十分な取り組みになってしまうからです。しかし、CSRの取り組みに多くのマンパワーをあてると、本業のほうで人手不足に陥ってしまうリスクがあることも認識しておかなければなりません。

いきなりCSR活動を大きく展開するのではなく、自社ができることから取り組みをスタートし、徐々に広げていくアプローチが望ましいでしょう。

CSR活動としての取り組み

企業によるCSRの取り組みには以下のようなものがあります。

企業統治(ガバナンス)

CSRの土台となる取り組みが企業統治であり、具体的には法令や社会的規範を遵守した健全な活動をおこなえる仕組みを確保することを指します。その際、社外取締役の導入や外部専門機関の活用により、客観性の担保に努めることが重要です。社内体制に関しては、経営上の監督と執行の分離という点で、執行役員制度の導入が有効な施策となるでしょう。

用語解説:「執行役員制」|組織・人材開発のHRインスティテュート

コンプライアンス教育

現代はコンプライアンスの遵守が当たり前の時代であり、一人のコンプライアンス違反が企業経営を揺るがす事態に発展するおそれもあります。法律に関する社内研修だけでなく、企業倫理の徹底も社員教育の一環としておこなうべきでしょう。具体的には、個人情報の取り扱いやハラスメントへの理解、広告ルールの遵守などが挙げられます。

環境対応

環境問題に対する取り組みは幅が広く、植林活動や水資源の保全など環境保護活動もそのひとつです。こうした環境保護活動だけでなく、事業や業務の一部を見直すことで環境対応をすることもできます。例えば、社用車に低排出ガス車を導入する、調達・購入するモノは環境に配慮した品を選ぶことなどです。

これはCO2を削減する点で環境に配慮した施策といえます。また、省エネや省資源、リユースの推進は、社会貢献になるだけでなく企業のコスト削減という面でもメリットが見込める施策です。このような取り組みは消費者に好印象を与え、企業のイメージアップにつながります。

地域貢献活動

企業によるCSRへの取り組みとして、地域でボランティア活動をおこなうことも挙げられます。具体的には、小中学生を職場体験で受け入れる、学校に商品を寄贈する、地域活性化のためのイベントやワークショップを開催するといった取り組みがあります。

CSRに取り組む際の注意点

企業がCSR活動に取り組む際の注意点を以下にまとめました。

注意点①:活動内容の精査

CSRへの取り組みにはさまざまな選択肢がありますが、まずは自社の事業内容と社会のニーズがマッチするかという観点から活動内容を決めることが重要です。その際は国内の社会課題だけでなく、先進的な取り組みが目立つ海外のトレンドを参考にするのもよいでしょう。

注意点②:損益の分析

CSR活動も事業の一部であり、中長期的なリターンを獲得するために実施するものです。取り組みの際にはコストとリターンの分析を入念におこない、リターンを得られる方法で実践する必要があります。

なお、CSRにおいては金銭以外の社会的リターンもあるため、これも加味して検討することが大切です。

注意点③:運用体制の構築

既存の社員がCSRを担当すると、業務負担が過大になる可能性があります。本業とは別の活動になることを考慮し、CSRを専門に担う部署を設置するのが望ましいでしょう。

また、CSR活動を実践する際にはステークホルダーに向けた情報発信も重要となります。その手段としてはWebサイトやSNSを通じた広報活動、CSR報告書の作成・発信などがあり、関係部署とスムーズに連携できるよう運用体制を構築しておく必要があるでしょう。

まとめ

近年は企業の不祥事に対する世の中の批判の目が厳しくなっています。小さな不祥事であっても、報道を通じて企業の信用を大きく毀損することになりかねません。一方で、社会貢献活動に熱心な企業は社会からの評価が高く、サスティナビリティに対する注目度の高まりとともにCSR(企業の社会的責任)への取り組みも重要性を増しています。CSR活動を通じて社会からの信頼を獲得し、企業としての価値向上につなげていきましょう。

関連記事

記事一覧
おすすめ記事
ページトップへ
©2021 HR Institute Inc.