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官民連携とは?代表的なプラットフォームと取り組み事例を紹介

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地方自治体が抱えるさまざまな課題を解決するために、民間企業のノウハウを活かす官民連携事業が全国で進められています。官民連携をより一層推進するための場として「官民連携プラットフォーム」が設置されていますが、その役割や取り組みについては詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、官民連携の概要や代表的なプラットフォーム、具体的な取り組み事例についてご紹介します。

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目次

官民連携とは

官民連携とは、行政(官)と民間企業(民)が連携して公共サービスの提供をおこなうことをいいます。行政と民間企業が持つそれぞれの強みを活かすことにより、地域の価値や住民満足度の向上を図ろうとする取り組みです。

官民連携を実現する手法の一つに、平成11年に施行された「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」に基づく「PFI(Private Finance Initiative)」があります。これまで国や地方公共団体がおこなっていた公共施設の建設・維持管理・運営に、民間企業の資金やノウハウを投入することで、従来よりも効率的・効果的なサービスの提供を目指すという手法です。

その後、平成14年の改正水道法や平成23年の改正PFI法の公布によって、水道管理に関する技術的な業務を第三者である民間企業に委託することや、公共施設の運営権を民間企業が買い取ること(コンセッション方式)が可能となりました。近年では民間企業のデジタル技術を活用し、行政サービスの利便性向上や業務効率化を図る「デジタルトランスフォーメーション(DX)」がトレンドとなっています。

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官民連携プラットフォームとは

官民連携プラットフォームとは、官民連携を加速させることを目的に、資金面・ノウハウ面での支援や情報共有、国内外への普及促進活動などをおこなう場です。官民連携を進めるための土台(プラットフォーム)で、民間企業や大学・研究機関、地方公共団体、関係府省などが会員となって構成されています     。

官民連携プラットフォームでは、課題を抱える自治体とノウハウを持つ民間企業が出会う「マッチング支援」と、共通する課題の検討や知見の共有をおこなう「分科会の開催」が特に大きな役割を果たしています。民間企業にとっては、官民連携プラットフォームへの参加により自社の技術を必要とする自治体と出会え、同じ課題の解決に関する知見を持つ企業・研究機関と意見交換や情報共有をおこなえるというメリットがあります。

代表的な官民連携プラットフォーム

官民連携プラットフォームが設置される目的は、地方創生やまちづくり、インフラの整備などさまざまです。ここでは、代表的な官民連携プラットフォームを3つピックアップし、それぞれの     目的や特徴についてご紹介します。

地方創生SDGs官民連携プラットフォーム
地方創生SDGs官民連携プラットフォームは、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを促進し地方創生につなげることを目的に内閣府が設置しました。6,600を超える団体が参加し、プラットフォーム主催のイベントや分科会の開催、会員のマッチングなどをおこなっています。

同プラットフォームのホームページでは、課題やソリューション、地域、取り組みなどによって会員を検索することができ、官民のマッチングに大いに役立つ内容となっています。また、会員限定の公開掲示板では地域課題に対する質問のやりとり、非公開掲示板では個別の提案依頼などをおこなえます。

スマートシティ官民連携プラットフォーム
スマートシティ官民連携プラットフォームは、デジタル技術を活用しインフラや施設の運営管理業務を最適化する「スマートシティ」の実現に向けた取り組みを、官民連携で加速させることを目的に設立されました。内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省、デジタル庁が事務局となり、関係府省12団体と会員640団体が参加しています。

同プラットフォームでは、スマートシティ実装化支援事業や地域新MaaS(※1)創出推進事業、未来技術等社会実装事業などをおこなっています。各府省が推進するスマートシティ関連事業を実施する会員に対し、府省が資金とノウハウを提供し支援しているのが特徴です。

(※1)「Mobility as a Service」の頭文字をとった言葉。自家用車を除くあらゆる交通手段による移動を一つのサービスとして捉え、検索・予約・決済等を一括でおこなうサービスのこと。

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グリーンインフラ官民連携プラットフォーム
グリーンインフラ官民連携プラットフォームは、社会資本整備や土地利用において、自然環境が有する機能を利用する「グリーンインフラ」の推進を目的に設立されました。自治体や関係府省、民間企業や学術団体、さらには個人も会員として登録でき、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを目指しています。

同プラットフォームでは、グリーンインフラ推進における課題の解決に向けて、情報提供やアドバイザーの派遣、調査研究、資金調達の支援などをおこなっています。あわせて、グリーンインフラの意義を社会的に普及する役割も担っています。

2020年3月に設立された比較的新しいプラットフォームではあるものの、2021年10月には会員数が1,233名まで増えており、グリーンインフラを取り巻くニーズの高まりがうかがえます。

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■官民連携プラットフォームの取り組み事例

官民連携プラットフォームで実施された自治体の取り組み事例を以下にまとめました。

●伊那市ドローン物流サービス
長野県伊那市とKDDI株式会社による取り組み事例です。

中山間地域において高齢者を中心に買い物困難者が増加している課題に対し、KDDIの先端技術「スマートドローンプラットフォーム」を基幹として、国内初の自治体運営によるドローン配送事業「ゆうあいマーケット」を実用化しました。注文した品物は⻑距離⾃律⾶⾏型ドローンで近隣の公⺠館に⾃動運搬され、公民館での受け取りまたはボランティアによる配達で最短当日中に品物が届きます。

●街ごとこども食堂プロジェクト
茨城県境町とGigi株式会社による取り組み事例です。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けている地域の飲食店の食事を子どもたちに無料で提供する「街ごとこども食堂プロジェクト」を運営しています。ふるさと納税への寄付金を運営資金とし、Gigiが提供する「ごちめし」(飲食店のメニューをプレゼントできるサービス)の仕組みを活用しました。子ども支援と飲食店支援の両方を手間なく実現できた事例です。

●災害⼟砂を建設資材として資源化
熊本県と各建設会社JV(共同企業体)、株式会社インバックスによる取り組み事例です。

平成24年に熊本県で発生した豪雨災害による膨大な災害土砂の処分、コンクリート需要急増による資材不足という二つの課題を、災害土砂をソイルセメント技術で建設資材化することで同時に解決しました。現地で発生した災害土砂の再利用は災害箇所の早期復旧に大きく貢献し、土砂廃棄と外部資材調達をそれぞれ削減できたほか、運搬量が減ったことでCO2排出量の削減も可能となりました。

●健康・観光・防災機能付きの街歩きアプリ
栃木県佐野市と一般社団法人スマートソサエティファウンデーション、リアルワールドゲームス株式会社による取り組み事例です。

市民の検診受診率や避難訓練参加率が低いという課題に対し、シビックテック(市民の力)で集めたスポット20万件を登録した佐野市独自のウォーキングアプリを開発しました。1日6,000歩を達成するとポイントが貯まり景品に応募できるほか、災害に備え避難ルートを学ぶ機能や避難所の混雑状況をリアルタイムで表示する機能     を実装しています。住民の健康・観光・防災に関するニーズを一つのアプリで解決した事例です。

●福祉バスのデマンド化による利用促進と有効活用
北海道上士幌町と上士幌タクシー有限会社、株式会社TKFなどによる取り組み事例です。

福祉バス4路線のうち、利用頻度が低い2路線をデマンド化(事前予約により指定された時間に指定された場所へ送迎するサービス)する実証実験を約3か月実施。事前予約制や仮想バス停の設置、高齢者が操作しやすい設計により、福祉バスの利用を促進しました。町民が好きな時間に好きな場所へ出かけられるようになったのはもちろん、稼働時間・運行回数の大幅な削減、空き時間の可視化により、バスによるスーパーの貨物配送も可能となりました。

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まとめ

官民連携の推進において重要な役割を果たしている官民連携プラットフォーム。課題を抱える自治体とノウハウを持つ民間企業のマッチングや、双方の知見共有のための分科会を実施し、官民連携事業をサポートしています。

自社のソリューションを活かし社会的価値を提供したい企業、自治体と連携し新たなビジネスを生み出したい企業は、まずは官民連携プラットフォームの会員となり、自治体が抱える課題について知ることから始めるとよいでしょう。

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